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第十一部

 日が暮れた頃、俺は馬車の背もたれに全体重を預けていた。


「やれやれ、散々な一日だったな……」


 ナンパ男をぶっ飛ばした後、ナンパをいなしながらしばらく聞き込みをしてみたが、王都と魔女の深い溝を垣間見ただけだった。


 特に印象的だったのは、王都と魔女の戦争。

 伝説によると、魔女は国民の大多数を虐殺し王都の大半を壊滅させた。

 だが、最終的に魔女は王都によって処刑され戦争は幕を閉じた。


 恐らく処刑された魔女はソルシエルの先代のことだろう。

 ここまでの敵対に至るには相応の理由があったはずだ。


 馬車が止まる。

 屋敷に到着したのだろう。


「戻ったか。王都はどうだった?」


「ひどい目に遭ったよ。もう懲り懲りだ」


「ふふふっ、土産話が楽しみだな。さあ、食事にしよう」


 ソルシエルと食事を取りながら、俺は王都であったことを話した。


 市場で軽い暴動が起きたこと、ナンパ男を物理的に黙らせたこと。

 そして、魔女について聞き込みをしたこと。


 ソルシエルはわずかに表情を曇らせたが、何も言わず静かにワイングラスを傾けた。


「しかし、博物館に魔女の頭蓋骨が展示してあるなんて悪趣味だよな。もしかして、それってお師匠様の先代の――」


「さあな。確かに先代ソルシエルは処刑されたが、それが本物かどうかはわからん。ふん、魔女が処刑されるなど恥でしかない。くだらん情で人間共に勝ちを譲ったのよ」


「どういうこと?」


「この世界を滅亡させるくらいなら自らが死を、と。実にくだらん」


 ソルシエルの視線の先を見やると、例の肖像画があった。

 先代ソルシエル――ソルシエルの師匠にして、王都陥落を図った大罪人。


「魔女と人間は相容れぬ関係。人間とは支配したがる生き物だ。裏腹に先代は人間と共存しようとしていた。人間を超越した魔女さえ支配下に置こうとする低能共と和解など、全く不可能だというのに」


「絶望したのか、先代は」


「だろうな。わかり合えないことを悟り、処刑されることに甘んじた。だが、我は違う。我はこの世界を滅亡させ、我だけの世界を手に入れる。孤独でも構わぬ。魔女として差別されるくらいなら、この世界に我一人でも構わぬ」


 金色の瞳には復讐と決別が浮かんでいた。

 ソルシエルもまた絶望しているのだ。

 人間と、この世界に。


「ナナシよ、貴様は――我の味方でいてくれるな?」


「ああ。俺はお師匠様の弟子だ。お師匠様が正しいと思う限り、俺はお師匠様の味方だ」


 俺はもう人間じゃない。

 魔女の領域に片足を突っ込んでいる。

 王都が相手だろうが関係ない。

 多勢に無勢でもやってやろうじゃねぇか。


 ソルシエルは頬を緩め微笑した。


「貴様を選んでよかったのかもしれない。我が魔法にかかった以上ただの傀儡に過ぎないと思っていたが、どうやらそうではないらしい。傀儡とは意志を持たぬ奴隷。貴様はそれに当てはまらぬ」


「可愛い弟子だろ?」


「ふん、図に乗るな。まあ、永遠のような退屈が紛れる程度には楽しめているか」


「素直じゃないな、お師匠様は。これがツンデレってやつ?」


「……口の減らぬやつだ。我はシャワーを浴びて寝る。貴様も勝手にしろ」


 顔を赤らめてリビングを後にしたソルシエル。

 堅物もこうしてみれば可愛く思えてくる。


 これから世界を滅亡させるなんてまだ実感は湧かないけど、お師匠様とならきっと――


 俺はソファーに横たわり、瞼を閉じた。

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