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外道魔法少女ルナ  作者: door
<第1部>
42/98

42. 計算通り

 その少し前――。


 俺は対岸の倉庫街にて、なゆた達に作戦を伝えていた。


「――説明は以上だ。異論はあるか?」


「す、すごい! ルナちゃんって、頭いいんだね!」


「確かにこれなら全ての問題をクリアできるニャー」


「流石はルナだワン」


 なゆた及びその場にいた二匹の精霊は感嘆の声をあげる。


「お前はどうだ?」


 俺は残りの一人――無表情の裏で何やら考え込んでいる様子の澪に声をかけた。


「……あなたの策は合理的に見える。でも、もしかしたら私が気づかないだけで、何か穴があるのかも……」


「ほう。まだ俺のことが信用できないか?」


「…………」


 無言でコクリと頷く。


「まあ、俺の人間性はともかく、参謀としての才覚は認めて欲しいぜ。それを証明するものとして――」


 俺は一度変身を解除し、元の制服姿に戻った。


 ブレザーのポケットからメモ帳を取り出し、たった二行、澪への指示を書き込み、ちぎって彼女に渡した。


「ここに書いてあることをやってくれ。それだけで、敵の一人は確実に始末できる」


 なゆたに聞こえないよう、小声で伝える。


 あいつは敵であれ、人が死ぬのを極端に嫌うからな。


「…………」


 能面のような無表情で一読した澪は、かすかに首を傾げた。


「……本当にここに書かれている通りに敵が動くの?」


「ああ。奴らの行動は全て読めている。必ずその通りになる」


「……わかった。とりあえずは信用する。もしも本当にここに書いてある通りになれば、私はあなたの作戦を全面的に信じる」


 よし、これでいい。


 大丈夫……。


 マキたちは必ず俺がメモに書いた通りの行動を取る。


 そうなれば、全てが上手くいく……。




   ☆☆☆☆☆




 そして、現在――。


「マキ、リカ! 逃げたければ、逃げろ! ここでお前らが逃げたら、バーナードの国は完全に行動不能になるぞ! 仲間をこれ以上増やせぬまま、戦いの中で他の国に潰されるがいい! もしくは、ここにいる五人の魔法少女を一度に相手にしてバーナードを奪還してみせるかぁ? フハハハハハハ! 」


「このクサレ外道がぁああああああああああ!」


 マキの怒声がその場に木霊する。


「どうするの、マキちゃん! やっぱり五人を相手にするよりもすぐに逃げた方が!」


「ここで逃げても、いずれ他の国に潰されちまうよ! 何とかしてバーナードを奪還しないと! でも、五人相手にどうすれば……っ! そうか!」


 マキは何か妙案を思いついたのか、指をパチンと鳴らした。


「リカ! 耳貸しな!」


 何やら耳打ちをするマキ。


 それを聞いたリカの顔がパアッと明るくなった。


「なるほどぉ☆ 流石はマキちゃん☆ 頭良い~☆」


「さあ、早くやりな!」


「は~い☆」


 リカはステッキを構え、呪文を唱えた。


「〝リカル☆テレピア!〟」


 一瞬にして、彼女の姿が消える。


「捕まえた~☆」


「っ!」


 リカが瞬間移動したのは、澪のすぐ傍だった。


 そのまま彼女の腰にしがみつき、ガッチリとホールドする。


「あはははは! どうだい!? これでリカがバーナードを捕獲しているその女と一緒にどこか別の場所に瞬間移動しちまえば、一対一で戦える! そうなれば、バーナードを取り返すことも不可能じゃない!」


 マキは勝ち誇ったように高笑いをする。


 全て、()()()()()


「マキ、お前たちの負けだ」


「え?」


「澪、れぇええええええ!」


「〝ミオノ・フリガレイド!〟」


挿絵(By みてみん)


 呪文と共に澪の身体が光球に包まれる。


 採石場では散々俺たちを苦しめた、術者の半径1メートルに絶対零度領域を発生させる魔法〝ミオノ・フリガレイド〟。


 当然、敵が至近距離にいる時に使えばどうなるか、考えるまでもないよな。


「な……☆」


「ピィ……」


 澪の腰にしがみついていたリカ及び澪が鷲掴みにしていたバーナードは一瞬にして氷像と化した。


 凍死したリカの体からは、虹色に輝く結晶が浮き出てくる。


 敵を倒した勝利の証――マナ・クリスタルだ!


「やったニャー!」


 俺の肩に乗っていたルーニャが口を大きく開ける。


 リカの体から出てきたマナ・クリスタルは倒した魔法少女・澪の精霊であるルーニャの口の中に吸い込まれていった。


「くそぉ! リカ! リカァアアアア!」


 マキが半狂乱になって叫ぶ。


 リカを殺した澪の方も、普段は感情を表に出さない無表情フェイスを崩していた。


 その手には、先ほど俺が渡した一枚のメモが握られている。


「本当に、この紙に書いてある通りになった……」


 そのメモにはたった二行、こう書かれていた。



 〝敵の精霊を抱えて、俺たちの3メートル後方にいろ。

  あとは敵が勝手にお前にしがみついてくるから、そこを〝絶対零度領域の魔法〟で仕留めろ!〟



「あの子はあの段階でここまでの展開を全て読んでいたと言うの……!?」


 まあ、澪が驚くのも無理はない。


 いわば、俺は澪に〝前提〟と〝結論〟だけを伝えたわけだからな。


 前提は澪がバーナードを抱えて俺たちの後方にいること。


 そして、そこに俺が精霊を隔離されることがいかに危険かをマキたちに説いてやれば、もはや奴らの対抗手段は瞬間移動の魔法で一対一の戦いに持ち込むしかない。


 リカが澪にしがみついて来ると推理するのは容易。


 結論として、リカをミオノ・フリガレイドで瞬殺できる。


 一つ一つの推理は簡単でも、結論に至る中間推理を全てすっ飛ばして、出発点と結論だけを示せば、安っぽくはあるが、相手を驚かせるには十分。


 かの名探偵シャーロック・ホームズがワトソン相手にやった古典的な方法だが、ここで澪に俺の力量を示せたのは大きい。


 澪のようなタイプの人間には、感情に訴えかけるよりも合理的に説得する方が効果的だからな。


 今後も指揮官としての魔法少女ルナの言うことなら、あいつも従うだろう。

 

 さぁて、あとはマキを殺すだけだ!


活動報告にもあるように、ルナ強化キャンペーン中です。

総合評価が500を超えると、記念に新しいイラストを大量発注・追加していきたいと思います。

よろしければご協力ください

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