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フィニスエアル ――少女が明日を生きるためだけの最終決戦――  作者: (仮説)
少女が明日を生きるためだけの最終決戦
2/170

1.乙女の旅立ち

 

 ◎


 


 太古の昔、世界は神に支配されていた。


 また、世界に生きるすべての生き物も同じく支配されていた。


 人は支配されていることに気づかず、神が救いをもたらす存在だと狂信の如く崇拝していた。


 しかし、神にとっては地上は盤上の箱庭でしかない。


 やがて神の悪戯は人々に災厄として降りかかる。


 


 人類が神が理不尽な存在だと気づいた時には、世界に絶望という名の暗雲が蔓延る獣の世界と化していた。


 その時、救済の一〇柱から奇跡がもたらされた。


 地上に堕ちてきた裏切りの神々は人類に理不尽を打倒する力を授ける。選ばれし者は神々と争い、やがて打ち倒した。


 そうして、神は人と同じ生命と再定義され、世界には支配者はいなくなった。


 


 人類と神々の神話大戦は〈最終決戦〉と呼ばれることとなる。


 あれから一〇〇〇年の時が過ぎた――。


 

 


 フィニスエアル・パルセノスは教会にいた。


 教会とはいっても数世紀前に建築された現在では激しく古びたもので、ところどころ破損しているため今では誰も寄り付かない骨董建築である。


 女神が象られたステンドグラスも破片となり床に散らばっている。天井は半ば崩れているためいつでも青空を仰ぐことでき、柱の意匠は風化して今では見る影もない。当時と変わらない姿で残っているのは唯一飾られている白金の十字架のみだ。

 


 祭壇の正面でフィニスエアルは祈るように細い指を組んでいた。


 教会には彼女以外には誰一人いない。


 だが、フィニスエアルの眼には人の姿が見えていた。


 


 真珠の色の長い長い髪からは虹色の光輝が溢れ、美の権化たる肢体を覆うサラサラな布も同色の輝きを有している。あまねく恩恵を一身に集約したような最上であり、極上である存在感を放っている。


 彼女は美と戦争を司る女神――ウェヌス・ベルルム・ウェール。


 戦乱の果てに幽霊となった女神。その白い手がフィニスエアルの頬へ伸びる。


 自然と体に染み込む静謐な声が響いた。


『美と戦の神ウェヌス・ベルルム・ウェールの名に於いて、あなたの旅に神の加護があらんことを』


 虹色の後光から琴の幻想的な音色が弾かれた。


 スペクトルは塵となりフィニスエアルに降り注ぐ。


 燐光を反射したのはフィニスエアルの燦爛なる金髪。背中を溢れて広がる黄金は美の女神にも匹敵する流麗さがある。


『なんてね?』


 一転、ウェヌスは表情を崩して少女にようにあどけなく笑う。


 肩を竦めてフィニスエアルも微笑みを返した。


「急にどうしたの? こんなことやって」


『たまには女神らしいことしたかったの。ほら幽霊だし、何にも触れないから気分だけでも神様したかったのよ』


 フワッ、と浮くと女神は少女に抱き着く。幽霊故に触れることができないためこれも気分。しかし、世界に干渉できないはずの霊体だが、フィニスエアルは不思議と暖かさを感じていた。


 


『行ってきなさい、フィニス。あなたの求めるものが見つかるまで』


 


 慈愛に満ちたウェヌスが応援の言葉をかければ、祝詞は流星となって遥かな空まで伸びて行く――。


 

 


 フィニスエアル・パルセノスは〈神覇王国インペリア女子〉の外れも外れ、管理すら忘れられた大田舎の村に住んでいる。世間から隔絶された数世代古い情報の中でおおらかに一六年を過ごしたどこに出しても恥ずかしくない美少女である。

 


 フィニスは十字の形をした墓石の前で手を合わせていた。刻まれているのは両親の名前。ほんの数日前に亡くなったばかりの夫婦が入っている。


 数分かけて想いを整理した後、フィニスは目を開く。寿命が短いことは知っていたので彼らが亡くなった時も今のように心は落ち着いていた。


「よし、そろそろ行こうかな」


 その場から立ち上がり自宅へ戻る道に乗る。


 広がるのは誰が見ても廃れた村という惨状。煉瓦造りの家屋が並んでいるがどれも天井は崩れ落ち、外壁は風化により黒ずんでいる。雑草は灰色で無秩序に生い茂り、街のシンボルであった教会も辛うじて骨格が残っている程度でしかない。


 復興は不可能――。


 文明の破壊跡がある分、新しく開拓するよりも難儀だろう。


 フィニスは両親がなくなったことにより天涯孤独の身となった。


 だが、彼女は一人ではない。


「その〈王国都市〉まで歩いてどれくらいかかるの?」


『二ヶ月くらいじゃない?』


 静謐ながら柔らかさが滲む返事は彼女の中だけに返ってきた。


 幽霊にして神であるウェヌス・ベルルム・ウェールの姿形はパルセノスの特殊な血統にしか知覚することができない。彼女が天涯孤独になった今、フィニスにウェヌスしかいないように、ウェヌスにもフィニスしかいなかった。


「二ヶ月……結構遠いんだ」


『なら――〈魔法〉で空飛べばいいでしょ』


「それもそっか。じゃあ、明日出発しようかな。それでいい?」


『えぇ、あなたの思うままにね』


 女神の返事に頷く金髪の少女は灰色の地面を踏み締めた。


 唯一人間的痕跡が残る家屋がフィニスの家。リビングを抜け、自室へ向かい長旅の準備を始める。


フィニスエアル・パルセノス

一応の設定:

金髪

身長170cmくらいある

底冷えするような美少女

胸が大きい、それはもうとんでもなく

足が長い

基本的に呑気

愛に溢れている?

天涯孤独(幽霊を除く)?

特殊な魔力性質を四つ持っている



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