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外道魔法少女ルナ  作者: door
<第1部>
15/98

15. 絶対零度領域の呪文

「〝ルーナ・モルテム!〟」


 全身全霊、全てをかけた一撃。


 それを放った刹那、俺はゾクリと身体に悪寒が走るのを感じた。


 俺の蛇どもに身体を雁字搦 (がんじがら)めに拘束されながら、敵の少女は冷笑を浮かべていたのだ。


「ギャアアアアアアア!」


 直後、奴の口を塞いでいた一匹の蛇が悲鳴をあげた。


 猿ぐつわのように口に巻き付けていた胴体を思いっきり噛まれたようだ。


 痛みに耐えかねた蛇は締め付けを緩め、もだえ苦しむ。


「(馬鹿が! なんでもっとちゃんと塞いでおかない! 今、口の拘束を解かれるとマズいんだ!)」


 もしも、あいつにまだこちらに見せていない魔法があったなら――。


 そして、もしもそれがセレナの 回復魔法 (レフェクティオ)のように、ただステッキを握ったまま呪文を唱えるだけでいいような魔法だったとしたら――。


 そんな俺の予感は、直後、現実の物となってしまったのだった。


「〝ミオノ・フリガレイド!〟」


 呪文と共に、敵の少女が光球に包まれる。


 俺の放った即死魔法は、その光にはじかれ、無残にも消し飛んだ。


 いや、それだけじゃない。さっきまで敵を捕縛していた俺の蛇どもも、まるでガラスのように全身にヒビが入り、破砕。銀色の塵となって霧散した。


「蛇が全滅……? 一体どうして……。生き物の体がこんな風に壊れるはずが……っ! そうか! 凍らせてから砕いたのか!」


「正解。これが私の一番強い魔法。私の周りに絶対零度領域の球体を発生させ、その内部にいる私以外の物体を全て凍らせる。冷気のバリアの役割も兼ねているため、敵の攻撃魔法からも身を守ってくれる。あなたの呪文がはじかれたのも、それが原因」


「それはそれは。わかりやすい説明をどうもありがとう」


 ……なんて、皮肉を言ってる場合じゃない。


 俺の考えが正しければ、これはとんでもない魔法だ。


 今のこいつは、いわば全身武器。


 光球の半径は約1メートルってところだが、あの中に入ったら、蛇どもと同じ運命!


 即、凍死だ!


 ならば、あいつのとる行動は一つ。


「これで終わり。私があなたたちの身体に触れたら、アウト」


 そう。ようするに、命をかけた鬼ごっこの始まりってわけだ。


「セレナァ! 全速力で逃げろぉ! あの球体に引きずり込まれたら死ぬぞぉ!」


「えええええ!? 〝 び、ビアブルム!〟」


 セレナの箒に二人で跨り、大空へ回避。


 ところがどっこい、敵も宙に浮いているため、追跡が可能。当然のように追いかけてくる。


 唯一の救いは、こっちのほうがスピードがあるってことだが、セレナのダメージを考えると、いつまで逃げきれるかわからない。


 くそ……ならば!


「〝マギア・テネブラム!〟」


 ダメもとで攻撃魔法を打ち込むが、こんなスピードで逃げながら、動く標的に狙いが定まるはずもない。当たり前のようにかわされた。


 ど、どうする……?


 俺の使える魔法は全部で五つ。


 飛行魔法のビアブルム。


 蛇を呼び出すアンギ・フーニス。


 石化魔法のオクルス・メドウセム。


 闇の魔導波を放つマギア・テネブラム。


 そして、当たりさえすれば無敵の即死魔法、ルーナ・モルテム。


 ルーナ・モルテムとアンギ・フーニスはあの絶対零度の球体には効果がないのは実証済み。


 マギア・テネブラムは今さっきかわされた。


 ならば、消去法でこいつを試してみる価値はある! 


 この魔法はマギア・テネブラムよりもスピードがあるから、敵の回避率は落ちるはず!


「〝オクルス・メドウセム!〟」


「メデュウアアアアアアアアアアアア!」


 空中に召喚したメデューサの目から出た石化光線が敵に命中した。


 しかし、当たったはいいものの、冷気のバリアとやらにはじかれ、ルーナ・モルテムと同じく、その場で霧散した。


「くそ! やっぱりこの魔法じゃダメか!」


 残る手段は、俺がビアブルムを使って、セレナと箒の運転を交代し、攻撃をセレナに任せることくらいだが、これも上手くいく保証はない。


 セレナの魔法は多分全部見てきたけれど、こう言ってはなんだが、こいつの魔法は数が多い分、その殆どが弱小呪文だ。


 それらを何とか組み合わせて敵の光球を破壊出来る方法があればいいんだが、今のところ、そんな方法は思いつかない。


 ちくしょう。万事休すとはこのことだ。


 いったいどうすれば……。


   ☆☆☆☆☆


 ルナとセレナが敵とデスチェイスを繰り広げていた頃。


 時峰来果は辺りの喧騒で目を覚ました。


「はっ! 来果はこんなところで一体何を! ……あ、そうか。確か、ルナ先輩に採石場に連れてこられたんだ。それで、ルナ先輩がいきなり魔女っ子に変身したかと思ったら、空を飛んだり、岩を爆発させたりしていたような……」


 来果がキョロキョロ辺りを見回すと、遠くの方で、箒に乗ったルナたちが光球に身を包んだ少女に追いかけられていた。


 三人とも、しっかりと空を飛んでいる。


「わー。ルナ先輩たち、お空で追いかけっこしてる。ダメだなぁ、来果、まだ夢の中にいるみたい。もう一度寝よ」


「夢じゃないワン!」


「うわああああああ!? り、リスが喋った!?」


 突然目の前に現れたメルヴィルに来果はひっくり返らんばかりに驚いた。


「リスじゃないワン! 僕はメルヴィル。ルナとセレナの精霊だワン!」


「せ、精霊……?」


「そうだワン! 詳しいことは説明してる暇がないワンが、ルナとセレナがピンチだワン! 助けて欲しいワン!」

オマケ:呪文紹介コーナー


今週の呪文

 ミオノ・フリガレイド: 術者を中心として、半径1メートルの絶対零度領域の光球を構築するぞ。この球体の内部に入った術者以外のものはたちまち-273.15℃の冷気で氷結させられるぞ。


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