2.帝都魔導学園
◎3
サファイアが居間にで優雅に朝食を摂っていると、騒々しく両扉が開け放たれた。この館で無闇に音を立ててはならない、というマナーを守らない人物は一人しかいない。
入口に立っていた少女は自信と、嬉々の笑みを湛えて開口一番、〈サファイアちゃん、学園に行ってみない?〉と言ってきた。
朝っぱらから元気な奴だ。
黄金なる長髪を真っ直ぐに下ろした背の高い少女は、ポカンとしてサラダを食べる手が止まっていたサファイアに再度に問い掛ける。
「学園、行ってみようよ。ね?」
「いきなり何よ――フィニス」
――フィニスエアル・パルセノス。
彼女こそ燃え盛る城からサファイアを助けて、中央大陸まで連れて来てくれた命の恩人。
白色の軍服スカートに、薄いフォルムの眼鏡を掛けた超が付くほどの美少女。凛々しく、美しい見た目とは裏腹に性格は豪放磊落、快楽主義といったもの。
感謝の気持ちはあるが、基本的にトラブルメーカーなため振り回されて大変な目に遭うことの方が多い。
何の説明もない辺り、サファイアのプロファイルは間違っていなかった。
ため息一つ吐いて、サファイアは食事を中断する。
「一から説明して。いきなりそんなこと言われても困るから」
「そっか、そうだよね」
フィニスは大して悪びれもせず、思い出すように語る。
「昨日ね、ユニスのところにいったんだけど……明日というか、今日に学園の視察に行くことになってるんだって。その時、たまたまサファイアの話題になってさ」
「ユニス……聖女ね」
〈ゼイレリア〉の三つの柱の一つが聖女教であり、その最高権力者を〈聖女〉と呼ぶ。ユニスは当代の〈聖女〉であり、史上最強の〈聖女〉でもあるそうだ。
サファイアも幾度か顔を合わせたことがある。色素を失ったような真っ白な髪、下半身が不随のようで車椅子で移動をしていた。内面も外面も聖女らしく、慈愛に満ちた人物だった。
「帝国だと最低七歳から学園に通うこともあるんだって。だからサファイアも通えば良いじゃないかなー、って思ってさ」
「学園、って――帝都魔導学園のことよね?」
「そうそう、魔法の学園」
昨日、胡散臭い吟遊詩人が指示した場所だ。
〈命名士〉は予言していた。この学園に行くことでサファイアの人生が変わる、と。
そして、お誂え向きに学園への道筋が準備された。これをただの偶然、と言うには都合が良過ぎる。まるで何かの陰謀が渦巻いているかのようだ。
基本的にやることもないので、暇潰しがてら付き合っても良かったが先の一件のせいで〈別に良いけど〉が喉につっかえてしまった。
「…………」
「折角だから一緒に行ってみようよ」
「私は――」
「――一度くらいは行ってみても良いと思います、サファイアさん」
口を挟んで来たのは同じく朝食を摂っていた〈白騎士〉エリだった。
「一概に良い場所とは言えませんが、滅多にできない体験ができますので様々な経験を詰めます。性質上、自分の想像を超える存在にも会うことになるでしょうが、凝り固まった観念を解す一助になるかと」
エリらしくない、どこか感情の籠った台詞は実体験を元にしたものだった。
フィニスもうんうん、と頷いている。
「エリと出会ったのも学院だったもんね。あの時はいきなり勝負仕掛けられて驚いたな」
「その件に関してましてはこちらに非がありますが、試合に関しては完全に楽しんでおられたでしょう?」
「だって強い人と戦える機会がないからさ」
「そんなことだと思ってました」
サファイアはこの乙女オーラ全開の会話に首を傾げる。性格で言えば丁度真反対にいるような対極の二人。エリとフィニスが思い出話に花を咲かせるなど違和感しかない
そもそもどうしてこんなにも仲睦まじくなれたのか甚だ疑問だった。
――まさか同じ学園に通っていたから?
