第三十三部
今日の城下はやけに賑わっていた。
どこもかしこも人間で溢れ返っており、通りに立ち並ぶ屋台はいつもより数が増えている。
寂たるスラム街とは大違いだ。
ソルシエルは頬杖をつき、カフェの窓からむせ返るような人波を眺めていた。
「バザールの日か。月に一度、異国から行商人たちが一斉に集まる日があるのだ。ちっ、実に鬱陶しい。出かける日を間違えたか。今日は部屋にこもって読書でもしておくべきだった」
部屋にこもっておくべきだったかはさておき、城下に出かけたのは間違いだったことには賛成だった。
通りを歩いていて何度足止めを食らったかわからない。
声をかけられるくらいならまだいいが、腕や肩を掴まれては振り払ってを繰り返すのにはほとほとうんざりさせられる。
コーヒーを呷る。
テーブルに金を置き、足早に人混みをかいくぐっていく。
「ん? あれは――」
とある商品の前で立ち止まる。
あまりの衝撃的な光景に、俺の視線は釘付けになった。
小綺麗な格好をした行商人の背後に、堅牢な鉄格子の檻。
中には、ぼろ布を纏った少女が三人。
――まさか、奴隷か?
人間が人間を売買する――人間に商品として値段をつけ、道具のように所有物とする。
動物を売買するのとはわけが違う。
動物は食用やペットとしてその用途が限定されているが、人間の場合は違う。
人間が売買されるのは、娯楽や優越感のため。
それが人間である必要はない。
いたずらに弱者を利用しているに過ぎない。
「マリアよ、余計なことは考えるな。好きにしろとは言ったが、深入りすればするほど後が辛くなるだけだ。よいか、これは忠告だ」
「忠告どうも。でも、やっぱ俺こういうのは放っておけないたちみたいだ」
物珍しさで群がる人々を押し退け、奴隷商人の前へと進み出る。
「おや、これはこれは。見目麗しきレディー、どの娘をご所望ですかな? 身なりこそ小汚いですが、上物であることは保証致します」
「上物、か。じゃあ、三人共もらおうか」
「ほう! これは驚いた。しかし、よろしいのですか? 高くつきますぞ」
「これで足りるか?」
札束をちらつかせると、奴隷商人は餌を前にした犬のように目を輝かせた。
「足りますとも足りますとも! ああ、素晴らしきレディー、遠路遥々王都まで来た甲斐があったというものです。いい取引ができました」
「そうだな。その金は貧しい子供たちのために使うんだ。あんたみたいな悪い大人に捕まらないようにな」
「承知致しました。子供たちには価値がある。粗末にしてはいけませんな。それでは、私はこれにて。ありがとうございました」
空の檻を引いて去っていく馬車。
俺は内心でほくそ笑んだ。
「さて。お嬢さんたち、そんな格好だと目立って仕方ない。服でも見に行こうか」




