第五十二部
宿屋に帰るなり、俺は倒れ込むようにベッドへとダイブした。
「遅かったな。何をしておったのだ?」
「剣術の特訓。王都騎士団の団長とちょっと縁があってさ、スラム街の亡霊を倒すために修行中」
「わざわざ剣術を覚える必要もなかろう。貴様はバーサーカーなのだ、魔法を使わずとも人の子ごとき力で捻じ伏せられる」
「いや、人間技で倒したいんだよ。人間の問題に干渉するなら、人間としてなんとかしたい」
「ほう、弁えておるな。それで? 騎士とやらは一体どんなやつなのだ?」
「あ、それ気になっちゃう?」
「気になる。おかしな男にたぶらかされておらんだろうな?」
「大丈夫だって。まあ、一言で表すと金髪イケメン騎士様かな」
「……怪しいな」
「そんなことないって。この前はナンパ男から助けてくれたし、今日だって宿屋まで送ってくれたし」
「いい感じではないか! 恋に現を抜かしておる場合か!」
「何勘違いしてんだよ。恋なんかしてない。俺、女の子が好きだし」
「そ、そうか。我の早とちりだったか」
「あれ? もしかしてお師匠様、嫉妬しちゃった?」
「ば、馬鹿なことを言うな! 我が嫉妬などするわけがないだろう! 我はただ、貴様が当初の目的を忘れて呆けぬように目を光らせておるだけだ! 断じて嫉妬ではない! 自惚れるな!」
ものすごい剣幕でまくし立てられたが、当の本人は顔を真っ赤にしてすぐさま背を向けてしまった。
いつもの仕返しとばかりに、ソルシエルの背後から腕を回してみる。
「俺が他の男になびくわけないじゃん。毎晩こんな風に抱き枕みたいにされて、俺もうお嫁に行けないよ」
「ええい、やかましい! さっさとシャワーで汗を流してこい!」
「はーい」
結局、シャワーを浴びた後、いつものように抱き枕にされた。
心なしか、いつもより抱きしめる力が強いような気がした。




