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外道魔法少女ルナ  作者: door
<第1部>
14/98

14. ルーナ・モルテムの欠点

先週は更新できずに申し訳ありません。

「〝ルーナ・モルテム!〟 」


 ステッキの先から出たドス黒い影が敵に襲いかかる。


 屈強な男も、獰猛なライオンも、この攻撃を食らえば、たちどころに息絶える。いかなる生物をも即死させる俺の最強呪文だ。


 これで俺たちの勝ち……。


「〝シルディア〟」


 迫って来る呪文に気づいた敵は、攻撃から身を守るべく、盾の呪文を発動した。


「ハッ、馬鹿が! その程度の下級呪文で俺のルーナ・モルテムが防げるとでも……」


 俺がそう言ったのも束の間、信じられないことが起こった。


 バシュン!


 何かが弾けて消える音。


 しかし、消滅したのは敵でも、敵の出した盾でもなかった。


 弱い防御呪文ごとき、一撃で粉砕するかと思っていた俺の呪文が、敵の盾に触れた瞬間、あっけなく霧散したのだ。


「な……」


 俺のルーナ・モルテムが防がれた?


初級の防御呪文(シルディア)ごときに?


 馬鹿な!? あの盾、それほどの強度なのか……?


 ……いや、違う。


 あいつはさっき、セレナの光の波動(アンデュ・ライティア)を食らった時もシルディアを使っていた。


 だが、その時、セレナの呪文で盾は破壊され、あいつはダメージを負っていたはず。


 つまり、不等号で力関係を表すと、


 セレナの呪文>敵の盾>ルーナ・モルテム


 ってことになる。


 そんな馬鹿な……。一体どういう……。


「ルナさん! 何ボーッとしてるんですか! 来ますよ!」


 セレナの声でハッと我に返った。


 見ると、敵は既に盾の呪文を解除し、ステッキをこちらに向け、反撃の態勢を整えている。


「〝ギアル・フリジア 〟」


「セレナ! 全速力で逃げろ!」


「はい! しっかり(つか)まって てくださいよ!」


 セレナが後ろに俺を乗せたまま箒を急発進させ、紙一重で敵の冷凍光線を回避。空中でUターンし、敵を攻撃射程圏内に入れる。


「今度こそ終わりだ!」


 死ね!


「〝ルーナ・モルテム!〟」


「〝ジャベル・アイシア〟」


 敵が迎撃に放ったのは巨大な氷の槍だった。


 長さにして2メートルはある。


 その槍はルーナ・モルテムをいとも簡単に突き抜け、俺とセレナに迫ってきた。


 ま、また敵の呪文に力負けした!?


 なぜだ? なぜルーナ・モルテムが……。


 っ! そうか! そういうことか!


 俺はある重要なことに気づいたが、目の前の危機はまだ去っていなかった。


 俺は呪文を放ったばかりで、迎撃できないし、セレナは飛行呪文を使っているから、他の呪文は使えない。


 対抗手段のない俺たちは氷の槍に二人まとめて跳ね飛ばされた。


「ぐはっ……」


 地面に叩きつけられ、一瞬意識が飛ぶ。


 何とか立ち上がるが、もう一発くらったら確実にヤバイってのが感覚でわかる。


「ルナさん、大丈夫ですか?」


 セレナが脇腹を手で押さえながら、よろよろ歩いてくる。


 どうやら、こいつもかなりのダメージを負ったみたいだ。


「すまん、セレナ。俺のせいでお前まで」


「いえ、これくらい大丈夫です。でも、まさかルーナ・モルテムが全く効かないなんて……」


「いや、効かないんじゃない」


「え?」


 ポカンとするセレナに、俺はさっき気づいたことを話した。


「おそらく、ルーナ・モルテムは呪文自体の攻撃力がゼロなんだ。だから相手の攻撃呪文や防御呪文に当たると、あっさりかき消されちまうのさ」


「そんな……」


「盲点だったよ。人や生き物を一撃で殺せる呪文だから、てっきり威力も相当高いものだと思い込んでいた。でも、こいつは直接相手の身体に当てないと全く意味がない呪文だったんだ」


 クソ……こんな簡単な事に今頃気づくなんて、俺は馬鹿か!


 アカネ戦以降、今まで一度も使っていなかったってのもあるが、こればかりは俺の考えが甘すぎた。


 最強の呪文が聞いて呆れるぜ。


「ど、どうします? 私もルナさんも、殆ど満身創痍な状態です。このままだと……」


「安心しろ。まだ手はある」


「え?」


「とりあえず、セレナはあいつにアンデュ・ライティアを打ちまくってくれ」


「アンデュ・ライティアを? でも、この距離で打っても、かわされちゃいますよ」


「大丈夫だ。俺を信じろ」


「何か考えがあるんですね? わかりました」


 セレナは頷くと、さっそく敵に向けてステッキを構えてくれた。


「〝アンデュ・ライティア!〟」

挿絵(By みてみん)


 この呪文の威力は、敵も一度食らっているからよく知っているはず。


 今までのあいつの攻撃魔法の中で、これより威力の高いものはなかった。


 それに加え、この距離ならば、呪文による迎撃は考えず、普通に避けるのが無難。


「く……」


 案の定、敵は真横に移動して攻撃を回避する行動に出た。


 よし、思い通り!


「セレナ!」


「はい! 〝アンデュ・ライティア!〟」

挿絵(By みてみん)


 そう。こうやってセレナがでかい攻撃を連打すれば、それに集中する。


 ドッジボールの守りみたいなもんだ。当たってはいけないと必死になり、自然とボールにのみ意識を集中するようになる。


 そこで俺がこの呪文で、敵を絡め捕る!


「行け! 蛇ども! 〝アンギ・フーニス!〟」

挿絵(By みてみん)


 地面から無数の蛇が胴体を伸ばし、敵に突進する。


「フシャアアアアアア!(ルナ様の為に~!)」


「…………!」


 敵は蛇どもに気づき、迎撃しようとステッキを構えるが、


「〝アンデュ・ライティア!〟」

挿絵(By みてみん)


 セレナの攻撃魔法がそれを許さない。


 やむを得ず、敵は更に上空へ逃げる。


 しかし、俺の蛇どもは変幻自在。上空まで身体を伸ばし、敵を追いかける。


 もちろん、蛇だけならば、集中すれば全部さばき切れるだろう。


 しかし、セレナの大技にまで気を配りながら、多彩な動きをする蛇どもから逃げるのは不可能だ。


「よし、そのままそいつを絡め捕れ!」


「フシャアアアアアア!(ルナ様の仰せの通りに!)」


 俺の命令に従い、蛇どもは一気に敵の四肢に絡みつき、身動きがとれないよう、ガチガチに拘束した。


 ステッキを持つ右手は愚か、指一本動かせない。


 よし、あとは……。


「アンギ・フーニスよ、呪文を唱えられないよう、奴の口元に巻き付け! 」


「フシャアアアアアア!(御意!)」


「もが …………! ?」


 これでこいつは攻撃呪文も防御呪文も使えない!


 これで決まりだ!


 今度こそ……


 死ね!


「〝ルーナ・モルテム!〟」

オマケ:呪文紹介コーナー


今週の呪文

 ジャベル・アイシア: ステッキから氷の槍を発射するぞ。


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