「通うか通わないかは置いて、一度見ていかれるのはどうでしょう」
「……あなたがそこまで言うなら行っても良いけど」
「よしっ、じゃあ早速行くよ!」
「ちょ――!」
朝食もそこそこに腕を掴まれ連れ出されるサファイアに、エリは静かに手を振った。
沈んでいる時はああやって無理矢理にでも引っ張られる方が良い――エリはそんな魂胆もあって、サファイアに学園見学を勧めたのだが。
「フィニスさんがどこまで自重するかは予測できませんけど」
まともに学園案内できるとは微塵も考えていなかった。
――館から連れ出されたサファイアは、フィニスの脇に抱えられて空を飛んでいた。
どんな魔法を使ったのか空気抵抗を無効にした飛行のスピードは簡単に時速八〇キロを超えてしまう。幼女はそれを平然と実行するフィニスと、瞬く間に過ぎ去る豪奢な街区を交互に見て声を荒らげる。
「ちょっとフィニス! 貴族街は空を飛んで移動することは禁止されての知らないの!?」
空を飛ぶどころか、緊急事態を除いて都市での魔法の使用は禁止されている。
容易にトラブルを引き起こし得る魔法の取り締まりは厳しい。こんなところを衛兵に見られデモすれば罰金程度では済まない。
「大丈夫だよ」
得意そうな顔でフィニスは応える。
「《物理偏光》で見えないようになってるから安心して」
「バレなきゃ良い、ってもんじゃないでしょ」
「私を捕まえることができる衛兵さんがいたら素直に捕まるつもりだけどね」
サファイアはよくわからない潔さに辟易した。わざわざリスクを取ってまで急ぐような案件にはどうしても思えなかった。
実現し得る最短距離で辿り着いたのは聖女殿である。聖女教の本殿であり、聖女本人が居住している場所だ。一旦、集合してから学園に向かうようだ。
鉄柵の前に降りたフィニスはサファイアを下ろす。
「ちょっとユニス呼んでくる、待っててね」
鉄柵を飛び越えて、敷地内にある館のベランダまで一足で行ってしまった。
「平然と不法侵入してるし……」
もはや突っ込みを入れることも面倒だ。
結界の魔法をすり抜ける技術は素直に尊敬したいところだが、こんな無謀なことばかりされると称賛したくてもできない。
間もなく、正面入口からフィニスは戻って来た。車椅子を押しており、そこに座る者こそ聖女その人だ。名を――ユニス・テクノセイラと言う。
「久し振り、サファイアちゃん」
ユニスに朗らかな笑みを向けられたが、直視できず目を逸らし、不愛想に返事する。
ませた態度をとっても聖女ユニスは顔色一つ変えずに微笑んだ。
「そうね、久し振り。元気そうで良かったわ」
「サファイアちゃんもいつも通りそうね。安心した」
「どういう意味よ?」
「今日も可愛いね、ってこと」
「は?」
悪態をつきつつも満更でもない年頃だった。
三人は〈帝国都市〉から帝都魔導学園のある〈行政都市〉へ移動を開始した。徒歩にしては距離はあるのだが、ゆっくり街を見ながら歩いて行く。
車椅子に乗った少女が街並みを行けば、当然目立つ。そんな身なりをした者は帝国に聖女しかいない。民衆は歓声を上げ、手を合わせる。
サファイアを始めとして、フィニスもユニスも人前に立つことに慣れているので凱旋染みた一行となっていた。
道中、ユニスが後ろ振り向く。
「フィニスさんは最近何してるんですか?」
「んーとねぇ、〈賢者の塔〉に行ってることが多いかな」
「〈賢者の塔〉……ということは〈円卓賢者〉と会って?」
「違くて、図書室に行ってるの。神についての文献を探しててさ、あんまり上手く行ってないんだけどね」
「神ですか……王家の血筋に流れているという話はありますから、帝国図書館にはあるでしょうけど」
