第三十六部
夕食の後、ソルシエルは読書、エリカは食器の片付けをしていた。
キャロルはエリカの手伝いをしようとしていたが、アイカのちょっかいに邪魔されてあたふたしていた。
マキナはというと、ソルシエルが読んでいる本を背後から興味津々といった具合に覗き見ていた。
「キャロル、マキナ、アイカ、ちょっといいか」
視線で椅子を促すと、三人は行儀よく着席した。
「皆にはやりたいこととか将来の夢はあるか? 俺に叶えられる願いなら叶えてあげようと思うんだけど」
言うなりアイカが目をきらきらさせて身を乗り出す。
「アイカはお菓子をお腹いっぱい食べてみたい! チョコレートとかビスケットとかキャンディーとか!」
キャロルが呆れたようにうなだれる。
「アイカ、甘いものばかり食べたら虫歯になっちゃうよ。私は……叶わない夢かもしれませんけど、学院に行ってみたいです。たくさんお勉強して、たくさんお友達を作って、普通の暮らしがしてみたいです。マキナは?」
問いかけられて、マキナはソルシエルの手元をじっと見つめる。
「本、読んでみたい、です。文字、読めないけど……お勉強して、読めるようになりたい、です」
幼気で健気な少女たちの願いを聞き終わり、俺は誰に向けるわけでもなく頷いた。
「皆の願いはよくわかった。その願い、俺が叶えよう」
キャロルとマキナは唖然として顔を見合わせた。
アイカは状況がよく理解できていないのか、目を点にした後万歳のポーズを取った。
「で、でも、学院に通うお金はどうするんですか? まさか、マリアお姉さんが……?」
「そのつもりだよ」
「そんな! 初対面の人にそこまでしてもらうのは……」
「いいじゃん、キャロルお姉ちゃん! アイカたちのお願いを叶えてくれるんだよ? ねっ、マリアお姉ちゃん! お菓子食べ放題だよね!」
「ああ、好きなだけ買ってやるさ」
「やったー!」
「……マリアお姉さん、お金持ち、ですか?」
「違うよ。きっとマリアお姉ちゃんは魔法使いさんなんだよ。なんでもお願いを叶えてくれる、優しい魔法使いさん!」
魔法使い、か。
あながち間違いじゃない。
魔女と魔法使いだとイメージがちょっと違うけど、今はこの娘たちの魔法使いでいいや。
「あの、マリアお姉さん。どうして私たちにここまでよくしてくれるんですか? 私たちには何も返せないし、ただ迷惑をかけるだけなのに」
「アイカの言う通り、優しい魔法使いだからさ。誰かを助けられるだけの力があるのに、自分のためだけに使うなんて不公平だろ? それに、引き取った以上無責任にあとはご自由にどうぞじゃお互い報われない」
「マリアお姉さん……」
「だから、遠慮も感謝もせず、大人しく魔法にかけられるといい」




