第二十二部
ゲオルグが作ってくれた夕食を食べた後、俺はロビーでもらってきた新聞に目を通し、ソルシエルは読書に耽っていた。
新聞に書いてある限り、スラム街では犯罪が横行しているらしい。
盗みや喧嘩は日常茶飯事、王都の騎士が介入することはなくほったらかしにされている状態。
まさに無法地帯だ。
「お師匠様は昔王都で暮らしていたのか?」
「ああ、まだ少女の頃だがな」
「当時もスラム街はあった?」
「さあ、どうだったか。あったのかもしれぬが、気に留めたことはなかった」
「ふーん。人間同士で格差があるのって、冷静に考えてみると不思議だよな。城下で優雅にアフタヌーンティーを楽しむ人間もいれば、スラム街の路地裏で寝て起きる人間もいる。誰かが手を差し伸べれば解決するのに、誰もそうしようとしない」
「綺麗事だ、それは。人間とは元来利己的な生き物、他者に施しをするのは心に相当な余裕がある者だけだ」
確かに、そうかもしれない。
誰かに手を差し伸べたところで自分は得をしない。
見て見ぬふりをすれば損をしない。
理屈はわかるけど、納得はできない。
偽善だとしても、俺は目の前に救えるものがあるなら救いたい。
お師匠様が俺を救ってくれたように。
「さて、そろそろ寝るとするか。マリアよ、今日はベッドを譲ってやろう」
「え、いいのか?」
「うむ。我も隣で寝るがな」
「それは譲ってないじゃん……」
「ならば魔法でベッドを出せばよかろう」
「狭すぎて置き場がないって。え、ひょっとしてマジでお師匠様と一緒に寝なきゃいけない?」
「む、そんなに我とベッドを共にするのは嫌か?」
「いや、恥ずかしいっていうか……」
「そう照れるでない。さあ、遠慮せずこっちへ来い」
渋々ソルシエルの横に寝そべってみる。
狭い。
狭すぎて肩が触れ合う。
寝返りを打つと、背中にぷにぷにとした甘美な感触が押しつけられた。
顔と耳が急激に熱くなる。
「あのー、わざと押しつけてません?」
「ふん、我も辱めを受けたのだ、仕返しされても文句は言えぬぞ」
「ぐっ……まだ根に持ってたのか……」
駄目だ、このままじゃ目が冴えて寝れそうにない。
新手の拷問だ。
「ああ、そうだ。言い忘れておったが、睡眠中も魔女の宮殿に入れる。鍵は貴様に渡してあるゆえ、いつでも出入りできる。修行を怠るでないぞ」
「この状況でも!?」




