第二十六部
無言のソルシエルと気まずい空気の中、沈黙を切り裂くようにドアがノックされた。
夕食を部屋に運んできてくれたのは、先ほど助けたゲオルグの娘。
大の大人五人がぶっ飛ばされる様を目の当たりにしたせいか、おどおどして怯えているように見受けられた。
「あ、あの、さっきは助けていただいてありがとうございました。ちゃんとお礼が言えてなかったので」
「気にしないでくれ。っていうか、さっきのは忘れてくれ。騒ぎは起こしたくなかったんだけど、いてもたってもいられなくて」
「お姉さん、お強いんですね。あっ、私エリカっていいます。普段は王都の学院に通っていて、休みの日は父の仕事を手伝っています」
「へぇ、えらいんだな。俺はマリア、こっちは姉のヴェルマ。遥々異国から観光に来たんだけど、しばらくこの街に留まろうと思ってな」
「そうだったんですね。マリアさん、ヴェルマさん、これからよろしくお願いします。身の回りのお世話、父だけじゃなくて私も手伝いますから」
「ああ、ありがとう。助かるよ」
「いえいえ、恩返しなので気にしないでください。では、私はこれで。おやすみなさい」
「おやすみ」
話しているうちにエリカの緊張はすっかり解けたようだった。
よかった、荒くれ者だと誤解されなくて。
一応女になったんだし、ちょっとはお淑やかにした方が……いいのかもな。
はぁ、と嘆息が漏れる。
「お師匠様、悪かったな。勢い任せで約束を破ってしまった」
ソルシエルは本から視線を上げ、今まで黙っていた口をようやく開いてくれた。
「我は気にしておらぬ。が、並外れた力は人間には理解不能。魔法を使わずとも魔女と誤解されかねん」
「確かに……軽率だったな。今度から手加減するように気をつける」
「そういう問題ではないが……まあ、好きにするがいい。我は貴様の行動も含めてこの世界を見極める。せいぜい魔女とバレぬように動くことだ。我は助けぬぞ」
「わかってる。よし、飯にするとしますか」




