31. ここは私が
「1つだけ? ボクがこの力を手に入れた時に使えるようになった呪文は全部で3つだけど?」
結界の中でシャルカが放った衝撃的な言葉に、俺は絶句した。
は、発現魔法が3個だと……!?
馬鹿な……!
そんなことはありえない……!
「セレナ、どういうことだ!?」
すぐ近くを箒で飛んでいたセレナに、俺は問うた。
俺に魔法少女の〝いろは〟を教えた張本人だからだ。
「お前、魔法少女になった時に得られる発現魔法は1個だけって言ってたじゃねーか!」
「確かにそのハズなんです!」
セレナも混乱した様子で言った。
「でも、実際にシャルカさんが精霊と接点が無い状態で2つ目の呪文を使えるとなると……。もしかしたら、マナ・クリスタルが自ら選ぶような潜在魔力の高い女の子ですから、その分、発現魔法の数も、通常より多いのかもしれません……」
「そんなのアリかよ……!」
だが、シャルカが嘘を言っているとも思えない以上、他に納得のいく説明はない!
発現魔法の数すらも、俺たちを遥かに凌ぐ魔法少女か……!
こいつはますます俺たちの国に向かえたくなってきたぜ……!
「まずはあの結界の破壊だ! なんとしてもあの結界をぶち破り、シャルカに接触して仲間に引き入れる!」
俺はシャルカが現在発動している円柱状の超高位防御魔法を指差した。
「ここは私が……」
空中にいても他の魔法が使える呪文〝フローティア〟を唯一唱えている澪がステッキを結界の方に向けた。
「〝ジャベル・アイシア!〟」
巨大な氷の槍が、澪のステッキから放たれ、結界に直撃する。
だが――。
パリーン!
「っ!? 私の氷の槍が砕け散った!」
澪の強力な氷の魔法も、まるで氷柱をコンクリートの壁に投げつけたみたいに無残に破砕してしまった。
「ダメだ! 澪!」
俺は叫んだ。
「もしもあの結界が魔女の試練の時と同じ魔法ならば、打ち破るには普通の攻撃じゃ無理だ!」
確か、あの壁を壊すには、中級攻撃魔法が1000発は必要だって、エスメラルダは言っていた。
今、澪が使った氷の槍も、マギア・テネブラムと同じ中級魔法……。
シャルカの結界を破るには力が不足している!
ならば、ここはあの魔法しか……。
俺が結界を破る魔法を出すべく地面に降り立とうとすると――。
「ルナさん、待ってください!」
すぐ傍にいたセレナが、箒で俺の前に回り込んだ。
「ルナさんは私たちの戦略の要! ここで無理をして倒れられたら困ります! ですから……、ここは私がやります!」
そうか。
そういえば、こいつも持っているんだったな。
この結界を破壊できるだけの強力な魔法を……。
「よし、セレナ。ここはお前に任せるぞ」
「はい!」
元気よく返事をしたセレナは俺の代わりに地面に降り立った。
そしてビアブルムを解除して、箒をステッキに戻すと、
「ハァアアアアアアアアアアアアアア…………!」
息を大きく吐き出して、全身の魔力を集中させる。
その集中が極限にまで達した時――。
セレナの足下に、巨大な魔法陣が出現した。
さぁ、行け! セレナ!
お前の力を見せてやれ!
「〝セレナード・ラ・ライティア!〟」
「ラァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
呪文と共に、魔法陣から白き竜神がその姿を現す。
その雄たけびに大地は震え、森の木々に止まっていた鳥たちは、恐れをなして大空へ羽ばたいた。
これがセレナの切り札。
究極召喚魔法、セレナード・ラ・ライティアだ。
「さぁ、光の神竜セレナード! あの結界を打ち破ってください!」
「ラァアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
術者であるセレナの命令に従い、白竜は結界の中にいるシャルカに狙いを定めた。
「………………!」
シャルカは思わぬ強敵の出現に目を見開いた。
おそらく、その生まれ持っての魔力の高さゆえに、自分の結界とセレナの白竜の〝力の差〟を感じ取ることができたのだろう。
このままではやられると判断した様子のシャルカは、ステッキを構えて最後の呪文を唱えた。
「〝シャール―カ・ミーラ・シュピルゲム!〟」
日付だけ見れば数日ですが、実際は1年も間が空いてしまい、申し訳ありません。
コミコノベルが終わるまでは忙しかったもので……。
これからも引き続き「外道魔法少女ルナ」をよろしくお願い致します。




