28. ルナの策
非常に長い間お待たせして申し訳ありませんでした。
comicoでの鵺明けの掲載とその他諸々が重なってしまい、三カ月も間が空いてしまい、謝罪の言葉もありません。
ぞろぞろ小屋から出てくる少女たち。
その数はざっと100人くらいになるだろうか。
一体あの小さな小屋のどこにあんな数の少女が収まっていたのだろう。
いや、そんなことより、シャルカという少女の魔法はこれだけの数の動物をいっぺんに変身させることができるほど強力なのだろうか。
……なんて呑気に考えている場合じゃなかった。
『Jaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!』
シャルカの姿をした少女の集団が一斉にこちらに向かって襲いかかって来た。
「ルナさん、どうします!?」
セレナが目をまん丸にして訊いてきた。
「とにかく攻撃だ! ただし、殺しはするなよ? 気絶させるくらいだ。この魔法少女は俺たちの仲間に迎え入れる。屈服させて、軍門に下らせるんだ!」
「わかりました! 〝アンデュ・ライティア!〟」
セレナは光の波動をステッキから放った。
その力により、セレナの方に向かっていた数人の少女たちがなぎ倒されていく。
だが、倒れた少女たちはすぐに立ち上がった。
「セレナちん、手加減しすぎだよ!」
ミノリが言った。
「いえ、そんなに力は弱めていません! 小さな動物くらいなら、今ので気絶しているはずです!」
「忘れたのか、セレナ! さっきのギガントピテクスやプテラノドンを思い出してみろ!」
俺は叫んだ。
「奴の〝変化の魔法〟は、姿形だけじゃなく、能力までもそっくりに変化させることができるんだ! つまり、このシャルカのコピーたちは、一体一体が魔法少女一人分の防御力を持っているってことだ!」
「っ!? そんな!」
「正体が動物だと思って余計な手加減はするな! 気絶させるには、対魔法少女にやるのと同じくらいの強さでやらなきゃダメだ! こんな風にな! 〝マギア・テネブラム!〟」
俺はステッキから闇の魔導波を放った。
俺に襲いかかって来ていたシャルカのコピーたちは弾け飛び、簡単には立ち上がれないほどのダメージを受けた。
だが……。
「ちっ! 倒したのは3、4体か……。こりゃ、全部の個体相手に強い魔法を使うのは無理だぜ……」
俺たちの中で攻撃魔法を使えるのは、俺とセレナと澪の3人だけ。
敵の数はおそらく100を超えているから、1人当たり、だいたい30~40体ほど倒さなければならない計算だ。
このペースでいくと、今撃ったのと同じくらいのマギア・テネブラムがあと9発は必要だが、この威力のものをそんなに連射できるだけの魔力はない。
逆に、中級攻撃魔法よりも強い魔法を使ってしまえば、力の加減を誤ってシャルカを殺してしまいかねない。
それはセレナや澪も同じだろう。
となると、来果とミノリの補助魔法を上手く使ってなんとか……。
俺は期待を込めて2人の方を振り向いた。
のだが……。
「うわぁああああああ! 来ないでください~!」
「ひぃいいいいいいい! 追いかけてくるよぉ~!」
そこにはシャルカのコピーたちに追いかけられて滑稽に逃げ惑う来果とミノリの姿があった。
「お、お前ら! 逃げてばかりいないで戦え! 攻撃魔法が撃てなくても、時間を遅くしたり、魔法を解除したりして対処できるだろう!」
「そ、そんなこと言われましても! 敵の数が多すぎて!」
「逃げるので精いっぱいで、振り向いてステッキなんか構えられないよ!」
「ちっ! なら俺が助太刀を……」
「っ! ルナさん、危ない!」
セレナの言葉に振り返ると、シャルカのコピーが数体、目の前まで迫って来ていた。
「うおっ! あぶねえ! 〝マギア・テネブラム!〟」
とっさに攻撃魔法で吹っ飛ばしたが、これじゃあオチオチ来果とミノリのサポートに回ることも出来ない。
「セレナ! 澪! そっちはどうだ!」
「そんなこと言われても……〝アンデュ・ライティア!〟……こう数が多くては……」
「〝ギアル・フリジア!〟……とてもサポートに回る余裕なんてない……」
2人共、会話をしながら呪文を唱え、目の前に迫る敵を追い払うので精いっぱいのようだ。
ちっ! それなら……!
「全員、よく聞け!」
俺は戦いの喧騒の中、声を張り上げた。
「一旦、飛行魔法で空に逃げて体勢を立て直すんだ! 精霊と契約していない魔法少女なら、まだ飛行魔法は使えないはずだからな!」
俺の指示に全員が頷いた。
「〝ビアブルム!〟」
「〝ビアブルム!〟」
「〝ビアブルム!〟」
「〝ビアブルム!〟」
「〝フローティア!〟」
俺、セレナ、来果、ミノリはステッキを箒に変え、澪は空中浮遊の魔法で空へと退避した。
思い通り、地上にいるシャルカのコピー達は、空を飛ぶ術を持っていないため、俺たちの方を恨めしそうに見上げている。
「ルナ、これからどうするの? 逃げられたのはいいけど、このままじゃ、睨めっこがつづくだけ……」
澪が言った。
確かに、このままでは何の解決にもならない。
フローティアの澪はともかく、ビアブルムの俺たちはステッキを箒に変えている為、この状態では魔法を使うこともできない。
この状況で、下にいる100体以上のコピー・シャルカを相手に、どうするべきか……。
「…………」
俺はしばらく目をつむって考え、やがて一つの方法を思いついた。
「みんな、これから俺が言うことをよく聞いてくれ」
そう前置きして、俺は今思いついたばかりの作戦を語った。
上手くいくかわからないが、この策に賭けてみる価値はある。




