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プロローグ
杭を打ち込まれた手首がずきずきと痛む。
俺を見上げるは無数の観衆。
磔にされて晒し上げられる感覚は、不快以外の何物でもない。
皆殺しにしてやりたいとさえ思ってしまう。
奇異の目、裏切り、理不尽、孤独。
今ならわかる。
それでも――
俺は観衆の中で殺意に濁った双眸を見据えた。
「絶望するにはまだ早いぜ、お師匠様!」
俺がお師匠様と呼んだ女は、微塵も動じずわずかばかり口を動かす。
「魔法『終焉』……全てよ、無に帰せ」
「馬鹿が……魔法『反転』! 打ち消せ!」
世界の終わりなんてまだ早い。
この世界が地獄だったとしても、最後まで足掻いて、最後まで抗って、最後まで生き抜いてやる。




