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外道魔法少女ルナ  作者: door
<第1部>
35/98

35. 魔法の応用

「〝アンデュ・ライティア!〟」

挿絵(By みてみん)

「〝デュア☆トランシア!」


 セレナの光の波動が、敵の出した魔法陣に吸い込まれる。


 コンマ数秒のタイムラグを挟んで、セレナの死角である背後に出現したもう一つの魔法陣から、先ほどの光の波動(アンデュ・ライティア)が放出された。


 呪文を放ったばかりで無防備な状態のセレナは、立ち尽くしたまま、どこにも逃げることができない。


「(ダメ! やられる!)」


 セレナが目をつむりかけた時――。


「〝デセル・クロノシオ!〟」


 来果は咄嗟に時間の動きをにぶらせる光線を、魔法陣から放出されたアンデュ・ライティアにかけた。


 この魔法は光線をかけている間、効力が持続する。


 来果が光線を当てるのをやめない限り、対象のスピードは数百分の一にまで落ちるのだ。


「セレナ先輩! 今のうちに早く!」


「〝ビアブルム!〟」


 箒で飛翔し、迫る危機を回避するセレナ。


 空中で大きく弧を描き、ピンチを救ってくれた仲間のもとへと舞い降りる。


「ふぅ~。間一髪でした。ありがとうございます、来果さん。おかげで助かりました」


「いえいえ。礼には及びません。同じ チームなんですから、これくらいのサポートは当たり前です」


「頼もしいですね。この調子で敵をやっつけますよ!」


「おお~!」


 団結し、士気を高めるメルヴィルの国の魔法少女二人。


 それに対し、敵国の魔法少女リカは苦虫を噛み潰したような顔で二人を睨みつけていた。


「せっかく一人消せたと思ったのに~☆ ちょ~ムカつく☆ やっぱ一人で二人の相手をするのはメンドイね☆ だったら~☆ 〝リカル☆テレピア!〟」


「っ!?」


 一瞬の内にリカの姿が消えた。


 どこに消えたか――。


 そんなことを考える暇もなく、セレナは背後に気配を感じた。


「後ろっ! 〝アンデュ……〟」


「残念でした☆」


 リカはセレナの右手首を強く掴んで、動けないように固定した。


 振り向きざまに魔法を打ち込もうとしたセレナだったが、ステッキを握る右手を固定されては、リカに魔法を当てることができない。


「(くっ……恐らく敵の狙いは私と来果さんの分断。瞬間移動の魔法(リカル☆テレピア)をもう一度使って私ごと、どこか別の場所に移動し、1対1の戦いに持ち込むはず。だったら、その前に!)」


 セレナは自分の一瞬の判断に賭けた。


「〝クラルティア!〟」


「〝リカル☆テレピア!〟」


 コンマ1秒、セレナの呪文が早かった。


 セレナが唱えたのは透明化魔法クラルティア


 これは術者、及び術者に触れていた者を透明化し、姿を見られないようにする魔法。


 だが、銀行強盗の事件で判明したように、この魔法にはデメリットもある。


 この魔法の恩恵を受けて透明化している術者以外の者は魔法が使えなくなるのだ。


 セレナは今、このデメリットを一瞬にしてメリットに変えてみせた。


 つまり、敵が自分に掴みかかっているこの状態でクラルティアを先に使用することにより、敵の後続魔法(リカル☆テレピア)を無効にしたのだ。


 その理屈が分かっていないリカは大いに混乱していた。


「ありえない! なんで瞬間移動しないの!?」


 ヒステリックに叫ぶリカの隙をついて、セレナは腹部めがけて思いっきり右膝蹴りを放った。


「ごふっ……」


 敵は苦しみのあまり、セレナの手首を掴んでいた手を緩めた。


 今が、最大のチャンスである。


「〝アンデュ・ライティア!〟」

挿絵(By みてみん)


「きゃあああああああああああ!」


 光の波動は至近距離でリカに直撃。そのまま彼女を十数メートル先まで弾き飛ばした。


「やった! やりましたね、セレナ先輩!」


 透明化を解いたセレナに、来果が駆け寄る。


「今のクラルティアの使い方はすごかったですよ! セレナ先輩! まるでルナ先輩みたいな機転の利きようじゃないですか!」


「ふふふ。ありがとうございます。でも、これ、実はルナさんに教えてもらった作戦なんですよ」


「え? そうなんですか?」


「ええ。あの銀行強盗の事件の後すぐに――」


『セレナ、クラルティアは結構使える魔法だ。確かに見方にとっちゃ、デメリットにもなるが、敵が自分に掴みかかっている時に使用すれば、相手の魔法を封じることができる。もしもそういう状況になることがあれば、その隙を突いて、至近距離から攻撃魔法を打ち込んでやれ!』


「――って、教えてくれたんです。それを思い出したんで、実践してみたんですよ。結果は見事に大成功でした」


「うーん、やっぱりルナ先輩は流石ですね! 廃病院の時もそうでしたが、魔法の応用力が半端じゃないです!」


 興奮する来果を尻目に、セレナは頭上に輝く月を見上げた。


「(そう。ルナさんは、ただデタラメに悪い人を魔法で成敗してきたわけじゃない。この戦いに勝ち残るため、自分たちの持てる魔法の力を200%引き出す実験をしていた。その実験の成果は、こうして着実に現れてきている。この戦いは、単に強力な魔法を持っている者が勝つわけじゃない。大事なのは魔法の使い方。いつ使うのか。どう使うのか。それを適切に指示してくれるルナさんは、もはや私たちの国になくてはならない司令塔。今、ルナさんはさっきの場所でもう一人の魔法少女と戦っているはず。……絶対に負けないでくださいね)」



   ☆☆☆☆☆



<一方、ルナとマキは――。>


「はぁはぁ……」


 やばい。敵の鉄球の攻撃が思ったよりも効いてきやがった。


 傷口がジンジン痛みやがる。


「おやおや、もうバテちまったのかい?」


 くそっ!


  敵が喰らったダメージといえば、闇の魔導波(マギア・テネブラム)が倉庫にぶつかった時の衝撃波によるカスリ傷くらい!


 これがゲームなら、残りHPに差がありすぎるぜ!


「はぁはぁ……」


「ふん。まあいいさ。殺っちまう前にアンタに一つ訊きたいことがある」


「訊きたいこと……?」


「紫苑総合病院って、廃病院に集まってた不良どもを殺したのはアンタ達かい?」


「な――」


 どうして、こいつがあの病院のことを――?


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