ユニスとしては何気ない台詞のつもりだったが、返って来た反応は思い他大きかった。目の前まで顔が接近し、思わず赤面する。
「え、それ本当!?」
「お、恐らくですけど」
「というかあのお姫様、〈血統者〉だったんだ。流石にびっくりしたぁ」
「お姫様というか女帝ですけどね……」
楽しそうに話す姿はまるで二人双子の姉妹を見ているようだった。どちらが姉ということもなく、どちらが妹ということもない。シンプルに隔てなく、仲睦まじい。異性同士だったらカップルに見えていただろう。
サファイアにはユニスがフィニスに執心しているように見える。これほど仲が良いとは思っていなかった。
「今度、王城に入ろっかな」
「いやダメですよ! 聖女殿以上に厳重に守られている場所ですからバレたら大変なことになりますから!」
「でも、王様と会う方法がないしなぁ。なんか戦争とかしてたら功績を上げて謁見できるかもしれないけど」
「物騒なこと言わないで下さい。でも、賢者の関係者なら機会があるのでは?」
「それもそっか。後でネーネリアに訊いてみよっと」
ピンク髪の幼女が頭を抱える姿が容易に想像できる。
そんな他愛のないことを話していると、〈行政都市〉が目前まで迫って来た。その名の通り、都市行政を司る法的機関が多く設置されている。また、帝都魔導学園を始めとした教育施設もこの区域にある。
その中でも取り分け大きい敷地を用いて作られているのが目的地である帝都魔導学園だ。
〈ゼイレリア〉では、神獣大量生息地域である西大陸ほどではないが、魔法教育に重きを置いており、かなりの資金が投入されている。それは校舎のデカさからでも窺えることだ。
魔法の才能がある子供なら貴族・平民問わず七歳から入学することができる。幼い頃から魔法を学ばせることで優秀な人材を生み出そうとしているのだ。
聖女ユリスが学園に来たのは視察という目的がある。学園に通う生徒の中に聖女教の信者がいる、ということで様子を見るというのが表側向きだ。
校門の前で魔導学園の副学園長が迎えてくれた。
「聖女様、本日はようこそおいでくださいました。私は副学園長のティラックです。今回、学園の案内をさせて頂きます。よろしくお願いします」
「ご丁寧にどうも、ユニスと申します。よろしくお願いします」
ユニスは聖女という権力に笠を着ない丁寧な挨拶を返した。
「後、こちらの娘も一緒に見学することはできますか?」
「構いませんよ。是非共、楽しんでください」
サファイアを聖女教の関係者と勘違いしたのか、副校長はすぐに頷いた。フィニスのことも同じような立場だと思っているのだろう。
副校長の案内で最初に向かったのは教室。丁度、授業中のようで出入口から生徒が机に向かっている姿がある。サファイアよりも低い年齢の子が真面目に勉強に取り組んでいた。黒板には魔法陣が描かれており、教師が説明している。
「基本属性の初級魔法の授業を行っているところですね」
副校長は生徒達を見て満足そうに頷いた。
「彼らは一年生ですが、やる気に溢れていて素晴らしいです」
「どうかな、サファイア?」
フィニスがそれとなくサファイアに訊く。
「何か詰まらなそうだけど」
「……よくもまぁ、堂々と言えるわね……」
流石の副校長も聖女の前では笑顔を崩さないが、頭に怒りマークくらいは出ていた。
サファイアは改めて教室の様子を窺う。
「これだけじゃ一概には言えないわね。別に座学が全て、って訳でもないでしょ」
「仰っしゃる通りです、次行く校庭では体育と魔法の実演を行っています」
校舎を通り抜けた先に開いた空間が広がっており、その中央に的が立っている。的目掛けて生徒が火の玉を打ち放っていた。
的にぶつかった火球は不自然に霧散する。魔法の威力を軽減する魔法陣が敷かれているようだ。
