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1.プロローグ


 その日は、特に天気が良いわけでも、何かの記念日でも何でもなかった。


「ガーネット、僕と結婚して欲しい。今は無理でも、来世で…来世で必ず、君を幸せにして見せるから、どうか、君の来世を僕にくれないか」


 それなのに、彼の一言で全てが特別になった。

 彼の日に焼けた肌にじんわりと緊張の汗が滲んでいるのが見えた。私に花を差し出す手が不安げに震えてるのが見えた。


 その全てが愛おしかった。


「…勿論、喜んで」


 魔王である私は、いくら有能だとしても平民出身の家臣である彼を伴侶とすることは許されない。そもそも、魔王に伴侶は認められておらず、私達は先王とその神器が宝玉に魔力を込め、そこから自分と自分の神器と共に生まれるため繁殖行動の必要はない。ましてや、色恋で判断力が鈍るなどもっての外だという初代魔王の考えが根底にあるのだ。



「だったら、来世で結ばれるようにって誓約の儀をしたらどう?」


 私の神器(きょうだい)であるサファイアが、その名の通り青く煌めく短い髪を揺らし、何かの古い書物を見せながら提案してくれた。


「2人が自分の一部を捧げて、来世も必ず出会えるように、結ばれるようにって、妖精王とかに立ち会ってもらってやるんだって。ほら、この文献にあったよ」


 効果は立証されており、実際そうやって結ばれた自国の民がいるそうだ。それなら、と私達は早速王たちに声をかけた。共に我が国を統治してくれてる王達なので、皆、快く引き受けてくれた。

 そうして、今世では結ばれることがない私達は、そうやって来世こそは結ばれようと誓い合い、王達を含めた数人のみの立ち合いで形だけの婚約式もした。


 自分たちの一部…身体的なものではなく、自分たちの持つ『能力(ちから)』を捧げた。

 異種族(にんげん)である彼と結ばれるための代償として、私に残っている寿命の8割も差し出した。




 だから、どうか…来世こそ、来世こそ、結ばれますように…。


 最期までそう願い、静かに眠りについた。



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