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外道魔法少女ルナ  作者: door
<第1部>
7/98

7. 呪文の登録

 放課後。


 学校の近くにある山の中腹。そこに俺とセレナ、そしてメルヴィルの姿はあった。


 ここなら周りに建物はないし、滅多に人も来ないので、魔法の練習にはうってつけだろう。


「おいメルヴィル。俺たちが学校にいる間、お前は何をしていたんだ?」


「もちろん、3人目の魔法少女を捜してたのワン」


「見つかったのか?」


「そんなに簡単に見つかったら苦労しないのワン。前にも言ったワンが、強い魔法の素質を持った子なんて、どこにでもいるわけじゃないのワン。それに、何故だか街にはルナやセレナくらいの年頃の女の子がいなかったのワン」


「そりゃ、平日なんだから、みんな学校に行ってるんじゃないのか」


「…………」


 俺がごく当たり前のことを言うと、メルヴィルはハッとしたように目を見開き、そのまま固まった。


「…………それは失念していたのワン」


「お前、馬鹿だろ」


「失礼ワン! 馬鹿じゃないのワン! 僕がルナを見つけたのは学校の外だったから、また外に行けば見つかるかもしれないと思っただけなのワン!」


 そう言い訳をする犬みたいな喋り方のリスを無視して、俺はセレナの方を向いた。


「セレナ、早く始めようぜ。魔法の練習」


「はい。でも、まずはルナさんの使える魔法を増やさないといけません」


「増やす? そんなことできるのか?」


「ええ。まずはステッキを出してくれますか?」


「わかった」


 俺は首から下げていたペンダントを外し、右手に持って、呪文を唱えた。


「知恵と闇の力を持つ杖よ、汝が主、ルナの名のもとにその力を示せ!」


 すると、ペンダントはステッキへと姿を変え、俺の服装も、制服から黒を基調とした魔法少女のコスチュームへと変わった。


 これが所謂、魔法少女に変身するときのお約束というやつで、昨日、あの後メルヴィルにやり方を教わった。


 この魔法のステッキというやつは力を使わない時は、さっきみたいにペンダントの形にして身につけておくことができるのだ。


 なんとも便利なこった。


「にしても、この格好だけはどうにかならねえのか? 恥ずかしいったらない。スカートなんか短すぎて、ちょっと動いたらパンツが見えそうだ。俺にはこんな格好、似合わないぞ」


「そんなことありませんよ。とってもよく似合ってます」


「お世辞なんか言っても、何も出ないぞ。で、魔法を増やすって、一体どうやるんだ?」


「簡単ですよ。杖に魔法を登録すればいいんです」


「杖に呪文を登録……あ、そういえば、昨日バビロンの奴がそんなこと言ってたな。確か、魔法少女になった時に発現する魔法とは別の魔法を使うには、スペルを詠唱しなきゃいけないとかなんとか」


「そうです。これを見てください」


 セレナは鞄から今にも破れそうな古めかしい本を取り出すと、地面の上に広げた。


「これは簡単な魔法を集めた、いわば基礎呪文集です。ここに書かれているスペルを詠唱することで、杖に呪文を登録することができます」


 俺はその本の中身にザッと目を通してみたが、そこに書かれていたのは全く未知の文字だった。


 昔、ヴェントリスの伝記を読んで古代文字に興味を持ったことがあったので、一通りの古代文字は頭に入っているが、これはそのどれとも違う形をしていた。


「強いて言うなら、グラゴル文字に似ているが、全くの別物だな。こんなの全く読めやしな……ん?」


【杖を箒に変える呪文・ビアブルム。登録方法は、杖を太陽に向けたまま、以下のスペルを詠唱……】


「な、なんだ!? 見たことない文字のはずなのに、意味がわかるぞ!」


「そこに書かれているのは精霊界の文字ですよ。魔法少女は誰でも読めるようになっているんです。試しに、その箒の呪文を登録してみてはどうですか?」


 俺は頷くと、本に書いてあった通りに、ステッキを太陽に向けたまま、途中で何回も舌を噛みそうになるくらい長く複雑なスペルを詠唱した。


 それが終わると、俺のステッキは一瞬大きな光を発したが、すぐにそれは収束した。


「それで登録が完了です。後は呪文を唱えれば、いつでも魔法が使えますよ」


 そうセレナに言われ、俺は半信半疑ながらも、物は試し、とばかりに呪文を唱えた。


「〝ビアブルム!〟」


 その途端、ステッキは光り、俺の身長よりも丈のある箒へと形状を変えた。


「跨って、地面を蹴り上げてください。そうすれば飛べます」


 セレナのレクチャー通り、跨って思いっきり地面を蹴り上げる。


 すると、身体が上に持ち上げられ、一気に箒ごと宙に浮いた。


 体で風を切るような感覚と共に、みるみる高度を上げていく。


「うおおおおおお!」


 生まれて初めての感覚に、思わず声が出てしまう。


 ようやく箒が止まり、ホバリング状態に入った時には、相当な高さまで上昇していた。


 恐る恐る下を見ると、豆のように小さくなったセレナが、こちらに向かって手を大きく振っていた。


「ルナさーん、聞こえますかー? 」


「ああ! 聞こえるぞ! 」


「動きたい方向を念じてくださーい! そうすれば勝手に動いてくれます! 」


「わかったー! 」


 とりあえず、真っ直ぐ動くように念じてみた。


 すると、箒はその指示通りに動き、それがいきなりだったもんで、俺は危うく振り落とされそうになった。


 なかなかバランスをとるのが難しかったが、十分くらい前後左右上下に運転していれば流石に慣れてくるもので、一通り飛び回って地面に降り立つ頃には、だいぶコツを掴んでいた。


「どうでしたか? 初飛行の感想は」


 着陸したばかりの俺に駆け寄ると、セレナはそう尋ねた。


「うん。子供の頃、魔法少女のアニメを見たことがあって、それ以来ずっと気になっていたんだが、やっぱりそうだった」


「何がです?」


「箒で空を飛ぶって、股に食い込んで痛いんだよ」

オマケ:呪文紹介コーナー


・今週の呪文

 ビアブルム: ステッキを空飛ぶ箒に変化させるぞ。

        (使用者: 柊セレナ、芳樹ルナ)


・次回の更新は一週間後を予定しています。感想・評価等をいただけると、大変嬉しいですし、励みになります。


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