「これは三学年の生徒達ですね。魔法の訓練を行っているところで、あの的にぶつかった魔法の威力や魔力量の情報は教師が持つ端末に送られます。そこから生徒それぞれに合った訓練法を示します」
「凄いですね。ここまで徹底的にしているとは思ってませんでした」
ユニスは目を見開いて驚愕の意を表す。魔法の才能という抽象なものを個人単位で解析した授業など、ここ以外で受けることはできない。画期的かつ、前衛的な試みである。
サファイアは生徒の撃ち出す魔法を注視した。
「見たことない魔法……」
火炎を玉にして撃ち出す初級魔法――《火玉》。
何のことはない初級魔法。サファイアなら、一度見るだけで容易に模倣することもできる。だから、できるできないは問題ではない。
「中央大陸の魔法?」
学園では、生まれも育ちも西大陸のサファイアが知らない魔法体系でカリキュラムが組まれている。西大陸で最も有名な火属性初級魔法は《火炎》だ。同じ効能でも魔法発動の手順が異なっていた。
「また、校舎への衝撃が打ち消されるように結界も張られておりますので安全面に関しても十全になっています」
副校長が鼻高々に説明してくれた通り、煉瓦造りの壁面にはエネルギーを散らす魔法が付与されている。校舎の地下に結界の巨大魔法陣があることがエネルギーの流れから見取ることができた。
サファイアは学園など低レベルだと決めつけていたが、少なくとも母国の学院よりは遥かにマシだと上方修正する。例え、ここに入学してもしばらくは退屈せずには済みそうだ。
「続いて向かうのは屋内訓練場です。丁度、特待生のクラスが模擬戦をしているところでしょう」
「へぇ、模擬戦か。最近してないな」
戦いと聞いて真っ先に反応したのはフィニスだ。美少女の面をしているが、中身は戦闘狂だった。
訓練場に案内され、模擬戦を行う生徒達の横合いに並んで様子を眺める。
剣戟と魔法乱打戦――今まで見た生徒達とは画する魔法技能、戦闘技術の詰め込まれた戦闘が広がっていた。扱われるのは軒並み上級魔法。それこそサファイアと変わらない年の子供がチームに分かれて大人顔負けの戦闘を繰り広げている。
いつか彼らが守る帝国の未来は盤石だろう。栄華を極める帝国の未来は明るい。
副校長も解説を中断するほどの戦い。
特待生同士の模擬戦を制したのは最年少チームだった。才能というものは残酷なことに経験をもカバーしてしまえることがよくわかった結果だ。
「…………」
「どうかな、サファイア?」
再度、フィニスが尋ねてくる。先程のように不満や文句を言うことはできそうにない。
「悪くないわね、思ったより実践的だし」
「おお、結構高評価」
「さっきと比べたら。ここなら私でもそれなりにね」
常勝の三人組は集まり、フィードバックを行っていた。この年でそこまでするとは、最近の子供は成長が早い。などと考えているフィニスだった。
ふと、その中の紅一点の女子生徒がサファイア一行に気がついた。というか、車椅子に乗った白髪の美女に気がついた。
「あ、聖女様! お初にお目にかかります、ウェスティナと申します」
ウェスティナと名乗った少女は胸の前で手を組んだ。
「そんなかしこまらなくても良いわ。よく研鑽しているのね、偉いわ」
「そ、そんな! 勿体ないお言葉。こちらこそ聖女様にお目に掛かかれるとは、光栄です!」
学業をしながら、神殿に通って神官の見習いをするウェスティナ。街中を歩くだけでパレードになることを考えれば、ウェスティナの反応は尤もなものだろう。
ユニスもこういうことに慣れたのか、卒のない対応をした。
「今日はスティアーナさんはいないのですか?」
「神殿の方で別のお仕事があるみたい。だから、今回はお友達に押してもらって来たの」
