27. シャルカの過去
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その少し前……。
シャルカ・シュヴァルツバルトは小屋の中で自らの魔法の効力が消えたのを感じ取っていた。
「プテラノドンもやられた……。侵入者が、ここに来る……!」
シャルカはステッキをギュッと握り直す。
「追い払わなきゃ……。人間なんて、誰も信用できない……」
シャルカの脳裏に、生まれてから今までのことが思い起こされる。
……………
……
…
☆☆☆☆☆
シャルカは生まれた時から不思議な力を持っていた。
その不思議な力に大人たちが気づいたのはシャルカが3才の時。
「シャルカ? 誰と話しているの?」
シャルカの母親だった女が庭で遊んでいたシャルカに尋ねた。
「ママ、この子ねー。昔、この家の下で死んじゃったんだって。家族の人も一緒で、地下から出られないで困ってるんだってー」
シャルカは無邪気にそう言った。
だが、シャルカの目の前には誰もいなかった。
母親はてっきり、この時期の子供によくある〝見えないお友達〟と話しているのだと思い込んでいた。
数か月後、地下室の改装のための工事で、シャルカの話していた四人の一家の白骨死体が出てくるまでは……。
その白骨はナチス・ドイツに迫害され、地下壕に逃れたまま餓死したユダヤ人の一家だった。
そうした戦時期の犠牲者の発見は戦後のドイツでは時々ある出来事だったが、母親がシャルカを不気味に思うには十分だった。
他にもシャルカの不気味な行動は続いた。
シャルカは動物と話をすることができるようだった。
嫌いな友達に犬をけしかけて、大怪我を負わせたことがあったが、その時の犬は、まるでシャルカに操られていたかのようだったという。
他にも、シャルカは時々だが、未来予知のようなこともできたりもした。
父親と買い物に出かけた時、シャルカは突然何かを感じ取ったように、スーパーから飛び出して何かから逃れるように広い駐車場へと向かった。
父親はそれを不思議に思っていたが、その直後、地震がスーパーを襲い、彼は商品棚の下敷きになって重傷を負った。
その前の日、父親はシャルカのイタズラを叱ったばかりだったので、彼は娘が仕返しの為、自分をおいて外へ逃げたのだと感じた。
それだけでなく、彼には地震さえも娘が自分を殺すために起こしたのではないかと疑うようになった。
シャルカの両親が彼女を施設にあずけることを決めたのは、そのすぐ後だった。
両親は不気味な力を持つ娘が、将来自分たちを見つけ出して復讐に来ないよう、施設側に自分たちのことは何も娘に知らせないように頼んだ。
そのため、名字さえも継承されず、シャルカの名字はこの地域の慣習に乗っ取り、街の名前と同じシュヴァルツバルトになった。
シャルカにとって、この名字は両親との絆が断ち切られたことを意味していた。
自分は両親に捨てられた。
そう思ったシャルカは施設でも鬱屈した日々を過ごしていた。
シャルカの不思議な力は、施設の人間や学校のクラスメイト達も震え上がらせた。
シャルカを叱ったり、イジメたりした人間には必ず何か悪いことが起こった。
それが偶然なのか、シャルカの不思議な力によるものなのかはわからなかったが、まわりの人間がシャルカを不気味に思い、避けるには十分だった。
施設でも、学校でも、シャルカは孤立した。
友達と言えるのは、動物だけ。
動物と話ができるシャルカにとっては、純真無垢で嘘を吐かない動物は人間よりも信頼できた。
学校も碌に行かず、施設にも碌に帰らず、シャルカは毎日のように森に出かけて動物たちと遊んでいた。
そんな、ある日のことだった。
空からあの〝光の石〟が降ってきたのは。
動物たちは突然、森に落ちてきた石に恐れおののき、後ずさりをした。
それとは対照的に、シャルカはその石がとても魅力的なものに思えた。
虹色に輝くその石は、まるで、この世のあらゆる財をもってしても買うことのできない宝石のようで……。
「綺麗……」
シャルカは惹きつけられるように、その石に手を伸ばした。
指先が、光輝く石に触れた。
その瞬間――。
シャルカの身体は光に包まれた。
☆☆☆☆☆
…
……
…………
「そう。あの石はボクに新たな力をくれた」
シャルカは回想を終え、眼を開いた。
「あの後、気が付いたら、服が変わってて、手にはこのステッキが握られてた。心に浮かんだ呪文を唱えると、動物や物を自分が思い描いた形に変えることができた……」
勿論、そんな力は生まれつきの超能力者であるシャルカも今まで得たことがなかった。
シャルカは新しい能力が増えたのが嬉しくなって、色々な物を変化させて遊んだ。
動物を違う動物――例えば、犬を猫や人に変えたりしている内は可愛いものだった。
しかし、その内、もっと大きなものを変化させてみたくなって……。
「調子に乗って、電波塔の横の建物を変化させてもう一つ電波塔を作ったのはやりすぎだったかな。おかげで少し騒がれちゃった。それにしても……」
と、シャルカは眉をひそめた。
「さっきからこっちに近づいてきている人間たち、一体何者なの……? ギガントピテクスもプテラノドンもやられたってことは、ただの人間じゃないことは明らかだけど……。何より、あの人間達からは、あの石と同じ力を感じる……」
シャルカはそう呟いて、ニヤリと笑みを漏らした。
「まあ、そんなのは実際に戦ってみればわかること。もしかしたら、これからここに来る奴ら、この不思議なステッキのことや、あの石のことも何か知っているのかもしれないし……」
シャルカは口笛を吹いて、周辺からリスたちを呼びよせた。
「さあ、出番だよ、キミたち。ボクに変身して、一緒に奴らを倒そう」
シャルカは侵入者に迎え撃つため、リスたちを自分自身に変身させる呪文を唱えたのだった。
「〝ルーカ・フェルエム!〟」
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