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第19話

 

 翌日、未だ帰ってこないネジャロをただ待つのもなんだということで、私たち3人は第1ギルドに来ていた。

 初心者向けの第1ダンジョンに対応するギルドなだけあって、雰囲気も緩い。

 

「どうベルテ?使えそうな武器はあった?」

「そう、ですね……やはりナイフくらいしか」

 

 18年間、色々な特技を身につけ自分磨きを欠かさなかったベルテにも苦手なことはある。

 その最たるものが戦闘。

 筋力の無さに関しては、私に及ぶかもしれない。

 

「ナイフか。いいんじゃないかい?リーチがないから動き方は考えないとだろうけど、その点はほら、トワちゃんがフォローするんでしょ?」

「ええ。怪我の心配とかはしなくていいわ」

 

 今回、私は引率のような役割。

 ネジャロの時のように、ただ放置して戦っておいでとはいかない事ぐらい想定済みだ。

 

「うん。じゃあそれ買ってこよう」

 

 ベルテが気に入ったであろう、蒼い刃が綺麗な小ぶりのナイフ。

 アランがそれを受け取り、会計のためにカウンターへ向かう。

 そんな時だ。

 

「ねえ聞いた?月光の導きのひとりが大怪我負ったけど、なんか浴場から帰ってきたら全部治ってたんだって!」

「知ってる知ってる!女湯らしいよ、それ!」

「私たちも怪我したら行こうね!」

「そうだけど、怪我なんてするような無茶はしちゃダメだよ!」

 

 なんだかよく知っている話だ。

 その場所にいた、というかモロ当事者の私とベルテは顔を見合わせる。

 

「早速噂になってますね」

「でも、私の事は知られてないみたい。あの()、ちゃんと分かってくれたみたいね」

 

 しかし、それに伴って良くない状況でもあるのは確か。

 今、噂について話していた少女2人のパーティは怪我を楽観視していないようだが、彼女らが全てというわけでも無いだろう。

 

「無謀に第3に挑んで、女湯に駆け込む者たちの姿が目に浮かぶわね」

「ど、どうするんですか?全員助ける、とか?」

「え?まさか。もう私は関係ないわ。命を懸けてこその冒険者なのだから、たかが噂を信じ込んで羽目を外すバカの相手なんかしてられないわよ」

 

 私があの女湯で彼女を助けたのは、一応顔を知っていたというのと、ベルテがどうしてもという雰囲気だったからだ。

 他の誰かの面倒まで見てやるつもりなど毛頭ない。

 

 無責任にも、噂の出処には取り付く島もないことが分かったところで、会計を済ませたアランが戻ってきた。

 手にはベルテのナイフと、自分用にだろう、剣の鞘を固定するためのベルトがある。

 

「おまたせ。はいこれ」

「ありがとうございます。あれ?ご主人様、剣は?」

「ああそれなら、グレイス王国から持ってきたものを使うよ。使い慣れてはいないけど、わざわざ新しいのを買うのも勿体ないからね」

「そうね。どっちみちネジャロみたいにバンバン戦う事もないでしょうし、それでいいと思うわ」

 

 今回のは言わば記念。

 折角アウロ・プラーラまで来たのだから、1度くらいはダンジョンに行っておこう的なノリだ。

 

 アランに剣を渡し、第1ダンジョン近くまでテレポートで移動する。

 3人は物陰から現れるが、それに気づいた者はいない。

 浮かれている初心者たちに紛れ、私たちも門を潜る。

 

「うー、緊張しますね。私、本当に戦えないので、絶対助けてくださいね」

「そんなに怖がる必要無いわ。殺すのだけ躊躇しなければ大丈夫よ」

「わ、わかりました。頑張ります!」

 

 力不足な女性と丁度良い戦力の男性、そしてOP(オーバーパワー)がすぎる女児。

 歪なパーティでのダンジョン攻略が始まろうとしていた。

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