2 もやもやディズィーズって
「瀬川サン、大変な病気されたそうですね。なんて病気ですか?」
「もやもや病です」
「……あ……そうですか……あの、お大事にしてくださいね!」
おい君、今の微妙な表情はなんだ。
……わかるよ。君の顔には「あれ?なんか大変な病気だって聞いてたけど、もやもやする病?うつ病の一種みたいな?……ちょっとおもしろ系?」……そう書いてある。なんせ、おっさんも自身でそう思ったくらいだから仕方ない。身内の某なんて、病名聞いていきなり「おいしい病名だな」と言いやがったからな。
街ブラバラエティみたいなコレ……残念ながら正式名称だ。
おっさんが一発目にかかった大病である。
この病気、別名を「ウィリス冠動脈閉塞症」と言う……カッコイイ。どうせなら、診断書こっちにしようぜ(※不謹慎ですが患者本人なので)。ところが、正式名称は「もやもや病」……英語でも「MoyamoyaーDisease」まんまか!
……(・ω・)
簡単に説明する。
通常脳みそには4本の大きな動脈が通っている。
この血管中心に大量の血液を脳に送り、脳の養分と酸素をまかなう。
で、この大事な血管が な い ヽ(・ω・)ノ のが「もやもや病」だ。欧米人にはほぼ見られないこともあり、研究は日本で最も進んでいるれっきとした法指定の難病である。当然、脳みそは血液不足になる。で、それを察知した人体は、代わりに脳内に膨大な毛細血管網を作る。
つまり、正常な血管がない脳を、どうにか動くように自分で魔改造した結果が「もやもや病」。画像を撮ると、ぶっとい血管が見当たらないかわりに、雲のような「もやもや」=大量の毛細血管が写る。それで、日本人が「もやもやが写る病気」と呼んでいるうちに国際的にふざけた病名で定着したらしい……(・ω・)
(日本だけは「ウィリス冠動脈閉塞症」を正式名に推していたそうだが、世界共通語に「Moyamoya」がなってしまってたと……やっちまった自覚はあったんだな、たぶん)
魔改造した脳ですがちゃんと動いてますた……ならめでたいのだが、そうもいかない。
本来ぶっとい血管前提の脳を、毛細血管で動かしている。すみっこが詰まるリスク(つまり脳梗塞)は高い。おまけに、血圧は細い血管全体にかかるので、歳をとって血管がもろくなると破れて出血するリスク(つまり脳出血)も跳ね上がる。
対策、というか補強手術はあるのだが、その評価もやっと近年固まってきた、というくらい研究途上の病気だ。根本的な治療法もない。患者数的には、日本全体で1万人そこそこしかいない、らしい。
なんで「らしい」なのかというと、もやもや病かどうかは脳を検査しないとわからないから。さらに、この病気は高齢になってから発症した場合、その一発目が重い脳出血や脳梗塞になることが多い……つまり、発症=死、というケースも普通に起こるので、正確な患者数は把握のしようがない……とのこと。
ちなみにおっさんの場合、動脈4本とも、ほぼキレイサッパリ、ないヽ(・ω・)ノぽーん
医者「見事に、もやもやです」
毛細血管、よく頑張った、的なw
お医者さんの見立てでは、元々そういう特殊な脳みそで、過労やストレスで負荷がかかり、問題が表に早めに出てきたのだろう、ということでした。




