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フィニスエアル ――少女が明日を生きるためだけの最終決戦――  作者: (仮説)
少女達が理不尽を打ち砕くためだけの頂上決戦
141/170

0. プロローグ〈今宵の来訪者〉

新章と言えば新章


 ◎


 


 〈天帝国ゼイレリア〉――中央大陸において最も発展し、活気と栄華に溢れた国。その歴史は古く、一〇〇〇年前に起きた最終決戦にまで遡ることができる。帝王・聖女・賢者という三つの柱があらゆる敵を返り討ちにし、世界最高の富を勝ち取った。


 その栄華はいつまでも続くかと思われたが、しかし、〈ゼイレリア〉に危機が訪れようとしている。


 


 鍵になるのは魔女の紋章であり、黄金の姫である。


 数か月前から、何のためかは不明だが特定の人物の身体に称号と数字が与えられた。その数字が意味するのはこの世界で何番目に強いか。紋章により、強者達の争いは加速した。つまり、常軌を逸する化物達が一堂に会するということだ。


 そして、もう一つであり――マスターピースである黄金なる姫。


 〈白龍紋〉〈黄金血統〉〈黄金夜叉姫〉――様々な名で呼ばれるその少女には神々に連なる血が流れていた。戦と美を司る権能を有す彼女は〈運命〉という枷で繋がれている。あらゆる事態の中心に彼女はいた。


 


 少女が引き寄せる因果と、魔女の紋章による強者の局地的な邂逅はこれまで類を見ない大事件を巻き起こす。


 


 ――手入れのされていないボサボサのプラチナブロンドからは鈍くさそうな印象しか受けない。〈調停者〉ギリヌス・カルゼルという高尚なローブを纏った男が〈天帝国ゼイレリア〉に足を踏み入れた。


 彼も、黄金なる姫の持つ因果から引き寄せられた来訪者である。


 似合ってもない丸眼鏡の向こうの見透かすような双眸を振って活気溢れる街並みを一望した。


「なかなか良いところですね。恐ろしき女帝がいると聞いていましたが、政治は中々に上手いようです」


「――んなのどうでもでも良いけどよぉ」


 ギリヌスの関心をざっくばらんに切り捨てたのは彼の同行者である〈破壊卿〉ルーフェン・エルドレッド。バンドで掻き揚げた頭髪、二メートル近い身長と、肥大化した筋肉が特徴の野生児は不機嫌そうに訊く。


「本当にこんなところにいるのか、あの〈二〉番目がよ?」


「今はいないです。しかし、必ず現れます。ご心配されなくとも計画は完璧ですから」


「だと良いがな。現れなかったらお前と殺し合わなくちゃなくなるな。ま、それも悪くねぇが」


「わかりきった戦いでしょう? その場合は私だけでなく〈飛翔神煌〉と共闘させてもらいますよ」


 そう言いながら、ギリヌスはもう一人の同行者である〈飛翔神煌〉ツィアーナ・プテリスを見遣る。


 ツィアーナはやる気のなさそうな細い目を浮かべ、ぼそぼそと呟いた。


「何で私が巻き込まれなくちゃいけないのよ……」


 煩わしそうにギリヌスを睨んだ際どいドレスを身に纏う妙齢の女性。彼女の周囲には幾何学的立体が浮かび、衛星のように秩序立って回っている。


 突き抜けた個性がぶつかり合ったこの一団の纏まりは皆無だった。それもそうだろう、本来彼らは誰かとつるむようなタイプではないのだから。


 目的が、理由が、因果がありこの三人は行動を共にしている。


 だからこそ、何をしでかすかわからない混沌でもある。己の覇道を征く者が三人交わった時の相乗効果は予測だにしないものになる。


 ギリヌスは改めて面子を眺めて、苦笑いを浮かべた。


「巻き込んで帝国を滅ぼさないか心配ですよ。そこは〈調停者〉の関知するところではありませんけどね」


「止めるのは国同士の戦いだけかよ、意味がわからねぇな」


 脳筋の気があるルーフェンは端的にギリヌスを馬鹿にした。


「調停はあくまでも対症療法ですから。根本的な問題を解決するに越したことはありません」


「それが帝国で叶うと?」


「えぇ、ようやく悲願が達成できそうです」


 平静を装っているが、その実は舞い上がりそうになっていた。数百年以上待ってようやく、この時が来たのだ。そのことで頭がいっぱいになって転びそうになり、魔法で飛んで回避するということもあった。


 


「さぁ、行きましょう。我々の決戦にね――」


「俺は強い奴と殺り合えれば何でも良いけどよぉ」


「……賢者は絶対に殺す、この手でね……」


 


 剣呑な三人組が〈天帝国ゼイレリア〉へ進撃を始める。


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