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第4話

 

 

 私とアランは商人ギルドを後にし、グレイス王国を満喫している。

 食べ歩いたり雑貨を買ったり。そうそう、宿はもう取った。毎回のループでもお世話になっている、宿屋シングレイ。アランのお気に入りでもあるから毎回そこだ。

 

「お!君かわいいねー!どう?俺らとお茶でも」

 

 典型的なナンパか。そんなものに興味は無い。

 私は無視して立ち去ろうとするが、アランが少々暴走してしまった。

 

「ちょっ、お前たち不敬だそ!トワさ――トワちゃんに気安く声をかけるな!」

「あー……アラン?恥ずかしいから辞めて欲しいのだけれど」

 

 ただのナンパで不敬などと。身分証には神族とか何とか書かれているが、見た目はただの女児。

 そんなことで天罰だと怒り狂うつもりなど毛頭ない。

 

「で、でもトワちゃん、こいつら」

「いいのよそんな小物。相手するだけ時間の無駄だわ」

 

 これが私の本心。そもそも人間を間引こうと決めた時からその対象は決めてある。この程度は残したところで大した害にもならない。

 私はアランの手を引き、ナンパ男たちの横を通り抜ける。

 

「いや、ちょっと待てよ。それはなくね?」

 

 私に見向きもされなかったことで安いプライドが傷ついたのか、彼らは強引に掴みかかろうと腕を伸ばした。

 しかし――

 

「は?え、あれ?」

「おい、何逃がしてんだよ」

「いや……掴めなかった、肩」

 

 それはそうだろう。お前たちは今、何も無い空間を掴もうとしたのだから。

 

 異空間の鎧。私はそれを常に身に纏っている。

 スペカが入ってきた事でこれも精度が上がり、害意の無いもの、今回であればアランの手は通常通りに触れることができ、反対にナンパ男の手は異空間に呑まれたというわけだ。

 

「いいかしらアラン。これからああいうのが絡んできても基本的に無視で構わないわ。どうせ何もできやしないのだし、もしムカついてもどこか適当な場所に飛ばす程度に抑えるわ」

「わ、分かった。そうするよ」

 

 それでよろしい。

 明日はバザール初日だ。今日はとことん寛ぐとしよう。

 

 日中は、引き続き楽しい時が続いた。日中は

 

 

 その日の夜。

 私は国外のとある街道、馬車の前に立ち塞がっていた。

 

「おい邪魔だ、どけ!この馬車は伯爵様に届ける荷物が積んであるんだ。どかないのなら轢き殺す!」

「ふふふ……馬鹿ねぇ。馬車如きで私を殺せると思っているなんて。とんだお花畑」

「このっ……ならば望み通り殺してやる!」

 

 その男は鞭を振るおうと腕を上げるが、残念、もう頭は付いていない。

 血が吹き上がって辺りを汚す前に消してしまったから、頭どころでは無いな。何も残っていない。

 

「さてと」

 

 私がわざわざこの馬車を襲った理由。

 それは積荷にある。

 荷台へ回り、掛けられた帳を剥がせば出てくる出てくる。四辺1メートル程の木箱が。

 

 上の方に積まれているのはダミー。小麦や服など、どうでもいいもので大量に埋め尽くされている。

 問題は下の方。ダミーの内側に隠された5つの木箱。

 見てくれは何ら変わらないが、いざ開けてみればあら不思議。そこに詰められているのは人間の娘だ。

 

「怪我は打ち身程度。眠らされているだけね」

 

 私は5人の娘の時間を巻き戻す。薬が盛られたのかは知らないが、それぞれ起きていた頃の時間まで。

 

「あれ?……あ、そうだ。騎士様に何かなにか飲まされて。ん?どこ、ここ?」

 

 薬で正解だったか。

 だが私にはもう関係ない。近くに村もあるし馬車が残っている。そこまでの魔物も全て排除したのだから自力で辿り着けるだろう。

 

 私は宿へと転移(テレポート)で帰った。

 

 

「トワちゃん、おはよう!」

「ええ、おはよう」

 

 朝日が昇ってすぐ、いつもより元気にアランが起床だ。

 バザール初日といえど、グレイス王国の方は何も変わりは無い。いつも通り平和に見える1日。

 心穏やかで無いのは領主くらいだろう。

 何せ、違法奴隷を詰んだ馬車が帰ってこないのだから。

 

「トワちゃん、今日はせめて4割は売りたい。だから仕事を頼みたいんだけど、いいかな?」

「4割なんて少なすぎね。安心しなさい、今日で全部売れるわ」

「え、いや……流石にそれは」

 

 いいや、売れるのだ。私にどちらの仕事を任せるかで変わるが。

 

「服のモデルと店番。どっちをやって欲しい?」

「そ、れはその……モデルがいいけど」

「そう。ならそれをやりましょう。目標は完売で」

 

 アランが正解を選んだかはすぐに分かる。

 

 

「はぁー……サイコー。エッろぉい。かんわぃいー。あぁー……もうこれヤッバい。今日仕事入って良かったー……」

 

 ふむ。やっぱり今回もでてきたか、この変態(女性ギルド職員)は。着替えの時にベタベタと触らなくてもいい所まで触りまくりやがって。

 

 私は現在、店の前でマネキンの真似事をしている。

 胸元が大きく空いた服や背中に一切の布が無い服まで、色々と着せ替え人形にされながら店頭でクルクル回り、ポーズをとったりしているのだ。

 

 時経たずして男性も女性も集まり、男性は私をジロジロと嬉しくは無い視線を向けてきて、女性はというと、そんな男性の反応を見て、服を引っ掴んでは中へと消えてゆく。

 

 そう、アランが選んだのは大当たり。

 私がマネキンになるとこの通り、

 

「か、完……売。こんなの、初めてだ」

「どう?言った通りだったでしょう?」

「と、トワちゃん。いいえトワ様!あなたは商売の神様だったのですね!誠にありがとうございます!」

「え、ええ!?」

 

 ちょっと、これには予想外。

 そもそも商売の神なんかでは無いし、神になる前だって私がマネキンになれば完売していたのだ。神のご利益みたいに言われるのは癪だ。

 

「全く……アラン、私は一応空間の神よ。そんなつもりは無いけれど、スペカがいる以上そういう事なの。それにほら、人を増やすんでしょう?適当に店を回ったら奴隷市に行きましょう」

「はい!了解しましたトワ様!」

「だから……それ辞めてって」

 

 バザールはまだ初日。

 250着じゃ全然足りなかったと、少々欲深になり始めるアランであった。

 

 

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