「お友達ですか……――」
ウェスティナの声に疑念が宿る。
帝国では、聖女と肩を並べることができるのは女帝と賢者しかいない。聖女に友達がいるというのはどうしても違和感があった。
「フィニス、って言います。よろしくね、ウェスティナちゃん」
雰囲気なんてぶち壊す満開笑顔の挨拶にウェスティナは一瞬動揺し、直後フィニスの美貌にあてられた。眼鏡の向こうで花開く魔眼の権能が発動したのだ。
ウェスティナは反射的に目を逸らし、僅かに頬を赤くした。
「よ、よろしくお願いします」
かの魔眼に抗うには精神魔法の耐性を高く保つ必要がある。かく言うサファイアも当初は得も言われぬ感情に振り回されていた被害者の一人だった。
そして「で、この娘はサファイアね」と、フィニスについでのように説明された。
ただ、サファイアが誰かに愛想を振り撒くなんてことできる訳もなく、剣呑な瞳は単純にウェスティナを威圧していた。
「もしサファイアがここに入学することになったら一緒に戦うかもしれないから仲良くしてあげてね」
「は、はぁ……」
完全に歓迎していなさそうな反応だったが、気を遣わせていた。
微妙な空気のまま話が終わる――と思っていたが、予想外のところから声が掛かる。ウェスティナと同じ班に属する男子生徒だ。
「誰か知らんが、簡単に言ってくれるな」
「ん? いや、ちゃんと見てたけど?」
フィニスは意味わからないという風な態度だった。
「矮小な魔力しか感じない。お前、素人だろ」
「――止めておけって、ダクタス」
止めたのはもう一人の男子生徒だ。年相応の可愛らしさを残しながら、切れ長の瞳からは知性を感じられる少年である。
「流石にその言い方は失礼だろう」
「無知ほど愚かなことはないからな。俺達がどれだけ努力したのか理解しようともしない奴らだ」
「酷いなぁ」と、フィニスは緊張感皆無でへらへらしながら。「見せつけたい訳じゃないけど、私もそれなりに強いから見ればわかるよ」
挑発染みた発言に、彼の視線が明らかに険しくなる。ダクタスという少年はフィニスから戦意を受け取ってしまった。
「身の程知らずが……なら試しみるか?」
「ちょっと、待ってください!」
予想外の流れに副校長も黙っていられなかった。
特待生の実力はそこらの騎士を遥かに上回る。一般人ではそもそも相手にならない実力者なのだ。フィニスのような風が吹いただけで倒れそうな乙女では見るまでもなく結果がわかりきっていた。
「聖女様のお付きの方ですよ。もしものことがあったらどうするんですか!」
「そんなの関係ありませんよ。彼女自身が言ったことでしょう、それなりに強いと」
「あなたも、何とか言ってくださいフィニスさん!」
反駁してきた少年から、フィニスへ標的を変える副校長。決して論破されたからではなく、フィニスを説得する方が早いと思ったからだ。
「実は模擬戦とか好きだから嫌な訳じゃない」
「は?」
「そんな驚かれるようなことじゃないと思うけどな」
副校長が期待した、いたいけな少女が言うような台詞が出るはずもなく、むしろバトルに乗り気であった。呆然と口を開いたままの副校長を差し置いて、フィニスとダクタスは視線を交わした。
「今更謝っても遅いぞ」
「ん? 私謝るようなことしたっけ?」
「ッ、そうか。どうなっても知らないからな」
無神経な発言はこういうトラブルも引き起こし得る。以前にも酷い目に遭ったが、フィニスは全然反省していなかった。だが、彼女は正しい。謝ることなど何もない。堂々と、思ったことを口にするのみ。
――模擬戦VSダクタスが始まる寸前、空色の髪を携えた少女が中央に躍り出た。
「その勝負、私が受けるわ」
サファイアがフィニスの前に立ち、少年を睨みつける。