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第五十八部

 反射的に起き上がる。


 朝だ。

 いや、お師匠様が起きているということは、いつもより少し遅い時間か。


「寝坊だぞ、マリア。起こしてやろうかと思ったが、幸せそうな寝顔だったのでな。いい夢を見ていたようだな?」


「まあね。そういや、スラム街の亡霊は?」


「昨夜は現れなかったようだ。まあ、気長に待つといい。そのうち出てくるだろう」


 ベッドの上に胡坐をかいて伸びをする。


 違和感を覚えてテーブルを見やると、ソルシエル以外にもう一人いることに気付いた。


「あれ、キャロル?」


「あっ、おはようございます、マリアお姉さん。お勉強でわからないところがあったので、ヴェルマお姉さんに教えてもらってるんです」


「そうだったのか。キャロルは勉強熱心だな。ってか、お姉様が子供に勉強を教えるなんて意外だ」


「ふん、ただの気まぐれだ。我は説明が嫌いだからな。最低限の理屈しか教えぬ」


「でも、ヴェルマお姉さんの教え方、とてもわかりやすいです。理屈がわかったらあとは手順通りに考えていけば答えに辿りつけるので、お勉強がもっと楽しくなってきました!」


「そ、そうか。それはよかったな。ふふっ、我は教師に向いているのかもしれぬ」


 渋々教えているのかと思っていたが、案外まんざらでもなさそうだ。

 キャロルとも仲良くやっているようだし、お師匠様も大分染まってきたな。


「ちょっと出てくる」


「どこに行くのだ?」


「スラム街の偵察」


 勉強会を横目に支度を済ませ、俺は罠を仕掛けるためスラム街へと出かけた。

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