私が操作するので、ハンドルとペダルをはなしてください
今日は11月13日の安息日である。このチキュウニホンには安息日という概念はなく、免許合宿には休みがない。
クランクとS字カーブとやらを通るようだ。
星野「では7番左折して、その先1番を左折してクランク入ってください」
「あの曲がった道を通ればよいのだな」
掟の通り、左に曲がるときは左に寄り、右に曲がるときには右に寄った。
クランクと呼ばれる狭路は右から入るため、右に寄った状態でハンドルを切った
星野「あー…」
「ん、なんだ?」
ガッタン!
星野「後輪が縁石に乗り上げましたね」
「何か不味いのか?」
ブロロロロー!!
星野「ちょっと、ちょっと! アクセル踏まないで止まってください!!」
「なぜだ? そのまま後輪を進めれば道路に復帰できるであろう」
星野「ダメです。縁石に乗り上げたらバックにして戻してください。縁石とタイヤが傷みます」 補助ブレグイッ
「我の力で浮かせれば良かろう。それとも物理干渉で溝を更地にしてやろうか?」
星野「??? とにかく、そのままギアをリバースにして戻ってください」
「仕方ない。言うとおりに戻ろう」
クルクルクル…
星野「ああー!! ハンドル逆に切っちゃダメですって!」
「いかんのか?」
星野「後輪だけ縁石に乗り上げたら、ハンドルはそのままでバックしてください。さらに戻れなくなります!」
「まったく、この車とやらは不便すぎる…」
星野「私が操作するので、ハンドルとペダルをはなしてください! ね!!」
「…う、うむ」
身をこちらに乗り出して、ハンドルを動かし前の位置に戻った。少し強い花の香りがした。
星野「はい、ではここからやってみてください」
何度か挑戦してみるが、後輪が縁石を擦ってしまう。
「寄せながら曲がると、後輪が当たってしまうのだが」
星野「内輪差を意識すると曲がりやすくなりますよ。目安は90センチです」
星野「角から90センチ離れていれば、前輪が過ぎた後にハンドルを全力できっても後輪はあたりません」
星野「内輪差で当たらないように動ければ、反対方向のポールに当たらないように調整すればよいのです」
「内輪差か。」
失敗を繰り返し、クランクとS字カーブを安定して抜けられるようになった。
星野「はいお疲れさまでした、教習手帳です。クランクは無線で何度も通るのでイメージトレーニングしておいてくださいね」
「良い指導であったぞ、星野教官」
天使の頃は飛行と貫通を使えば苦労せずに移動ができたのだが、人間の構造では長距離移動には向いていない。
車という機械を動かすことで、人やモノを運ぶ術を手に入れたのだ。我は、織江という人間の器を通じて、このような運転技術を体験することになったが、意外と悪くなかった。
失敗も何度か繰り返せば、改善されて突破できるようになる。この成功体験は我には新鮮であった。
「ん、次の無線とやらはなんだ?」
合宿免許卒業まで、あと12日
この小説はフィクションです。
乗り上げて焦って踏み込んだりしたバカはいません。
教官に助けてもらって泣く泣く通ったことはありません。
香水は良い香りでした。