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第14話

 

「鑑定の時のご老人、話って?」

「そ、その節は多大な無礼を働いてしまいまして、大変申し訳ございませんでした」

 

 一応覚えてはいるようだ。

 小娘だなんだと散々バカにしてくれちゃって。

 

 でも、もうそんなことは気にしていない。

 素っ裸に剥いてやったことで憂いは腫れている。

 

「ほら、さっさと用件を。色々と忙しい身なのだから」

 

 まあ嘘だがな。ゆっくり話を聞く位の余裕はあるが、上で暇そうに溶けてきているネジャロがそろそろ心配だ。

 

「でしたら簡潔に。あの氷龍を売ってはくださいませんか?

 研究に展示、一部は武器や防具としても使えるでしょうから。我々としては喉から手が出るほど、というわけなのです」

「なるほど。倒した龍が証拠として存在すれば箔が付く。本当はこっちが目的でしょう?」

 

 ズバリ言い当てられた。老人はそんな感じでため息を着く。

 

「隠し事は出来ませんな。その通り力を見せつければ他国も介入し難くなると踏んでの事です」

「他国の?スパイの被害が大きいとか?」

「いえいえ。そこまでの大事ではありますまい。ほれ、その点についてはノゾミの方が詳しいじゃろ」

「ええ、そうですね。他国の介入というのは、ヴァルメリア帝国のことです。近々戦争をするとかで、冒険者を引き抜いこうとするものが目立ってきております」

 

 ああ。そういえばそんなイベントもあったっけ。

 反転した世界から魔物が攻めてくるとかいうのが。

 丁度いい。この際だから魂の再利用共々裏側とは繋がりを切ってしまおう。

 これで誰かが死んでもリスク無しで蘇させられる。

 

「よし。もうそこの戦争は起きないから、適当に理由つけて入国から断ってしまいなさい。もしそれでもゴネてくるようであれば、(白月級冒険者)の名前を使っていいわよ」

「そ、それはどういう……」

「ん?あー……神様パワーでちょっと弄った。そう考えてくれればいいわ」

 

 説明するの面倒くさい。というのが本音である。

 

「氷龍を売る件、ヴァルメリア帝国の介入の件。どちらも完了ね。それで他には?」

「それは、氷龍は売ってくださると受け取ってよろしいのですか?」

「ええ。煮るなり焼くなり好きにして」

 

 老人は感極まり、窓を開けて奇声を上げだした。

 裸で人前に出る事といい今のといい、本当に羞恥心はどこかに捨ててきたようだ。

 

「では最後に私から。ぜひトワさんには昇格祝いの宴に参加して欲しいのですが。何せ白月級などこの国誕生以来初の快挙ですから。大々的に宣伝もしたいのです」

「分かったわ。でも少し待って。どうせすぐに赤金級まで上がる人がいるから、まとめてやってしまいましょう」

「そうなのですか?いえ、きっとそうなのでしょうね。了解しました。でしたら、都合の良い時になりましたらお声がけください」

 

 これでとりあえずの話は終わりとなった。

 相変わらず深々頭を下げるノゾミたちに少々嫌気が差しながらも、手を振って部屋を出る。

 そして向かうは上階、物販エリア。解放された私はアランたちと合流するため階段を上った。

 

「おまたせ。長引いて悪かったわね」

「あ、おかえり。僕とベルテはお土産を見たりして楽しんでたから大丈夫なんだけど、ネジャロがね……」

 

 チラと廊下のベンチに視線を移せば、ぐでーんといった感じでスライム状となってしまったネジャロが目に入る。

 

「ネジャロー!トワちゃん帰ってきたから、ダンジョンに行っておいでー!」

 

 アランが耳元で声をかけると、溶けていた体が一瞬で元に戻り、いつもの筋肉が浮かび上がる。

 

「お嬢!待ちくたびれたぜ!せっかく思う存分戦える場所に来たんだ。話なんてあとだろ普通?ほら行くぞ!」

 

 彼は太い腕で私を体ごと掴み、超特急でダンジョンへと駆ける。

 顔と体格さえ目を瞑ればまるで園児のような……というのは少し無理があるか。

 ほら、道行く人が悲鳴をあげて逃げてゆく。

 

「ネジャロ、楽しみなのは分かったからその獰猛な顔はやめなさい。通報されるわよ」

「無理だ!」

 

 そうか無理か。

 済まないね市民たち。

 

 結局、何度か衛兵に止まられたりしながらも、ネジャロはダンジョンに向けて爆走してゆく。

 それを腕の中から高みの見物する私。

 ちょっと良い気分になっていたのは内緒だ。

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