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外道魔法少女ルナ  作者: door
<第2部>
80/98

14. パスポートのために!

大幅に遅れて申し訳ありません!

「ドイツだ! その歴史的経緯から〝魔女の国〟とも呼ばれるこの国に、13人目の魔法少女がいる可能性がある!」


 俺の言葉に、他の四人の間に緊張が走った。


 やがて、セレナが口を開く。


「ドイツですか……。随分遠いですね……」


 確かにな。


 ドイツなら流石に(ほうき)に乗ってひとっ飛びってわけにはいかないだろう。


 だが……。


「なに。飛行機でほんの12時間くらいさ。お前ら、パスポートは持ってるか?」


 俺がそう尋ねると、四人ともコクリとうなずいた。


 よし! 全員持ってるとはラッキーだ!


 新しく作るとなると、発行に一週間はかかるからな。


 もちろん、俺もパスポートは持っている。


 これで行こうと思えば、いつでもドイツに行けるわけだ。


「よし、それじゃあ決まりだな。この五人でドイツに向かう。準備ができ次第すぐにだ。各自、家に戻って予定の調整をしてくれ!」


 この日はこれで解散となった。



   ☆☆☆☆☆



 来果から電話があったのはその日の夜だった。


『ルナせんぱ~い! 助けてくださ~い!』


「どうした、来果!? まさか、敵に襲われたのか!?」


『いえ、違うんです! ドイツ行きのことをお母さんに話したら、〝あんた、二か月も学校ずる休みしといて、旅行なんて行けると思ってるの!?〟って無茶苦茶怒られました……』


 そういや、こいつ、俺の記憶が無くなっている間、セレナと一緒に学校サボって魔法の特訓に明け暮れていたんだっけな。


 もちろん、敵に顔を見られているから学校に出られなかったというのもある。


 だけど、俺だって敵に顔を見られているわけだし、できるだけ全員(学校の違う澪は無理だが……)で一緒にいた方が安全だ。


 だから、俺の助言でセレナも来果もあれから学校に復帰している。


「そうか。だけど、それなら親に黙って家を出ればいいだけじゃないか? もちろん、帰ってから怒られるだろうが、俺も一緒に謝ってやるよ」


『いえ、それが……。お母さんがパスポートを管理しているんです! 来果が勝手にもちださないように、さっきどこかに隠してしまいました……』


「マジかよ……」


 ならば、セレナの透明化魔法(クラルティア)で搭乗ゲートを通過するか?


 ……いや、仮にそれが可能だとしても、パスポート無しで海外に行くっていうのは色々マズイな。


 密入国がバレたらかなり厄介なことになる。


 いくら俺たちが魔法を使えるとはいえ、無謀なことはしない方がいいだろう。


「となると、来果の母親をなんとか説得するしかないな」


『お母さんが言うには、明後日の全校一斉の学力テストで全科目九割以上取れれば、ドイツに行ってもいいそうです』


「これまた無茶な要求だな……」


 俺たちの通う紫苑中学では二か月に一回、全校一斉の学力テストが行われる。


 業者が行うような都道府県や全国規模の模試とは違い、学校の教師陣がこの日のために用意した選りすぐりの良問ぞろいのテストだ。


 紫苑中学が難関高校進学率で市内トップに君臨し続けているのも、この定期的な学力テストのおかげと言える。


 その分、当然テストの難易度もそれなりに高いわけで……。


「来果、ちなみにお前、前回の学力テストは何点だった?」


『ええと、確か500点満点中、200点ちょっとだったかと!』


 来果は自信満々に答えた。


 俺は頭を抱える。


 む、無理だ……!


 来果の母親の要求は九割!


 点数にして、500点満点の内、450点以上!


 テストまであと二日で、どうやって来果にそれだけの点数を取らせればいいんだ……!?



   ☆☆☆☆☆



 テスト前日の夜。


 紫苑中学の校舎は闇に包まれていた。


 澪を除く紫苑中学の魔法少女4人は闇夜の校門前に集合している。


「というわけで、来果に何としても明日のテストで九割以上取らせる必要がある!」


「それで夜の学校に忍び込んで問題を盗むことにしたってわけ?」


 ミノリがあきれたような声を出す。


「他に何か方法はないんですか? ちゃんと勉強するとか……」


 セレナが言った。


「いや、俺も最初はそう思って今日一日、来果の勉強をみてたんだが……」


 江戸幕府を開いた人間の名前をきかれて自信満々に〝埴輪(はにわ)!〟と答える来果に正攻法で九割を取らせるのは不可能だ。


「そ、それは確かに他にどうしようもありませんね……」


 これにはセレナも引きつるしかない。


「お願いします、セレナ先輩、ミノリ先輩。問題を盗むのは悪いことだっていうのはわかっていますが、来果がドイツに行くにはもうこうするしか……」


 来果がセレナとミノリに頭を下げる。


「はぁ。わかりましたよ。今回だけですからね」


「ついでにアタシら二年生用の問題も盗っちゃおーよ!」


 よし、話は決まりだな。


「セレナ、頼む」


「はいはい。みんな私に捕まってくださいよ。……〝クラルティア!〟」


 セレナの魔法でみんな透明になる。


 これで夜の学校を巡回している警備員に見つかる心配はない。


 いざ、問題を保管してある職員室へ出発だ!



