第二十一部
予想外に宿屋探しは難航していた。
人気のある宿屋はどこに行っても男たちから話しかけられ、最終的にはナンパをあしらって出ていくという繰り返しだった。
「やれやれ、どうしたものか。こうも人目を引いては落ち着かぬ」
「だな。これじゃ寝込みを襲われかねない。安眠できる宿屋、この街にあんのかよ」
「ないだろうな。多少は我慢するしか……いや、待て。街外れの宿屋ならどうだ? 人気がない場所なら宿屋も閑散としているのではないか?」
「確かに。多分、さっきの宿屋がこの通りの最後だよな。ちょっと進めば郊外に出るんじゃないか」
通りを先へと急ぐと、段々と人通りがなくなってきた。
市場もなく、街灯も疎らな通り。
路地裏にはホームレスや薄汚れた子供がちらほら寝転がっている。
スラム街のようだ。
貧富の差が激しい。
活気のある街とは打って変わって、ここは堕落した人間が追いやられた隅っこだった。
王都の闇に入り込んで微妙な気分になっていると、弱々しく明かりを放つ宿屋を見つけた。
「あの宿屋なんかどうだ? ちょっと狭そうだけどボロすぎないし、人気はなさそうじゃないか?」
「うむ。治安はよくなさそうだが、蝿共にたかられるよりはましか」
立てつけの悪い朽ちかけたドアが、ぎしぎしと不気味な音を鳴らす。
中は予想通りというべきか、ぼんやり薄暗く人っ子一人見当たらなかった。
そして、奥から姿を現したのは髭面の冴えない店主。
「ようこそいらっしゃいました。高貴なお客様が訪ねてこられるなんて珍しい。旅行の道中ですか?」
「いや、当面の間王都に滞在しようと思ってな。城下の方はやかましくていかん。ここは静かでいい」
「ありがとうございます。私はゲオルグ。食事のご用意から部屋の掃除までなんなりとお申しつけください」
「うむ。ゲオルグよ、ここに決めたぞ。世話になる」




