第二十四部
五時間は図書館に滞在していただろうか。
王家について主にわかったことは、今の王女と政治の方針。
第七十三代王女――ディアクイン・アルトリンデ。
まだ若いディアクインは王都を守ることに必死で、国民のことは二の次。
国民の生活については干渉することも極力避けているような印象だ。
そして、ソルシエルの先代を処刑したのが第七十代王女。
ちょうどその頃から隣接する帝都ミラガルドに莫大な支援をしており、代が替わるごとに王都は貧しくなりつつある。
帝都との戦争を回避するための苦肉の策だが、貧富の差が浮き彫りになってしまっている。
結果、スラム街では犯罪が横行、ここで暮らす者たちに人権はないも同然。
裕福な城下で暮らす者たちが事実上国民、という暗黙の了解がディアクインの時代で根付いている。
負の連鎖が断ち切れていないのが王都の実情だ。
「腐っておる。魔女が死んで帝都につけ込まれ、されるがままに侵略されておるではないか。これは政治放棄も同義。このような国、守る価値も生かす価値もないわ」
「とはいえ、王女様もやりようがないんじゃないか。帝都に対する抑止力だった魔女が死んじまった以上、戦争するか従属するかの二択だろ? 王女様の立場で選ぶなら後者一択だ」
「くだらんな。奴隷のまま生き長らえることになんの意味がある? 放っておけば我が手を下さずとも王都は帝都の植民地と化して終わる。戦い勝ち取るしか選択肢はないのだ」
しかし、今の王都に軍事国家とやり合えるだけの力はない。
国一つ滅ぼせる力を持つ魔女がいたからこそ、百年前までは均衡が取れていたのだ。
解決策としては、魔女を再臨させること。
敵味方の立場を問わず、王都に魔女が存在する限り帝都は下手に動けない。
お師匠様が名乗りを上げれば王都を救うことができる。
でも、絶対に駄目だ。
帝都との戦争が避けられるとしても、今度は王都と魔女の戦争が起きてしまう。
お師匠様が勝てば王都は滅亡、王都が勝てばお師匠様は処刑。
どっちに転んでもバッドエンドだ。
俺は伸びをしながら大きく欠伸した。
「寝不足だし、今日はもう宿屋に帰ろうぜ。難しいこと考えすぎて頭痛い」
「そうするとしよう。王都の問題は王女に任せる。我らは干渉せず、ただ結果を見極め裁く。それでよいな?」
「ああ、異論はない。人間に愛想が尽きたら煮るなり焼くなり好きにするさ」




