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22.神の目覚め
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「――アアアアアアアアアアァァァ……神ヨ……今こそ目覚め、ヨ……」
〈血統者〉達が退却してから間もなくして〈亜神〉は〈神獣〉と同じく粒子となって空に消えた。
呼応するようにボゴボゴ、と地下から破裂音が響く。
神殿に沈んだ岩窟の中から勢い良く飛び出したのは〈神〉。それは〈亜神〉などという残響ではなく正真正銘の上位生物。〈神獣〉、〈使徒〉、〈使徒帝〉、〈亜神〉の頂点に君臨するそれの名は〈風神ヴェンタス・アーラ〉。
数千年の眠りから目覚めた、葬ることすらできなかった一柱は亜神以上に明朗な憤怒を湛えて、じろりと王国を睨みつけた。
「……一人残らず人類は殺す、何もかも滅ぼし尽くす――」
怒りをトリガーとして発動した比類なき《神威》が放射状に広がった。瞬く間に王国全土にまで浸透した憎悪の威力は人類の希望を、心を、クッキーのように粉砕する。暗雲は空だけでなく、民の心にも植え付けられた。