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第三十四部

 適当に見繕った服に着替えさせた少女三人。

 まだ肌や髪の毛は薄汚れているものの、捨てられた人形が着ているようなぼろ布からはかなり見違えた。


 屋台で買い与えたサンドイッチを熱心に頬張る少女たちを、何気なくぼーっと見つめる。


 引き取ったはいいけど、どうしたものか。

 里親を探すか?

 いや、それじゃあ奴隷商人とやっていることは変わらない。

 俺がこの娘たちを引き取ったのは、あくまで自由のため。

 これからどうするかはこの娘たちの意志に委ねよう。


「お師匠様、この娘たちのことだけど――」


「貴様、魔法を使ったな。二度と解けぬ催眠をかけられたあの奴隷商人は、一生子供たちのために尽力するであろう。当然の報いとはいえ、少々酷か」


「まあ、いいんじゃないか? 今まで子供たちを売って甘い汁を吸ってきたんなら、お返しをしてもらわないとな」


「はぁ、また面倒事に首を突っ込みおって。どうなっても知らんぞ。もう一度言っておくが、我は助けぬ」


「ああ、責任は俺が持つよ。この娘たちが自由に生きられるよう手は尽くすつもりだ」


「ふん、考えが甘いな。マリア、貴様は人間に深入りするということをまだ知らぬ。魔女として生きることを決めた以上、もう後には引き返せぬ。貴様には同じ過ちを犯してほしくないのだ」


 お師匠様が言わんとしていることはなんとなくわかる。

 きっと、お師匠様にも人間に希望を抱いていた頃があったんだ。

 でも、先代を処刑され、百年もの間孤独に追いやられ、人間とはわかり合えないと諦めているんだ。


 俺は信じたい。

 腐り切った世界にも一筋の光があると。

 人間が人間として、魔女が魔女として、それぞれが自由に生きられる可能性があると。


「とりあえず、今日はこの娘たちを宿に連れて帰る。勝手にさせてもらうぜ」


「ふん、忠告はしたぞ。我と同じ道を辿れば、その娘たちもろとも世界は消え失せる運命だ。せいぜい足掻くがいい。結末は貴様一人に決断できるほど軽々しいものではない。貴様の選択が間違っていると結論付けたら、我は当初の予定通りこの世界を滅亡させる。それだけは言っておく」


 踵を返したソルシエルの後ろ姿を見送り、俺は大きく息を吸いながら空を見上げた。


 俺だって、こんな世界なんてなくなってしまえばいいと思ってた。

 でもお師匠様、あんたが俺を変えたんだ。

 今はお師匠様とこの世界で一緒に暮らしたいと思ってる。

 こんな世界でもいい。

 いや、この世界がいいんだ。


「待ってろ、お師匠様。あんたと自由に暮らせる世界を創ってみせる」

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