神殿
どこをどう行ったのかは、もう、わかりません!
かなり歩いているよ~
お城って、ひろっ!!
道、うん、覚えられる自信ないです、ハイ!
テクテクと王子に連れられて、歩いていると、突然、パァーっと視界が開ける。
建物の中を歩いていたのに、視界に映ったのは、青々とした緑と水辺だった。
お庭かな?
そして、水辺にかけられている橋を渡り歩いていくと、白い綺麗な建物が神々しく佇んでいた。
「ミサト様、こちらが神殿です。」
王子が立ち止まり、私に言った。
「お待ちしておりました、殿下。」
声のした方を見てみると、白いドレスに身をつつんだ、一人の女性が立っていた。
「セルレ殿、こちらが、ミサト様です。」
「初めまして、ミサト モチヅキです。」
「お初にお目にかかり、光栄でございます。 私は、神殿長をしております、セルレと申します。 以後、お見知りおき下さいませ。」
なんとも、ふわっとした感じのかわいらしい女性は、私に頭を垂れた。
「早速だが、ミサト様を神殿に案内したい。」
「わかりました。 ミサト様、どうぞ、こちらへ。」
私は、セルレ様(?)の後をついて神殿の中に入っていった。
うわー、キレイ〜
教会みたいなのかなって、思ってたけど、少し違う…
私は、辺りを見渡す。
私が入った場所から一本の道が続いていて、神殿の中央に行ける様になっている。
建物の中なのに、水が張り巡らされているんだ…
なんか、不思議な空間……
中央に行ける道を歩いて行くと台座みたいなのが2つある。
手前の台座には、大きな『水晶』の珠が鎮座していて、眩い光りを放っている。
だけど…
奥の台座には、なにも置かれていなかった。
「こちらは、エメラルド国の心臓部といってもいい神聖な場所で、『宝珠の玉座』 と呼ばれています。 奥の台座には、エメラルド国の『宝珠』が鎮座していたのですが、ご覧の通り、今は、姿を消した状態です。」
王子は、そう、私に話してくれた。
「ひと月前、晴れていた空が、突然、曇り出したかと思うと、黒い稲光が空に走ったのです。 私は不安に駆られ、玉座にむかいました。 すると、 エメラルドの『宝珠』の周りに黒い影が覆い被さっていたのです! 私は、慌てて、『聖女の魔法』を放ったのですが… 力及ばず、エメラルドの輝きが黒い光に飲み込まれそうになる寸前、エメラルドの『宝珠』が突然、眩い光を放ち、そして、忽然と私の前から姿を消したのです。」
セルレ様は、くやしそうに、私に話した。
「セルレ様は、その時、大丈夫だったのですか? ケガとかされなかったのですか?!」
セルレ様が驚いたように私を見る。
「ミサト様は、お優しい方なんですね…」
そう言ったセルレ様の顔が少し悲しそうに見えた。
私は、玉座の側に行き、『水晶』の『宝珠』に近寄ってみる。
キレイだけど…
神々しく感じて、直視できない。
だけど……
呼ばれている不思議な感じがする……
私は、触れようと、右手を伸ばす。
――すると、突然、指輪が、指輪にはめられている『水晶』が光りだした!
えぇ〜!
どうしたの〜〜!!
なにが、起きたの?!
私が狼狽えていると、徐々にその光が小さくなり、スーッと消えていく。
光が消えた指輪を改めて見てみると…
『水晶』が、以前よりも神々しく輝いていた。