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外道魔法少女ルナ  作者: door
<第1部>
38/98

38. 脆さ

 マキの魔法との激突の結果、俺の闇の魔導波(マギア・テネブラム)は破れた。

 

 マギア・テネブラムを突き破った敵の〝鋼鉄の独楽こま〟は、ギュイイイインという不気味な回転音と共にこちらに襲いかかってくる。


 く……!


 俺は必死に走った。


 この場所は、海に面した倉庫街。


 逃げるなら、ここしかない!


 攻撃が当たる直前、俺は海に身を投げた。


 俺が海に飛び込んだのと独楽こまがコンクリートの地面を食い破ったのが、ほぼ同時だった。


 海に潜って、なんとか攻撃をかわす。


「ぶはっ!」


 しばらくして海面に顔を出した俺は、敵の攻撃によりえぐれたコンクリートの上に這い上がった。


 このまま泳いで逃げ切ることなどできそうもない、と判断したからだ。


 マキの奴は先ほどの場所から動いておらず、勢いよくグリップを持った腕を振り上げると、先ほどと同様、掃除機のコードのようにチェーンが回収され、独楽こまはステッキへと戻っていった。


「おやおや、ビショ濡れだねぇ。まさか海に逃げるとは。だが、今度は逃げる隙など与えないよ。これでどうだい! 〝ウォレ・ロフティオ!〟」


「何っ!」

 

 マキの呪文と共に、俺の背後に鋼鉄の壁が立ちふさがった!


 こ、これはセレナが前に使ったのと同じ呪文!


 だが、セレナのは透明な光の壁なのに対し、こっちは鋼鉄の壁だ!

 

 この呪文は術者の属性によって壁の性質が変化するのか!


「さあ! これで背後への逃げ道は塞いだよ! もう海に飛び込むことはできないねぇ!」


「ぐ……」


「今度こそ、死にな! 〝マキズ・ドルアムズ!〟」


 再び鋼鉄の独楽コマが現れ、俺に襲いかかってくる!


 どうする!?


 蛇の魔法(アンギ・フーニス)では蛇どもがミンチにされちまうのは、さっきの結果からも明らか。


 蛇どもでは、あの独楽こまの回転は止められない。


 現状、俺の持てる最強の攻撃魔法は、闇の魔導波を放つ魔法、マギア・テネブラムだが、先ほどフルパワーで放ったそれも、鋼鉄の独楽こまの回転で霧散しちまった。


 悔しいが、この巨大な独楽こまに勝てる魔法は俺のステッキには登録されていない。


 まともに攻撃をぶつけるだけじゃダメだ! 


 何とかして、俺の魔法を奴の魔法よりも強くしないと! 


 しかし、いったいどうやって……!?


「諦めな! あんたの魔法じゃ、どうやったって、この鋼鉄の独楽こまは打ち破れやしないよ! 強度が違うのさ! 強度が!」


 ぐ……確かに、マキの言うとおり。


 奴の独楽こまは鋼鉄の回転体! その強度は尋常じゃない! 


 どうやったって、俺の魔法じゃ……ん? 待てよ。


 鋼鉄? 強度?


 そうか! まだ打つ手はある!


「死にな! ルナァ! 」


 マキが猛獣使いのようにグリップから伸びるチェーンをビシッと地面に叩きつけると、それに連動して鋼鉄の独楽こまが、まるで意思をもった猛獣のようにギュイイインという唸りを上げて俺に襲いかかってくる。


 万事休すだ。


 もはや覚悟を決めるしかあるまい。


 俺は、自分のヒラメキを信じる!


「マキ……、お前に教えてやるぜ! この戦いに重要なのは、力の大きさじゃねえ! 力の使い方だぁ! 〝オクルス・メドウセム!〟」


挿絵(By みてみん)


「メデュゥアアアアアアアア!」


 メデューサの石化光線で、鋼鉄の独楽こまがみるみるうちに石へと材質を変えていく。


「何っ!? マキズ・ドルアムズが石に!? 畜生! こんな魔法まで持っていたのかい!?」


「落ち着くっピー! マキ! ただ鋼鉄が石に変わっただけだっピー! まだ独楽こまの回転は生きてるっピー!」


「わかってるよ、バーナード! 石に変わったって、何ら問題はない! このまま一気に潰してやるよぉ!」


 石に変わっても問題がないだと?


 馬鹿が! その判断の甘さを、身をもって後悔するがいい!


「〝マギア・テネブラム!〟」


挿絵(By みてみん)


 俺は闇の魔導波を、石の独楽こまに向かって放った。


「ふん! その魔法なら、さっき打ち負かしたばかりだよ! 今度も同じ結果さ!」


「それはどうかな!」


『いっけえええええええええ!』


 先ほどと同じ、力と力の激突。


 だが、今回は一瞬でケリがついた。


 ビシッ! ドゴオォォォォォ!


「何ぃ!?」


「ピィイイイイイイ!」


 マキとバーナードが目をむいた。


 石化した独楽こまにヒビが入ったかと思うと、次の瞬間には粉々に飛び散ったのだ。


「そんな! どうして! さっきは勝ったってのに!? どうして!?」


「石に変わったことで、独楽こまぜいせいが上がったのさ!」


「ぜいせい……?」


「物質のもろさ、つまりは破壊されやすさのことだよ! 石造りの建造物を取り壊すとき、クレーン車を使って鉄球をぶつけるだろ? 鋼鉄よりも、石の方がずっともろいんだ! 俺の石化魔法オクルス・メドウセムでお前の独楽こまは脆くなっていたんだよ!」


「ぐ……まさか、そんな魔法の使い方があったなんて……」


「しょげてる場合じゃないぜ? お前のステッキを見てみな!」


「? ……しまっ―― 」


 マキは目を見開いて絶句する。


 奴のステッキは柄から先が破損し、使い物にならなくなっていたのだ。


「それがマキズ・ドルアムズの――いや、近接武器全般の最大の弱点だよ。ステッキと攻撃が一体化しているから、攻撃を打ち破ることさえできれば、ステッキ自体を同時に破壊できるんだ!」


「くそ……」


 ふははははははははは! 


 これで……、


「形勢逆転だなぁ、マキィ!」


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