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第二十五部

「ゲオルグの料理、楽しみだな。やっぱ手作りの料理が一番だぜ。お師匠様も手料理に挑戦してみればいいのに」


「ふん、余計な世話だ。魔法で作れるのにわざわざ手料理など非効率的だろう」


「はぁ、このままじゃお嫁に行けないぞ」


「余計な世話だっ! 貴様こそ嫁に行けるほどの器なのかっ?」


「俺は嫁には行かないけど……って、なんか宿屋の方が騒がしくない?」


 通りに響く怒声。

 ちょうど宿屋の裏手からだ。


 ごみ箱の陰から覗いてみると、そこにはゲオルグと学校の制服を着た少女がいた。

 正確には、五人の男たちに取り囲まれて壁際まで追い詰められていた。


「ゲオルグさんよぉ、そろそろ用心棒代を払ってくれよ。ただで雇えるほど世の中甘くねぇんだぜ?」


「何度も言っているが、お前たちを雇った覚えはない。勝手に用心棒を言い張っているだけじゃないか」


「あんたが雇った覚えはなくても、俺たちは悪人が調子に乗らないように治安を守ってんだ。相応の金を払ってもらなきゃ困るんだよ。金が無理なら娘がいるじゃねぇか」


「娘に近付くな!」


 どうやらトラブルみたいだ。

 男たちはもっともらしい理由をつけて、ゲオルグから金を巻き上げようとしているらしい。


 放っておけない。

 いくら困窮していたとしても、こんな理不尽がまかり通ってたまるか。


 物陰から出ていこうとすると、ソルシエルに肩を掴まれた。


「干渉しないのではなかったのか? 我らは傍観者でなければならない。正しく人間を裁くために」


「でも……俺は見て見ぬふりなんてできない」


 ソルシエルの手を振り払い、男たちの元へと飛び出す。


「おい、あんたら滅茶苦茶言ってんじゃねぇぞ。どんなに貧しくても他人から奪い取ろうとするのは見過ごせない」


「なんだ、てめぇ? 正義の味方気取りか? 痛い目に遭いたくなきゃ消えた方が身のためだぜ。それとも、てめぇが代わりに払ってくれるのか、お嬢さん?」


「失せろ」


 そう吐き捨てるなり、男たちはそれぞれポケットからナイフを取り出した。


 言葉でわからないなら拳でわからせるまで。

 二度と悪さできないようにしてやる。


 身構えると同時に、男たちは一斉に襲いかかってきた。


 ナイフが腹めがけて勢いよく突き出される。

 上半身を反らしてナイフを避け、流れるように拳を振りかぶる。

 一人の男がもう二人を巻き添えにしながら、いつぞやのナンパ男同様に壁へとめり込む。


 残るは二人。

 やけくそ気味にナイフを振り回す片方の男の腕を引っ掴み、もう片方の男に身体ごと思い切りぶつける。

 男たちはまたもや壁に突き刺さり、だらりと足を垂れ下げて動かなくなる。


 思ったより瞬殺だったな。

 さて、最後の仕上げだ。


 まだ意識がある男の頭を鷲掴みにし、耳元でささやく。


「二度とその面を見せるな。次はどうなるか、わかるよな?」


「ひぃ……!?」


 男は顔を青くしてそのまま気絶した。

 これだけビビってくれたらもう復讐なんて思いつきもしないだろう。


「大丈夫か、ゲオルグさん?」


「え、ええ。ですが、一体何が起きたのか……とにかく、助けていただいてありがとうございました」


「いいってこと。俺が勝手にしたことだしさ。はぁ、腹減ったな」


「ああ、まだ支度の途中でしたね。申しわけありません、すぐに部屋までお持ち致します」

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