第四十七部
ショートケーキとチェリータルトを平らげ、椅子の背もたれに深く腰を預ける。
牧歌的な束の間。
至福のティータイム。
俺はぬるくなってきたコーヒーをすすり、サービスのクッキーを齧った。
「楽園があるとしたら、きっとこういうところなんだろうな」
「急にたそがれてどうしたのだ?」
「いや、だってそうじゃん? なんのしがらみもない、自然の風景に囲まれた静かな場所。ケーキも食べられるし、まさに楽園って感じじゃないか」
「ふむ、言われてみれば確かに。我もここが気に入った。こうして椅子にかけておるだけで気持ちが安らぐ。余計な思考も浮かんでこぬしな」
「だな。ここに引っ越すのもいいんじゃないか? 小さくてもいいから家を建てて、外にはハンモックとかかけてさ」
「ふふっ、考えておく。あの屋敷は広いが、ひどく息苦しい。狭くてもいい、のびやかに暮らせるなら」
二人してたそがれていると、キャロルが目を輝かせて身を乗り出してきた。
「お姉さんたち、ここに引っ越すんですか? そしたら私、毎日でも遊びに来たいです!」
「ま、まだわかんないよ。キャロルもここが気に入ったんだ?」
「はい! 私、決めました! 大きくなったらここに家を建ててお姉さんたちのお隣さんになります!」
「はははっ、いい夢ができたみたいだな。じゃあ、しっかり勉強していっぱいお金を稼がないとな」
志の高いキャロルとは反対に、マキナとアイカは自由気ままだ。
「ケーキ、もっと食べたい。アイカ、ちょっとちょうだい?」
「えー、駄目だよ。アイカもまだまだ食べれるんだから。マリアお姉さん、ケーキもう一つ注文していい?」
「食いしん坊め。別にいいけど、帰ったら虫歯にならないようにしっかり歯を磨くんだぞ」
「はーい! マキナお姉ちゃん、何にする? アイカはモンブランにしよ」
「私、ロールケーキ。注文、しに行ってくる」
ここで、さっきからそわそわしていたエリカが二人につられて席を立った。
「ま、マリアお姉さん、私もいいですか? 実はミルフィーユが気になってて……」
「エリカもか。いいよ、行ってきて」
「ありがとうございます!」
三人がケーキの陳列されたショーケースに急ぐのを見届け、俺はコーヒーを飲み干した。
魔女と人間がこんな風に過ごせるなら、この世界は大いに価値がある。
残念ながら今の俺たちは人間としてここにいるけど、いつの日か堂々と魔女としてここにいられることを切に願う。
人間と一緒に過ごせる、何気ないこんな日常が幸せだと思うから。




