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外道魔法少女ルナ  作者: door
<第1部>
63/98

63. メルヴィル・ルーニャ二重帝国

 目を開けると、そこには星の海が広がっていた。


 満天の夜空。


 冷たい風。


 肌をくすぐる雑草の不快感。


「ここは……」


 どうやら、元いた山の中に戻ってきたらしい。


 夜になっているってことは、少なくともあれから数時間は経っていることになる。


 他の四人も、殆ど同時に目を覚ましていた。


「あっ!」


 セレナが何かに気づいたような声をあげた。


「皆さん、見てください! 遺跡が消えてます!」


 その言葉通り、あのストーンヘンジに似た遺跡が跡形もなく消えていた。


 一瞬、場所が違うだけなんじゃないかとも思ったが、周囲の景色からして、元いた場所に間違いない。


 この広い野原から、あの遺跡だけが姿を消していたのだ。


「さっきまでのは夢だったのかな?」


 なゆたが半信半疑に呟く。


「夢じゃない」


 澪が断言する。


「見て」


 その指には先ほどの試練で勝ち取った指輪があった。


 他のみんなにも、宝石の色は違えども、同じ指輪がはめられている。


「どうやら、試練を終えたことで遺跡はその役割を果たして消滅したようだな」


 おそらく、あれはエスメラルダが今回の試練のために作った、魔女の試練への入口なのだろう。


 もしかしたら、魔力のある者にしか見えないような魔法でも施されていたのかもしれない。


 でなきゃ、あんな遺跡はとっくの昔に発見されて、有名になっているだろうからな。


 結局、今回の試練で俺が得たものといえば、最強の攻撃魔法ヴァールーナ・イーマ・エッサイムと新たな魔法アイテムくらいか。


 死にそうな目にあったにしては少し報酬が少ない気がするぜ。


「何はともあれ、全員無事でよかったです!」


「来果ちゃんの魔法のおかげだよ! 時間停止で何回も敵の攻撃を止めてくれたんだもん!」


「えへへ~。それほどでも~。なゆた先輩も、回復魔法でみんなの怪我を治した功績は大きいですよ!」


「澪さん、私がやられるのを見るなり、ケルベロスに突撃してくれましたよね。ちょっと感激しましたよ」


「……別に。身体が勝手に動いただけ」


「あれ? 澪ちゃん顔が赤いよ。照れてるの?」


「そ、そんなことない!」


「あはは~。澪先輩、顔が真っ赤です~」


 ……前言撤回。


 今回の試練で、俺たちは十分すぎるくらいの報酬を得たようだな。


「よし、お前ら! 今日のところはこれで解散にしよう!」


 俺は立ち上がって高らかに宣言する。


「忘れてないとは思うが、俺たちには早急にやるべきことがある。そう、バーナードの国から奪ったもう一つの戦利品、マナ・クリスタルを使って仲間を増やすことだ! 明日以降、それぞれの国は新たな魔法少女の任命に全力を傾けること! そうすれば俺たちメルヴィル・ルーニャ二重帝国の領土と兵力は共に7! 13しか領土のないこの戦いでは、俺たちが過半数の戦力を握っていることになる! もはや、数の上で負けることは絶対にない! いかなる敵が襲ってこようとも、俺たちは常に協力し、返り討ちにする!」


 こう言うと、敵を殺すのを嫌がるなゆたが反発しそうなので、しっかりこう付け加えておく。


「攻撃こそ最大の防御なり! 俺たちの国の大きさを目の当たりにした敵は、自らステッキを下ろし、降伏するだろう! そうすれば別に相手を殺す必要さえない! そいつの精霊を奪って人質にして仲間にすることもできるからだ! つまり、この戦い、過半数の戦力を握った時点でほぼ勝ちは確定したようなもの! 残っている国を全て軍門に降してしまえば、我らが覇道を阻む者はない! ウォーゲームはそれ以上進展することなく、終わりを迎える! 実に平和なことではないか! 武力を持って平和を勝ち取るのだ! 俺たちの国はいわば警察だ! 無益な戦いを続ける愚かな国を取り締まるのだ! そして、その果てに無血終戦を勝ち取るのだ!」


 聴衆を沸き立たせるには多少大げさに語気を強めて何度も繰り返すのが効果的。


 アジテーション(煽動)とはそういうものだ。


 事実、俺の演説を聞いた四人は誰からともなく俺のもとに歩み寄り、皆で円陣を組んだ。


「勝つぞ! 俺たちは絶対に勝つぞ!」


『おおー!』


 夜の山に五人の魔法少女の決意に満ちた声が響いた。


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