   ☆☆☆☆☆



 職員室前までは無事にたどり着いた。


 警備員の気配がないのを確認し、セレナがクラルティアを解除する。


 いつまでもセレナにくっつきっぱなしじゃ、動きにくいからな。


「ふっふっふ! 宝はこの扉のむこうか……!」


 すっかり乗り気になっているミノリがトレジャーハンターみたいなことを言う。


「そんじゃ、行くよ!」


「待て、ミノリ」


 職員室の扉に手をかけたミノリに俺はストップをかけた。


「どしたの? ルナちん」


「あれを見てみろ」


 俺は懐中電灯の光で職員室の入り口に貼ってあったシールを照らした。


「あ! これはアル●ックのマーク!」


「そうだ。不用意に侵入すれば、吉田沙●里が飛んでくるぞ」


「ええ!? あの霊長類最強の人が!?」


 来果が震えあがる。


「冗談言ってる場合じゃないですよ、ルナさん」


 と、たしなめてきたのはセレナだ。


「これ、たぶん扉を開けたら警報機が鳴りますね。どうします? 他に侵入口はありませんよ」


「ふむ……。警報機はあそこか……。来果!」


「はい!」


「お前の時間操作の魔法をあの警報機にかけろ。時間を止めることで警報機の機能を停止させるんだ」


「おお! さすがルナ先輩! その手がありましたね! じゃあ早速……〝ライカン・クロノシオ!〟」


 オレンジ色の球体が警報機の一帯を包み込む。


「よし、これでいい。来果はそのままそこで魔法をかけ続けていろ。セレナ、ミノリ行くぞ。手分けして明日のテストの問題を探すんだ!」


『おお~!』


 三人で職員室に侵入する。


 しばらく手分けして職員室中を探したが、明日のテストらしきものはどこにも見つからなかった。


「ルナちん、見つかった?」


「いや、ダメだ。そっちはなんかあったか?」


「全然。こう暗くっちゃ、探すのも一苦労だよ」


 ミノリと俺がそんな会話をしていると、戸棚の方を探していたセレナが声をあげた。


「ルナさん! ミノリさん! これじゃないですか!?」


 急いでセレナの所に駆け寄る。


 セレナが指し示すのは戸棚の下の方。


 そこにはいかにも堅牢そうな金庫があった。


「たぶん、テスト問題はこの中ですよ」


「だろうな……。だが、ダイアル式金庫か……。開けられないことはないが、時間がかかるぞ、こいつは……」


 その時だった。


 外にいた来果が小声で叫んだ。


「ルナせんぱーい! 向うの廊下に懐中電灯の光が! 警備員さんがもうすぐ来ますよ!」


 くっ……。


 こんなところ見つかったらアウトだ!


 しょうがない!


 いったん職員室の外に出て来果と合流し、セレナのクラルティアで身を隠そう!


「セレナ、ミノリ! 急げ! 早く来果のところへ!」


 職員室を飛び出した俺たちは来果のもとへ走る!


「〝クラルティア!〟」


 セレナは走りながら呪文を唱え、来果と手をつなぐ。


「さあ、ルナさん達も早く!」


 馬鹿、セレナ……。


 テンパッているのはわかるが、先にお前の姿が見えなくなったら、手なんかつなげるわけ……。


「ぎゃっ!」


 案の定、手をつなぎ損ねたミノリがずっこけて廊下に滑り込んだ。


 そして――。


「だ、誰だ!? そこで何してる!?」


 最悪のタイミングで警備員が登場!


 くそぉ!


 作戦失敗!


 ここは撤退だ!


「〝オクルス・メドウセム!〟」

挿絵(By みてみん)


「メデュウアアアアアアアア!」


「ぎゃああああああああああ!」


 この警備員に恨みはないが、しばらく石になっていてもらおう。


 石化魔法の有効期限は一時間。


 一時間以内に金庫の鍵が開く保証はないし、あの警備員の石化が解ければ、職員室の警備は強化されるに違いない。


 もうテスト問題は諦めるしかなさそうだな……。


次回の更新は(たぶん)一週間後を予定しております。

感想、評価、レビュー等をいただけたら大変うれしいですし、励みになります。

これからも「外道魔法少女ルナ」をよろしくお願いいたします!

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