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第五十五部
目を閉じて、魔女の宮殿に入る。
普段はがらんどうの大広間だが、今日は違った。
だだっ広い空間で何をするでもなく佇む女。
初めはソルシエルかと思ったが、どうやら違う。
纏う雰囲気というか、立ち姿が穏やかである種の境地に達したような感じだ。
「こんばんは、マリア。あなたのことを待っていたわ」
「俺を知ってるのか?」
「ええ。新たなソルシエルの継承者、あの娘に弟子ができたのが嬉しくてね。一目見たかった」
「もしかして、お師匠様のお師匠様? マリア・ソルシエルか」
「ふふっ、かつてはね。今は名もなき幻影、ご先祖様とでも呼んでちょうだい。それにしてもあの娘ったら、弟子に私の名をつけるとはね。嬉しいやら気恥ずかしいやら」
死んだはずのマリアがどうやってこの魔女の宮殿に存在しているのかはわからないが、そもそも魔女の宮殿自体が人知を超えているのだ。
説明のつけようがないのは当然のことだろう。
マリアは柔和に微笑み、俺の手を引いた。
「せっかく会えたのだから、一つ魔法を教えてあげましょう。特別講師による特別授業ってところかしらね」




