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第三十七部

 キャロル、マキナ、アイカとの騒がしくも充実した生活が始まって、一週間が経過した。


 あれから三人は晴れて学院の生徒となった。

 俺が親戚という体で学院に話をつけ、特別な事情ありということでクラスを同じにしてもらった。

 学年こそ離れているが、エリカとも仲良くやっているようだ。


「時にマリアよ、忘れておらぬであろうな?」


「ん、なんのこと?」


「馬鹿者、この世界のことだ。小娘共にかまけて本来の目的を見失っておるのではないかと思ってな」


「ああ、忘れてないって。今俺が見極めようとしてるのは子供だ。罪なき純真無垢な子供がこの世界にいるなら、それを破壊しようとする魔女は悪者って考え方もできる」


「ほう、穿った考えだな。では、逆に考えると子供に罪があればこの世界は全くの無価値かもしれないということだ。まして子供は成長すれば大人になり、やがて純粋さを失っていく」


「……お師匠様、こじつけで世界滅ぼそうとしてない?」


「はははっ、何を言う。あくまで我は傍観者、一面を重視せず多面的に物事を判断する。強者も弱者も老若男女も特別扱いはしない。しかしながら、我にも感情がある。人間から受けた仕打ちを帳消しにすることはできぬ」


「まあ、そうだよな。元々お師匠様は世界を滅亡させるために俺を魔女にしたわけだし」


「ふっ、安心しろ。ただの復讐で動くのはもうやめた。万が一にも考えが変わるようなことがあれば、不本意ながらこの世界で生きていくとしよう」


「じゃあさ、仮に人間が全くの無価値でこの世界に生きる意味がないとして、お師匠様がこの世界で生きる理由ができたとしたら、その時はどうする?」


「なんだ、それは。くだらん詭弁だな。だが、我が魔女として堂々と自由に生きられるのなら、存外悪くないかもしれぬ。もしそんな世界になったら、滅ぼさずに残しておく価値があるというもの。ただし、我が妥協しないこと――これが絶対条件だ。これだけは譲れぬ」


「要はお師匠様が納得すればいいってことか」


「ふん、ことはそう簡単ではないぞ。なんだ、我を止めようとしておるのか?」


「いや、お師匠様が滅ぼす側なら、俺は阻止する側に回ってみようと思ってさ。結末を決める二人が滅ぼす側だと人間が不利だろ? 結論は一対一で公平なジャッジにしたいし」


 阻止する側といっても、俺の動きは駒と大差ない。

 この肉体と精神は仮初めのものである、という定義を定めて、最後の結論を出す際には別の場所――魔女の宮殿に置いておいた第三者の自分に任せる。

 つまり、本当にお師匠様を阻止するために動くわけじゃなくて、ジャッジの方針として阻止する側につくということだ。


 ゲームで例えるなら、操作されるキャラと操作するプレイヤーがわかりやすい。

 操作されるキャラは、世界滅亡を企む魔女を阻止しようとする。

 操作するプレイヤーは、最終的に魔女を阻止するか魔女に加担するか選択することができる。

 ストーリーを読み進めた上でどちらが正しいかを判断し、その選択に基づいて正しい裁きを下さなければならない。


 俺の思考を見透かしたのか、ソルシエルはご満悦といった具合に微笑みを形作った。


「いかにも魔女らしい考え方だ、気に入ったぞ。先代もまさにそうだった。ただ、唯一我が許せなかったのは、最後にゲームを降りたことだ。貴様は違うと信じている」


「ああ、俺は絶対に最後までゲームを降りない。約束する」


 固い決意を胸に、俺は微笑み返した。

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