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外道魔法少女ルナ  作者: door
<第1部>
27/98

27. 外道魔法少女VS銀行強盗

 廃病院で不良どもを殲滅した後も、俺は魔法の力を調べ、実戦に役立てる実験を続けた。


 もちろん、善良な市民を無差別に殺戮するのは、俺のモラルに反するため、実験体は、犯罪者等の〝社会悪〟に限定してある。


 実験のついでに、街の平和を守ってあげよう、というわけだ。


 魔法少女ってのは、そういうもんだろ?


 実験の中には、なかなか面白く、スリリングなものもあった。


 例えば、これはセレナと来果と俺の三人(+メルヴィル)で、街を歩いていた時のことなんだが……。


 来果を仲間に引き入れて以来、俺たちはできる限り三人で行動するようにしていた。


 いつ敵と遭遇するかわからない以上、国の兵力は一箇所に固めておいた方がいい。


 数の上での優位は、勝率を何倍にも引き上げるからだ。


 もちろん、これは下手をすれば、一気に全滅してしまう危険性をも孕む作戦だ。


 しかし、全滅を恐れてバラバラに行動すれば、敵の国が複数で襲ってきた場合、間違いなく負ける。


 一人が負ければ、国の領土が減り、生き延びた仲間も、その後、不利な戦いをすることになる。


 それに、俺たちは、もはや運命共同体。死ぬと時は皆、一緒と覚悟を決めた。


 だから、俺も不登校をやめ、ちゃんと学校に行くようにしたし、すぐに連絡が取れるよう、携帯の番号も交換してある。


 さらに……。


「それにしても、ルナさんってホントなんでもできるんですね」


 街を歩いている途中、セレナは、さっき俺が渡したブレスレットを観察しながら、そう言った。


 市販のブレスレットを改造して作ったそれには、ちょっとした機能が備わっている。


 装飾の部分がボタンになっていて、それを三回押すと、仲間のブレスレットを振動させ、SOSメッセージを発信することができるのだ。


 加えて、小型発信機も取り付けてあるので、スマホを使えば、その仲間が現在どこにいるのかも、すぐにわかる。


 これで万が一、単独行動をしている時に敵に襲われても、すぐに応援が呼べるというわけだ。


「少し苦労したけどな。この戦いのルールを聞いた時から、こういうアイテムは必須だと気づいていたんだが、機械の構造とかを一から調べていたせいで、完成するのに今までかかっちまった」


「いやいや、こんなの作れるだけでもスゴイですって!」


「ホント、さっすがルナ先輩! ア○サ博士もびっくりの発明です!」


 どうやら、二人共、気に入ってくれたようだ。


 というか、来果よ、俺が本当にあの博士並みのものを作れるんなら、麻酔針を発射できる腕時計は絶対に作るぞ。


 あれがあったら、いろいろ便利だからな。


 だが、あいにく俺は漫画の登場人物ではないので、そんなものまでは作れない。


「魔法少女は単独行動をしている時に敵に襲われるのを最も怖れるとは聞いていたワンが、こんなものまで作って対策を練ったのは、たぶんルナが初めてだワン」


 と、メルヴィル。


「だとしたら、今までの魔法少女は相当なマヌケか能天気だな。命懸けの戦いなんだ。このくらいして当然だ」


 まあ、科学技術が進歩した現代だからできる対策というのもあるだろうが……。


 そこまで考えて、ふと俺は、メルヴィルが語る過去の戦いっていうのは、一体どれくらい前の事なんだろうという疑問を抱いた。


 バビロンやメルヴィルの口ぶりからすると、過去にも何度かこの戦いは行われていたようだが、それは一体いつ頃から行われていたのか。


 前回の戦いはどのくらい前のものだったのか。


 そして、戦いが終わった後、勝利した国の魔法少女たちは一体どうなったのか。


 考えてみれば、そのあたりのことはずっと謎のままだった。


 戦いや実験に明け暮れていたせいで、気にする暇も無かったというのが正直な話だが……。


 いい機会だ。この際、メルヴィルに訊いてみるか。


 そう思って口を開きかけたが、来果の言葉がそれを遮ってしまった。


「あっ! いっけない! 来果、お母さんに銀行でお金振り込んでくるように頼まれていたんでした!」


「え? もう二時半ですよ。早く行かないと窓口閉まっちゃいますよ」


 セレナが腕時計を見て言った。


「じゃ、じゃあ、ちょっと近くの銀行に行ってもいいですか?」


 こうして、俺たちは走って銀行まで行くことになった。


 まあ、メルヴィルには今度ゆっくり訊いてみることにしよう。


 銀行に動物を連れて入るわけにはいかないので、セレナとメルヴィルは外で待ち、俺と来果は銀行に入った。


 来果が整理券を取って、順番待ちをしている間に、俺はトイレに向かった。  


 実は、ずっと尿意を我慢していたのだ。


 用を足し終え、手を洗っていると、トイレの外から、いきなり、


 バン!


 という破裂音がした。


 その直後に、


「キャアアアアアア!」


 という女の悲鳴。


 そして、それに続いて、


「静かにしろ! 全員、両手を挙げて、壁際に立て! 早くしろ!」


 という男の怒鳴り声。


 おいおい……。


 これって、まさか……。


 俺はゆっくりとトイレから出て、壁に身を隠しつつ、持っていた手鏡で、行内の様子を確認した。


 覆面をかぶった男が、拳銃を行員に突きつけ、アタッシュケースに現金を入れさせている。


 他にも、覆面姿の男が、二三人見えた。


 銀行強盗。


 その四文字が頭によぎった。


 マジかよ……。


 俺は震えていた。


「興奮するじゃねえか。こんな良い実験ネズミが自分からやって来てくれるなんて。実戦訓練にはちょうどいい。あいつらをどう血祭りに上げるか考えるだけで、ワクワクするぜぇ」


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