58. 第五の試練
「ヴァーーーーーーーーーーール!」
第四の試練の結界を粉砕すると、俺が召喚した悪魔は雄叫びをあげて消滅した。
それと同時に、全身から力が抜け、俺はその場にへたり込んだ。
「ルナさん、大丈夫ですか!?」
セレナが心配そうに言った。
「ああ……。ちょっと魔力を使いすぎただけだ……」
「そうですか」
セレナはホッとしたように言うと、
「まあ、確かにあれだけ強力な魔法を使えば、魔力が一気に削られるのも無理はないですね」
「そうだな……」
闇の魔導波 (マギア・テネブラム)を30発以上撃ち込んでもビクともしなかった結界をいとも簡単に破壊した悪魔神召喚魔法、ヴァールーナ・イーマ・エッサイム。
威力はかなりのもんだが、一度にそう何回も使える魔法じゃなさそうだな……。
連発なんかしようもんなら、こっちの方が先に死んじまいそうだ。
『ふふふ♪ まさか第四の試練まで突破されるなんて♪ なかなかやりますね、あなた達♪』
相変わらずのおどけた調子で、天から声が降ってくる。
『さあ、次はいよいよ最後の試練ですよ♪ その扉をくぐって私のところまで来てください♪』
「ちょっと待って! ルナちゃんは魔力の使いすぎで疲れてるの! 次の試練まで休ませてあげて!」
なゆたが天井に向かって叫んだ。
『ダ~メ~です♪ 試練が終わった後の部屋に留まることはできません♪ さっさとその扉をくぐってくださ~い♪』
「そんな! ちょっと休むくらいいいじゃない!」
「なゆた、俺は大丈夫だ」
少ししんどかったが、なんとか立ち上がる。
「ルナちゃん、大丈夫なの!?」
「ああ……」
本当はもう弱い魔法一つ使えないけどな……。
ここに留まったらあの天の声が何をしてくるかわからない。
それに、早く拝んでみたいじゃねえか。
あの天の声のブサイクなツラをよぉ。
「心配しないで。今回の試練はあなた一人で突破したんだもの。次の試練は私達がやる」
と、澪。
「そうですよ。最後の試練は来果たちに任せて、ルナ先輩は休んでいてください」
と、来果もいつも通り忠犬のような献身ぶりだ。
「よし、じゃあ行こうぜ! 最後の試練に!」
俺たち五人は並んで最後の試練へと続く扉をくぐったのだった……。
「ようこそ♪ 五人の魔法少女のみなさん♪」
最後の部屋(相変わらず白いだけで何もない)に入った俺たちを出迎えたのは少女だった。
俺の言えたことじゃないが、とても背が低く、顔も滅茶苦茶童顔。
ひょっとしたら、俺たちよりも年下なのではないかと思うくらいの容姿だった。
こ、こいつが今まで俺たちに試練を課していた〝天の声〟の正体……?
なんだか拍子抜けしてしまった。
他の四人も同様の感想を抱いたらしい。
全員、肉まんだと思って食べたのが実はアンまんだった時のような、何とも言えない複雑な顔をしている。
そんな俺たちの心中を知ってか知らずか、
「どうです♪ 言ったとおり、私って結構美少女でしょう?」
と、天の声の主は胸を張った。
張るほどの胸は無いに等しかったが……。
「いや、可愛いといえば可愛いんですが……」
セレナが申し訳なさそうな声をだす。
「そこまでかと言えばそうでもないような……」
優しく相手に話を合わせるのかと思っていたが、セレナは意外に辛口だった。
「むぅ~! そんなことないですよぉ! 私は美少女だったら、美少女なんです~!」
見かけ通り、子供のように頬をふくらませてムクれる天の声。
アホくさい……。
俺たちはこんな奴が出す試練に今まで付き合わされていたのか……。
「もういいからさっさと始めてくれよ、最後の試練を。賞品の魔法アイテムをもらって、とっととこの空間からおさらばしたいぜ」
俺がそう言うと、おどけた調子だった天の声の顔が急に邪悪に染まった。
「そうですね。では始めましょうか。時空の魔女たるこの私、エスメラルダの最後の試練を! 〝ラルダーノ・エス・メディチオーネ!〟」
天の声の主――いや、時空の魔女エスメラルダがステッキを構えて呪文を唱える。
すると、何もないはずの空間に突然切れ目が入り、左右に広がって大きな穴が開いた。
「なんだ……何が始まるんだ……?」
突然の出来事に、俺は慄然とした。
「ふふふ♪ この魔法は空間に切れ目を入れ、そこからランダムに異界の魔獣を召喚します♪ 弱い魔獣ならラッキーチャンスですよ♪ さあ、何が出るかな、何が出るかな♪」
数秒の間を置いて、そこから現れたのは……。
「あちゃー♪ あなたたちも運が悪いですね♪ よりによって最悪の相手が出てしまいました♪」
「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
「さあ! 最後の試練です! この地獄の番犬ケルベロスちゃんを倒してくださ~い!」




