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外道魔法少女ルナ  作者: door
<第1部>
22/98

22. ルナが眠っている間の出来事②

最新話の方の更新はしばらくお待ちください。

「この本の中から好きな呪文を選んで、ステッキに登録してください」


 セレナは例の呪文集を床に広げた。


 場所は変わらず、ルナの自室。


 学校の裏山や採石場に場所を移すことも考えたが、外で派手に魔法を使うと、また敵に襲われる危険があるので、セレナは敢えて安全な室内にとどまることにした。


「えぇ!? こんなわけわかんない文字、読めませんよ! 来果、ただでさえ英語も古文も苦手なのに……って、あれ? 魔法陣の盾を出す呪文〝シルディア〟……登録方法は杖をひざの上に置き、以下のスペルを詠唱……。読める!? 来果もしかして天才かも!?」


「別に天才じゃないのワン。その文字は魔法少女なら誰にでも読めるのワン」


「なーんだ、びっくりした。来果、自分がいきなりルナ先輩みたいな天才少女になっちゃったのかと思った。ええと、それでセレナ先輩? 好きな呪文っていっても、いっぱいありすぎてわかんないんですけど」


「自分が使いたいと思うものでいいんですよ。あ、でも、来果さんの属性は〝時〟ですから、そのタイプに合った専用魔法か、誰でも使える汎用魔法しか登録はできませんが……」


「えーと……じゃあ、これ!  火の呪文・フォイエル! なんかすごい強そう!」


「私の話、聞いてました!? 来果さんの属性じゃ、火系統の魔法は登録できないんですって!」


「うーん、なんかその属性っていうんですか? 正直、未だによくわからないんですよね。あれですか? 特定の性質をもった女の子キャラにオタク男性がひどく興奮を覚えるという。だったら、来果は〝後輩〟と〝ツインテール〟という極めて強力な二つの属性をもっていることになりますが……」


「その属性じゃありません! RPGとかに出てくるエレメントとかの属性の方ですよ! だいたい後輩ツインテール属性の魔法って、どんな魔法ですか!」


「〝勘違いしないでよね! 別に先輩のことなんか好きでも何でもないんだからね!〟 ……この呪文・・を後輩ツインテール女子が唱えることにより、たいていの男性は落とせます」


「もはや魔法でも何でもないですね!」


 その後も来果のボケなのか本気なのかよくわからない発言に対し、セレナがツッコミをいれるという不毛極まりない時間が過ぎ、ようやく話が本題に戻ったのは、最初に呪文集を開いてから十五分後のことだった。


「とりあえず、属性の説明は以上です。わかりましたか?」


「はい。バッチリです」


 返事だけは良い来果である。学校の授業でも、いつもこんな感じだ。


 出来の悪い生徒を持った家庭教師のような気分になりながら、セレナは呪文集をパラパラとめくった。


「とりあえず、この辺りが時間系等の魔法が載っているページです。マイナーな属性なので、数は少ないですが、効果は強力なものが多いですよ」


「本当ですか!? よーし!」


 打って変わって、ものすごい集中力で該当ページを読みあさる来果。


 その瞳が、ある呪文をとらえる。


「こ、これは便利な魔法ですよ! セレナ先輩!」


「どれですか?」


 セレナが呪文集を覗き込むと、来果の人差し指の爪の先に、以下のような呪文が記載されていた。


 対象の時間の流れを加速させる呪文:クセル・クロノシオ


「確かに便利そうな呪文ですね。味方にかければ、動きを早くすることができそうです」


「ちっちっち。甘いですね、セレナ先輩」


 来果はわざとらしく指を振った。


「まあ見ててください」


 と、呪文集に書かれた登録手順に従い、スペルを詠唱する。


 それが終わると、ステッキが強い光を発し、やがて収束した。


「これで呪文の登録が完了したんですよね? セレナ先輩」


「はい。あとは呪文を唱えればいつでもその魔法が使えます。でも、その時間加速の魔法で一体何を?」


「ふっふっふ。ちょっと待っててください」


 来果はそう言うと、部屋を出て一階に向かった。


 かと思えば、すぐに戻って来た。


 その手には、ルナの母に貸してもらったのか、カップ麺と電気ポットが握られている。


「…………」


 嫌な予感しかしないセレナを尻目に、来果は自分が元いた場所に陣取ると、


「ここにカップ麺があります」


 床にカップ麺を置く。


「お湯を注ぎます」


 ポットのボタンを押し、容器をお湯で満たす。


「普通なら三分待つまで食べられませんが、この呪文を使うと、あら不思議!」


「〝クセル・クロノシオ!〟」


「すぐに食べられるのです! ズルル……おいしい!」


「壮大な魔法の無駄使い!」


 セレナの批判も何のその、来果の暴走はとどまる事を知らない。


「こ、これは! 対象の時間の流れを遅くする呪文・デセル・クロノシオ……。こ、これを使えば! 夢にまで見たあんなことが!」



 ルナにデセル・クロノシオをかける。


     ↓


 動きが遅くなったルナに抱きつく。


     ↓


 スカートをめくる。


     ↓


 ※自主規制



「うへ……。うへへへへ……」


「今、来果さんが何を妄想しているか、何となくわかりますが、それやったら後で即死魔法かけられますよ」


 その後もセレナの気苦労が耐えない事態は続いたが、なんとかその日の内に呪文の登録作業を終えることができた。


 ルナが目を覚ましたのは、それから二日後のことだった。

オマケ:呪文紹介コーナー


今週の呪文

 クセル・クロノシオ: 対象の時間を加速させるぞ。

 デセル・クロノシオ: 対象の時間を減速させるぞ。


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