落ちてましたか…
「私は、その日、魔物が出没するようになったある場所を視察に来ていました。 数名の家臣と、ときおり現れる魔物を退治しながら辺りを探索していました。」
ま、魔物??
魔物がいるの?!
その魔物を王子サマが退治するの!?
な、なんかすごい話なんだけどー
私は、内心、びっくりしながらも王子様の話に耳を傾けた。
「探索していると雷鳴が響き始めました。しかし、音だけで、稲光が起こらず、空も晴れてる状態の不思議な天気でした。私達は怪訝に思いながらも探索を続けました。」
王子は、そういって、私を見返す。
「すると、突然、金色の稲光が空に走りました。 不思議に思い、私達は、稲光が落ちたと思われる辺りに向かいました。」
「……」
「そこには、何もなく、雷が落ちた形跡もありませんでした。」
「………」
「しばらくその場所を捜索していると、上空から何かが落ちてくる音がし、『ジテンシャ』なるものが降ってきました。」
「………!」
「そして、その後、貴方が空から降って、いえ、落ちてきました。」
「…………やっぱり、私、落ちてたんですね。」
「落ちてこられましたね。 突然、見たこともない物体と、まさか、人が落ちてくるとは……」
びっくりしました、と驚きを隠さず、王子は話してくれた。
「アッ! 落ちてという事は、下にいてた人達は大丈夫だったんですか? 私に追撃されたりしなかったんでしょうか?!」
私自身、体が大丈夫だったんだけど、私の所為で、負傷者、はたまた、死者なんか出てたら目覚めが悪いよ――(冷汗)
私は、焦って王子に聞いてみる。
「大丈夫です。魔法で、落ちてくる『ジテンシャ』と貴方のスピードを減速したので、負傷した者もおりません。それは、安心して下さい。」
「ま、魔法ですか!?」
「はい、魔法です。」
不審に思いながら王子はそう答えた。
「魔法がめずらしいのですか?」
「はい、私は使えません。」
そういって、私はうつむく。
魔物や魔法のワードを聞くと、やっぱり、違う世界に来ちゃったんだな…
私、どうなっちゃうんだろう……
そう思うと気持ちがだんだん落ち込んでいってしまう。
「貴方がこの世界にいる間は、私がお守りします。」
「……」
「衣食住の生活に関しても援助をしますので、その辺の心配はしなくても大丈夫です。」
「……」
「ただ……」
「…………?」
「一方的な願いになりますが、この世界を救うのに力を貸していただきたい。」
そういって、王子は、頭を下げた。
「……私にそんな力は、あるのでしょうか? 私でお役に立てるのでしょうか?」
私は、王子に尋ねる。
そんな事、私にできるの?!
「貴方の指にはめられている指輪は『聖雷の指輪』といわれ、世界が危機に陥った時、現れ世界を善き方向に導くと言われています。」
右手にはまった指輪を見つめる。
指輪を改めて見てみると、色の違う石が5つはめられている。
よく見ると、なんか、ゴージャスな指輪よね…
真ん中は、水晶かな?
サイドにはまっているのは、エメラルド•サファイア•ルビー•ダイヤモンド……??
た、高そう!
「指輪のことも含めて、この世界で起きている現状を明日にでもまた、改めてお話しさせていただきます。今日は夜分も遅いですから、ゆっくりお休み下さい。」
「わ、わかりました。」
「では、私はこれで失礼させていただきます。身の回りの事でわからないことがあれば、今から挨拶に伺わせていただく侍従に申しつけ下さい。」
じ、侍従?!
聞き慣れないワードだわ。
内心、ドギマギしてる私。
「おやすみなさい。」
「おやすみなさいです。」
王子はそう挨拶すると、部屋を出ていった。
いったい、私は、どうなるんだろう……