26. 黒い森の最深部
「ありがとう、みんな! 助かったよ!」
プテラノドンから救出されたミノリがお礼を言った。
ミノリを掴んでいたプテラノドンはセレナの出した光の壁にぶつかって落下。
今は俺たちに取り囲まれるようにして地面で目を回している。
「早速で悪いが、ミノリ。確かめたいことがあるんだ。コイツにお前の魔法をかけて見てくれないか?」
俺はプテラノドンにさらわれた時に地面に落ちたミノリのステッキを投げ渡した。
「コイツって……このプテラノドンに?」
「ああ。孤児院でシャルカに化けていた犬にかけた魔法があっただろ? あれをこのプテラノドンにかけてくれ」
そこまで言うと、ミノリにも俺の考えが読めたようだった。
「っ! なるほどね、ルナちん! そういうことか! じゃあ、さっきのギガントピテクスやこのプテラノドンは……!」
「それを確かめるんだ」
「わかったよ。みんな下がってって」
ミノリは俺たちを自分の背後に下がらせると、プテラノドンに向かってステッキを構え、呪文を唱えた。
「〝ジル・ケラマギア!〟」
ミノリのステッキから出た光線がプテラノドンにあたる。
プテラノドンの額には封呪の紋章が浮かび上がった。
巨大な翼竜の身体は緑色の光に包まれ、みるみる内に小さくなっていく。
その収縮が止まったのは、ちょうど俺たちの両手の上に乗るくらいの大きさになった時だった。
緑色の発光が収まると、そこには小さな鳥が目を回した状態で倒れていた。
「これって……スズメ? ですよね?」
セレナが半信半疑な様子で言った。
「ああ。日本のとは少し色が違うが、スズメに間違いないな……」
俺がそう呟くと、澪が間髪を入れずに質問してきた。
「じゃあ、あのプテラノドンはこのスズメを魔法で変身させたものだってことなの?」
「ああ。コイツだけじゃない。さっきのギガントピテクスも、きっとリスか何かを魔法で変身させたものだろう。そして、俺たちがこの街を突き止めるきっかけになったあの電波塔の事件も、これで説明がつく」
「え? どういうことですか、ルナ先輩?」
「思い出しても見ろよ、来果。あの電波塔の右隣りに、電波を調節するための小屋みたいな建物があっただろう? シャルカはそれに魔法をかけて、左にある電波塔に変化させたんだ」
「あ、なるほど!」
来果は得心がいったようにポンと手を叩いた。
「だとすると、ルナさん……シャルカって子の魔法は……」
セレナの言葉を受け、俺は自信をもって答えた。
「ああ。奴の魔法の属性は〝変化〟! 動物や物を自分の思いのままの形に変えることができる魔法と見て間違いないだろうな」
ふん……!
敵の魔法の性質が読めれば、こっちのものだ!
変化の魔法ということは、攻撃の方法はさっきみたいに動物を変化させて俺たちにけしかける……等に限られる。
加えて、精霊と契約していなければ、使える魔法は発現魔法1つのみ……!
いくら馬鹿でかい魔力を秘めていようが、魔法がそれだけなら、勝機は俺たちにある!
こっちには、闇・光・時間・氷・封呪といった多彩な魔法を使える魔法少女がそろっている。
まずはシャルカに仲間になるように説得し、応じないようなら戦いで屈服させる!
「さて……」
俺は腹を決めると、森の奥を指さして言った。
「プテラノドンはミノリをあっちの方向に連れて行こうとしていた。あっちに十三人目の魔法少女がいるのは間違いない。魔力も、あの方向から感じるしな……」
☆☆☆☆☆
それからしばらく歩いて、俺たちはこの森の最深部――開けた草原に出た。
「ルナちん、あれ見て!」
ミノリが奥の方にある小屋を指さした。
おとぎ話に出てくる木こりが住んでいるような小屋だ。
その小屋の扉がぎいっと開き、そこから一人の少女が出てくる。
孤児院で犬が化けていたのと同じ、金髪のドイツ人少女だ。
俺は宣戦布告と共に、いきなり最後通牒を突きつける!
「さぁ、これで袋のネズミだぜ、シャルカ! お前の魔法は見切った! お前の魔法では、俺たち五人を相手にするには力不足だぜ! 大人しく俺たちの軍門に下るがいい…………っ!? なにぃ!?」
俺はびっくりして声がひっくり返った。
なぜなら……。
小屋から出てきた少女は1人ではなかった。
次から次へと、同じ顔、同じ服装をした少女が幾人も、ぞろぞろと……。
「ど、どれが本物のシャルカさんなんです!?」
セレナが混乱したように叫んだ。
し、しまった!
この手があったか!
そこら中の動物を集めて、その全てを自分に変身させる……!
いくら俺たちが5人居ても、この数相手では……!
しかも、本気で攻撃して、それが本物だった場合、俺たちはせっかくドイツまで捜しに来た13人目の魔法少女を失うことになる!
殺してマナ・クリスタルを奪ってしまえばいいじゃないかという考えもないではないが、今後のことを考えると、強大な魔力を秘めたこの少女は是非とも仲間にしておきたい……!
かといって、このすべてをミノリの封呪の魔法でさばいていくのは無理だ……!
どうする!?
どうすればいい!?
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