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外道魔法少女ルナ  作者: door
<第1部>
57/98

57. ルナの新魔法

「〝マギア・テネブラム!〟」


挿絵(By みてみん)


 ドゴォオオ!


 闇の魔導波が、魔法陣にぶち当たり、炸裂する。


 これで、通算37回目の攻撃。


 だが……。


「ダメだ! 全然壊れる気配がない!」


 くそぉ! 


 こうしている間にも、セレナたちが閉じ込められたシリンダーには水が着々とたまり始めている。


 もう肩くらいまで水位が上がっている。


 このままじゃ……。


「ルナさん! 私たちのことは気にせずに結界を破ることだけに集中してください!」


「そうです! 来果たちはルナ先輩を信じています!」


「ルナ、頑張って……」


「ルナちゃんならできるよ! 今までの試練だって、ルナちゃんのおかげで突破できたんだもん!」


 みんなの声援が、俺に力をくれる。


 その応援だけで、不思議と身体に魔力が溢れてくる気がしてきた。


 しかし……。


『ふふふ♪ 流石のあなたでも、今回ばかりは無理ですよネ♪ この試練に必要なのは力だけ♪ 得意の知略を活躍させる要素なんて皆無なんですから♪』


 天の声が俺をあざ笑う。


 今までの試練を突破されたのがそんなに悔しいのかよ。


所詮しょせん、知略や戦術、頭の良さなんてものは圧倒的な力の差の前では何の意味もないのだということを思い知るがいいです♪ あなたの自慢の頭脳をもってしても、仲間を救うことはできないのですよ~♪』


 クソ……。


 確かに、天の声の言うとおりだ。


 この試練は知略ではどうにもできない。


 単純に、力の勝負だ。


 俺が使える魔法は全部で五つ。


 だが、この試練で役に立つのは闇の魔導波を放つマギア・テネブラムだけ……。


 蛇の突進じゃ威力不足だし、即死魔法や石化魔法はそれ自体の威力はゼロだからな。


 飛行魔法は論外にも程がある。


 かと言って、今打ち続けているマギア・テネブラムも役に立つとは言い難い。


 最初は強力な魔法だと思っていたが、マキ戦で鋼鉄のコマ(マキズ・ドルアムズ)に力負けして以降は威力不足が目立ち始めている。


「クソォ……。チクショウ……」


 何が天才だ……!


 俺はこんなにも無力じゃないか……!


 仲間を守ることもできず、こんな試練に屈するなんて……!


 力が欲しい……!


 この状況を覆せる力が……!


 この結界を壊し、にっくき天の声を黙らせられる最強の力が……!


『……力が欲しいか、少女よ』


 突然、声が聞こえた。


 聞き覚えのない声。


 セレナたちでも、天の声でもない。


 とても低い、地を這うような闇の声だ。


「っ! 誰だ! お前は!」


 俺がそう叫んだ時、辺りが闇に包まれた。


『仲間を死なせたくないのだろう?』


 闇の中から、再び声が聞こえる。


「誰だ、お前は!」


 俺はもう一度叫んだ。


『我はその昔、闇の魔術師により作られた者。お前たち人間の言葉で言えば、〝悪魔〟……』


「悪魔だと……?」


『今までの試練、見せてもらったぞ。お前の知略、狡猾さ、そして強力な闇の魔術を扱えるその才能……我が主としてふさわしい』


「何を言って……」


『私がお前を認めているというのだよ。この闇が晴れたら、私を使え。そのための呪文は、お前の頭の中に既に浮かんでいるハズだ……』


「っ! お前を使えば、あの結界が壊せるのか!?」


『愚問だな。さあ、私を受け入れるのだ、少女よ。力が欲しいのだろう?』


「……いいだろう。この状況をひっくり返せるのなら、俺は悪魔とだって契約してやる!」


 そこで、闇が晴れた。


 気づけば、俺は元の白い部屋の中に立っていた。


 セレナたちは相変わらずシリンダーの中に閉じ込められている。


 水量は、さっきと変わっていない。


 まるで、俺があの暗闇の中にいた間だけ、時が止まっていたかのようだった。


 ……今のは、夢か?


 悪魔が出てくる白昼夢を見るなんて、俺もどうかしてやがる……。


「…………っ!? なんだ!?」


 先ほどのことが夢かうつつか判断しかねていた俺の腰あたりから、ドス黒い光が出ていた。


 闇魔法の使い手の俺だからこそわかる、強い闇の力を感じる。


 光源たる〝それ〟をポケットから取り出し、俺は先ほどの光景が夢でないことを悟った。


「そうか……。さっきの悪魔の正体は、お前だったのか……」


 俺の手に握られているのは、マキを倒した時に奪った黒い宝石の形をした魔法アイテム。


 今まで発動の仕方が分からず、一応持ち歩いていたが、どうやらようやくこれを使う時が来たようだった。


「頼むぜ。セレナたちを救ってくれ」


 宝石から出る光をステッキに照らす。


 すると、ステッキ自身も強く光った。


 他の魔法を登録した時とはケタ違いの強い光だ。


 気がつけば、宝石の方は跡形もなく消え去っていた。


 これで魔法の登録は完了だ。


 魔法を発動するための呪文も、俺の頭の中に浮かんでいる。


 いくぜ!


 悪魔神よ、我が領域に降臨せよ!


「〝ヴァールーナ・イーマ・エッサイム!〟」


挿絵(By みてみん)


「ヴァーーーーーーーーーーーーーール!」


 地面に広がった魔法陣から召喚された悪魔神が、雄叫びをあげながら結界に突進する。


 あまりにも強大な闇の力で、まるで震災にでも襲われたかのように白い部屋が揺れた。


 天井が、壁が、床が、ミシミシと音をたてる。


「なんですか……この魔法……」


「すごく大きいです……」


「いや、大きさだけじゃない。今まで見たどんな魔法よりも強力で、邪悪で、禍々(まがまが)しい……」


「ルナちゃん、すごい……」


 恐れおののくセレナたちを尻目に、召喚された悪魔はどんどんと力を増していく。


「ヴァーーーーーーーーーーーーーール!」


 パリーン!


 一撃。


 たったの一撃で、あの堅牢な結界が音を立てて崩壊した。


 まるで、窓ガラスに野球のボールをぶつけたかのように、簡単に……。


『そんな……。あの強力な結界があっさりと……』


 天の声も、悪魔神のあまりの破壊力にワナワナと震えていた。


「ルナさん!」


「ルナせんぱーい!」


 シリンダーから解放されたセレナたちが駆け寄って来る。


 よかった。


 こいつらを救うことができて。


 本当によかった。


ついにルナの最強魔法、ヴァールーナ・イーマ・エッサイムの登場です。

コミコ掲載分は残りわずかなので、新規読者の皆さまはもう少しお付き合いください。

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