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外道魔法少女ルナ  作者: door
<第1部>
65/98

65. 最終話(第1部・完)

お待たせいたしました。

この回でコミコ掲載分は終了です。

読了後は第2部の方にお進みください。

新たな魔法、新たな仲間、新たな敵が登場し、ルナたちの物語はさらに続いていきます。

 屋上に現れた謎の魔法少女を追い払った後、俺たちは一旦教室に戻った。


「いやー。すげー地震だったなぁ。さっきの」


「校舎が倒壊するかと思ったぜ」


 テストはもう終わったらしく、教室では生徒たちが騒いでいた。


「よかったですね。みんなさっきのを地震だと思ってるみたいですよ」


「そりゃ、誰も魔法同士の激突による衝撃波だなんて思わないさ」


 俺が冗談めかしてそう言うと、セレナは「あはは」と笑った。


 テストの最終日だったので、その後は簡単な帰りの会があっただけで解散となった。


 俺たちメルヴィルの国の魔法少女は、作戦会議のため屋上に再集合した。


「それで、その新しい敵というのはどんな奴だったんですか?」


 来果が不安げに尋ねた。


「わからない。雲のような物に隠れていたからな」


「雲……ですか。おそらく、それは〝クラウディア〟系統の魔法ですね」


 魔法に関しては俺よりも博識のセレナが呟く。


「他にもはがねの全方位シールドや巨大エネルギー波を使っていたぞ。いまいち相手の属性がわからないな」


「また敵が襲ってきたらどうするんですか? ルナ先輩にもしもの事があったらと思うと、来果は不安で不安で……。こうなったら、もうルナ先輩の傍を片時も離れませんよ!」


「〝片時も〟は不可能にしても、それに近いことはした方がいいだろうな。しばらくは二人共俺の家に泊まれ。なに、受験に向けての勉強合宿とか言っとけば、親も納得するだろう」


「やったー! ルナ先輩の家にお泊まりだー!」


「来果さん、遊びじゃないんですよ!」


 無邪気にはしゃぐ来果をセレナがたしなめる。


「あとは、なゆた達にもこのことを……って、あれ?」


 ここで俺は重大なことに気づいた。


 さっき、俺は確かブレスレットの信号を発信したよな……?


 このSOS信号は俺がブレスレットを渡した全員に発信される。


 当然、なゆたと澪にも、だ。


 セレナと来果は信号を受信してすぐに駆けつけてきた。


 今日は平日。


 なゆたと澪の通う榊原中学や青山中学からなら、箒を使えばとっくにここへ着いていてもおかしくない時間が既に経過している。


 どうしてあいつらはここに来ない? 


 互の精霊を交換している以上、俺たちが殺られたら、あいつらだって困るのは十分にわかっているハズ……。


 テスト中で抜けられなかったからか? 


 ……いや、澪はともかく、なゆたはどんなことがあろうとも助けに来るはず!


 それでこそのなゆた! 


 それでこその王道魔法少女だ!


 そうなると、考えられるのは――。


 俺が〝その可能性〟に思い至った時、俺たち三人のブレスレットが一斉に振動した。


「ルナさん、これ……!?」


「なゆた先輩たちですよ!」


 くそ……、やはりそうか!


 あいつらが俺を助けに来なかったのは……いや、助けに来れなかったのは、あいつらもまた敵に襲われていたからだ!


 俺は急いでブレザーのポケットからスマホを取り出し、なゆた達のブレスレットに内蔵された発信機で居場所を探す。


「見つけたぞ! ここは……隣の市の廃工場だな。ちょうどこの紫苑中学と榊原中学、青山中学の中間地点だ」


 ってことは、なゆた達は俺を助けに出た途中で襲われたらしいな。


 なゆた達を襲ったのは、おそらく俺を襲った奴の仲間だろう。


 でなけりゃ、あまりにもタイミングが良すぎる。


 敵の数は何人だ?


 さっきの雲に隠れた奴も合わせて、最低三人はいると考えた方がいい。


 こいつは、この戦いの趨勢を左右するドデカイ大戦になりそうな予感がするぜ。


「〝ビアブルム!〟」


 ステッキを箒に変化させ、跨る。


「行くんですか?」


 重々しい表情で、セレナが尋ねた。


「当然だ。あいつらが倒されたら、俺たちも終わりだ。メルヴィルの場所がわからなくなるからな」


「それだけ、ですか?」


 セレナの目は俺の心中を見透かしているようだった。


 まったく、適わないな、お前には。


「行こう。俺たちの仲間を助けに、な」


『はい!』


 セレナと来果は力強く返事をした。


 救出に向かう最中、俺はなゆた達に初めて出会ったあの採石場でのことを思い出していた。



「なゆた……」

「ルナちゃん……」

「今日の所は勝負をあずけてやる。だが……」

「今日は諦めて引き下がるよ。でも……」

「俺はいつか必ずお前を……」

「私はいつか必ずあなたと……」

「殺す!」

「友達になる!」



 どうやら、あの時の勝負はお前の勝ちだったみたいだぜ、なゆた。


 死ぬなよ! 二人共!


 お前たちは俺の〝友達〟なんだからな!



   ☆☆☆☆☆



 同時刻。


 とある場所。 


 ここはルナの作戦に従い、なゆた達がメルヴィルを隔離するのに選んだ場所である。


「大戦の予感がするワン……」


 窓の外を見上げながら、精霊メルヴィルは呟いた。


「どうも」


「だれワン!?」


 突然の声にメルヴィルが振り返ると、そこにはクマのぬいぐるみのような生物が二本足で直立していた。


「どうも。吾輩はベアズリー。あなたと同じ、この戦いに参加する精霊です」


 ぬいぐるみのような見た目に反し、ベアズリーは恭しく礼をする。


「一体何をしに来たのワン?」


「いえ、ただちょっと宣戦布告に参っただけですよ」


「それは穏やかじゃないワン」


「戦いの元凶である貴方が何をおっしゃるやら。私はあなたの国を倒し、必ずや精霊界に平和を取り戻してみせますよ。そうでしょう? この戦いを引き起こした神聖メルヴィル帝国の第一皇子――フリードリヒ・メルヴィル三世!」


「…………」


 ……God only knows that how this war will end.


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