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外道魔法少女ルナ  作者: door
<第1部>
17/98

17. 決着をつけようか

「来果……お前、どうして?」


 目をパチクリさせながら俺が尋ねると、来果の足元からヌッとリスが現れた。


「僕が頼んだんだワン。ルナとセレナを助けてほしいって。そしたら、来果は喜んで協力してくれたワン」


「喜んで? 本当なのか、来果? 上手いこと言われて、このリスに騙されているんじゃないのか?」


「ちょ……人聞きの悪いこと言わないでワン! 前にも言ったワンが、ちゃんと戦いのことを説明した上で、女の子の同意がないと、僕らは魔法の力を与えてはいけないのワン」


 どうだかな。


 お前はイマイチ信用できない。


「メルちゃんの言うことは本当ですよ、ルナ先輩。来果はルナ先輩を助けたい一心で、この戦いに参加したんです」


 ……そうか。


 こいつはこういう奴だったな。


 妙に納得しちまうぜ。


「いいのか? 命懸けの戦いになるんだぞ?」


「ルナ先輩のためなら、来果はどこまでもついていきます」


 ……頼もしいじゃないか。


 ちょっと俺の中でこいつに対する好感度が上がったぞ。


「とにかく、おかげで助かった。ありがとな、来果」


「る、ルナ先輩が来果に感謝してくれる日が来るなんて……! 来果、感動でむせび泣きそうです……! 来る日も来る日も、ルナ先輩は来果を邪険にあしらっていたというのに……!」


「うんうん。こんな先輩思いのいい子を今までぞんざいに扱ってたなんて、ルナは鬼畜だワン。阿修羅だワン」


 ……こいつら。


 おっと、今はこんな馬鹿話をしている場合じゃない。


「来果、敵はお前の魔法で動きが止まっているが、あれは対象の時間を止める魔法なのか?」


「はい。でも、それだけじゃないですよ。10分だけですが、あのオレンジの球体内部の時間を止めたり、戻したり、進めたりできるんです。ただ、この魔法を使用中は、内部への攻撃が一切できないのと、来果自身、この魔法を発動中は他の魔法が一切使えないのが難点ですけどね」


 強力な効果故に、制限も大きいってわけか。


「10分か……。それは10分経たなくても、来果の自由意思で魔法の解除ができるってことでいいのか?」


「あ、はい。解除は来果の意思でいつでもできます」


 ……これは使える! 見えたぞ! 逆転の一手が!


「来果、とりあえず、あいつを止めたまま、俺たちはあそこの岩陰に隠れるぞ。セレナ、お前も早くこっちに来い! 作戦だ!」


 途中でセレナのステッキを回収しつつ、三人+リス一匹で岩陰に移動。


 口頭で作戦を伝え、いざ、ミッションスタートだ。



   ☆☆☆☆☆



蒼井あおいみおは目の前の光景に愕然としていた。


「……消えた?」


 それは一瞬の出来事だった。


 澪がまばたきしている間に後一歩の所まで追い詰めた敵の魔法少女の姿が消えていたのだ。


 いや、彼女だけではない。


 彼女と一緒に戦っていたもう一人の魔法少女までもどこかへ消えている。


「逃げられた。せっかく見つけた敵なのに……」


 クールな澪の顔に、苛立ちが浮かぶ。


「私は早くこの戦争を終わらせなきゃいけないのに……」


 唇を噛み締めながら、澪の意識は過去へと逆行していった。


 きっかけは、ある精霊との出会い。


 三週間前、澪の前に現れた精霊は、澪に人間界を舞台にした精霊界の代理戦争のことを語った。


 魔法少女になれば、人知を超えた力を手に入れられること。


 但し、そのためには命懸けの戦いを勝ち抜かなければならないこと。


 全てを承知した上で、澪は魔法少女になった。


 別に、人知を超えた力とやらに興味があったわけではなかった。


 なるより他に仕方なかったのだ。


 澪には一人親友がいた。


 幼稚園からずっと一緒の、かけがえのない友達だった。


 ある日の放課後、澪がその子と一緒に帰っていると、突然、二人の前に奇妙な格好をした少女が立ちはだかり、ステッキを向けて攻撃してきた。


 親友は澪に伏せているように言うと、呪文を唱え、攻撃を加えてきた少女と同じような格好に変身した。


 その子は澪よりも先に精霊と出会い、魔法少女になっていたのだ。


 戦いは佳境を迎え、親友は追い詰められた。澪はどうすることもできず、ただ隅で震えていることしかできなかった。


 そんな澪の傍に現れたのは、澪がずっと親友のペットだと思っていた動物だった。


 その動物こそ親友を魔法少女にした精霊だったのだ。


 精霊は澪に加勢を求めた。


 澪の親友は既に別の魔法少女を一人倒しており、精霊にはもう一人魔法少女を増やすためのマナ・クリスタルがあったのだ。


 親友を救うため、澪は魔法の力を得た。


 しかし、遅かった。


 澪が変身してステッキを構えた時には、親友は既に殺され、敵はどこかへ去った後だったのだ。


 それ以来、澪は全てを憎むようになった。


 精霊も、魔法少女も、親友を救えなかった自分さえも……。


 残ったのは魔法少女としての力のみ。


 澪はそれを使って親友の復讐を誓った。


 親友を殺した魔法少女を見つけ出し、殺す。


 そして、この馬鹿げた戦争をすぐに終わらせる。


 そのために、他の魔法少女を探し周り、片っ端から戦いを挑むことにした。


 澪は別の魔法少女を一人倒している。


 よって、彼女には仲間の魔法少女が一人できたのだが、どうにも馬が合わない。


 故に戦いをする時はいつも別行動。


 親友を戦いに巻き込んだ精霊を澪は嫌っているため、精霊の面倒はいつもその仲間の少女に任せている。


 だから、澪はいつも一人だ。


 この街で敵を見つけたのは、一昨日のニュースがきっかけだった。


 この近辺の路地裏で、一人の少女の遺体が発見されたと、そのニュースは報道していた。


 少女には目立った外傷がなく、死因はショック死。


 そのむらあかねという少女の遺体の側にあったゴミ箱の中からは、犬のような新種の動物の遺骸も見つかり、こちらもショック死ということだった。


 澪はすぐに魔法少女の仕業だと気づいた。


 そこで、その路地裏を中心に、周辺の街をシラミ潰しに探し、とうとうこの採石場で二組の魔法少女を見つけた。


 どちらも親友を殺したかたきではなかったが、戦争を集結させるにはこの少女たちを倒すしかない。


 こうして、澪はルナとセレナに攻撃を放ったのだった。


「……逃げられたのは残念だけど、あの女じゃなかったから、許容範囲内」


 回想を終え、澪が採石場を離れようとしたまさにその時――。


「待たせたな。決着をつけようか」


 岩陰から、消えたと思っていた魔法少女が現れた。

オマケ:呪文紹介コーナー


・今週の呪文

 ライカン・クロノシオ: 対象一人を〝時間操作の結界〟の中に閉じ込めるぞ。術者は結界内部の時間を10分の範囲で止めたり、戻したり、進めたりできるぞ。ただし、強力な効果故に、制限も大きく、結界内部にいる相手には 外からの攻撃は効かず、術者はこの魔法を使用中、他の魔法を一切使えないぞ。


・次回の更新は一週間後を予定しております。感想・評価・レビューなどをいただけると、大変うれしいですし、励みになります。

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