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原因は庭ではなく貴方でした ≪1≫

このパートが、思ったより長くなってしまったので、二つに分けました。


今回はやっとマリエルの背景が少し(少しかいっ!)わかりますが…

読むのが面倒だったら、ごめんなさい。

「ヨルゲン子爵令息トール様…わたくしより、7歳上ですのね。なるほど……あぁ、うちの領地の西側を新しくお買いになった御家ですのね。確か…ミルマン男爵が財政破綻により売りに出す、とお父様が仰っていた土地のことですわね…何故か売却情報がもたついて、うちとしては珍しく購入話に乗るのに出遅れた、と腹を立てていらしたような……なるほど、立派な政略結婚としてお互い役に立つお方ですわね。…んーでも…マリエル・ヨルゲンって、ちょっと間の抜けた響きになりますわねぇ…」


 のほほんと籠からケーキを取り出しながら、兄が渡してきた書類を読む。


 ウィルフォード公爵家は立国以来の古い家柄の一つである。

 元々が王弟の臣籍降下により出来た大公爵家(今はただ公爵家としか言わなくなったのだが)の為、その後も王家とは関係が深く、姻戚関係も度々結ばれている。

 そのため、王に忠実たらねばならない宰相職にウィルフォード公爵家が就くことも多く、事実現当主であるマリエルの父も宰相で、息子マリウスもその後に続くだろう。


 その家格のおかげで、あまり評判よろしくない趣味(世間は趣味とは思っていないだろうが)にマリエルが耽っていても、世の中から悪く言われずに済んでいる理由の一つとなっている。

 実際、マリエルは熟慮の末に婚約相手はウィルフォード公爵家と同等の公爵家や、格下の侯爵家からすらも選ばず、さらに爵位の低い伯爵家以下からしか選んでいない。

それは家名を傷つけたくないマリエルにとって、大事な選択基準の一つだった。


 実のところ、そうやって多くの申し込みの中から選んだ手紙だけを、今は父と兄に見せていた。おそらく父達もそれは分かっているのだろうが、マリエルが外した人間は問題外として自由にさせてくれていて、そのことをマリエルも分かっていた。

その辺りも、娘に甘い一家だと言える。

 さらにマリエルは、自身の家名が持つ権力を自分が利用していると十分理解していたし、そのことに密かな罪悪感も持っていた。


 というのも、今でこそウィルフォード公爵令嬢は『婚約』はするものの、婚姻するつもりはないらしい、と言うのが定着しているが、最初の婚約者はそんなことを考えもしていなかったために(それが普通なのだが)とても傷つけてしまったからだ。

 この経験はマリエルに深く反省をさせたが、二人目も同じ結果になってしまった。


 とはいえ、それだけ深く傷つけておきながら、二人がマリエルを悪く言わなかったのには理由(わけ)がある。

 彼らが本気でマリエルを想っていたことと、その想い故に気づいてしまった彼女の中にある『重い痛み』を、自分ではどうしようもできないことに思い至り、彼女を泣く泣く諦めたからなのだが、マリエルにはそこまでの理解はできていない。

 むしろ、二人のその想いと気遣いに心から感謝したマリウスと宰相は、二人をそれぞれに合った役職へ引き立てた。今後の邪魔をしないように最低限の後押しをしただけだったが、その結果しっかりと成果を上げ、彼らは大きく出世した。

 これは、二人の真面目さと心根の良さ所以(ゆえん)だろう。


 一方、マリエルが二人への反省を込めて対応しようと決めた三人目が選ばれたのは、マリエルが本当に趣味で『婚約破棄』をしているなど、家族からもまだ認められていなかった頃だった。

そのため、今度こそ良縁を、と力を入れて選ばれた相手は、遍歴の中で唯一高位家から選ばれた侯爵家四男だった。


 実は、前の二人へ上手く対応できなかった自分に嫌気が差していたマリエルは、この政略婚を受け入れるしかないような気にさせられていた。

 本当の婚姻関係となったら、自分は早々に見捨てられるだろう。でも相手が公爵家の後押しと血筋を求めているのなら、用さえ済めば放っておかれるくらいで済む筈だ、とも考えていた。

公爵一家及び親戚一同から溺愛されていると有名な令嬢なのだから、闇に葬るより妻という人質として生かされるだろう、と思っていたのだ。


 ところがそこで問題が起きた。

侯爵家四男について、真しやかな噂がいろいろと流れ出したのだ。

 女性問題から人身売買、果ては国家反逆罪まで、決してデマと茶化せる内容ではなかった。そして驚いたことに、それらは概ね事実だったのだ。

 彼は上手に隠していたが、残念ながら最後まで隠しきることはできなかった。

 事が公になると、むしろマリエルに同情が集まった。

婚約者本人は、公爵家を利用して国を謀ろうとした極悪人、として裁かれ死罪。

侯爵家は直接関わりが無かったものの、親としての責任有りとして男爵への降爵位となり、領地の半分を国へ返還とすることとなった。

 さらには父と兄まで、世間一般の調査しかしなかったからだ…と激しく悔いて、以降婚約話に関してはマリエルの意見が通ることを許してしまったのだ。


 結果的に、これを期にマリエルは、婚約に夢を持てなくなった、という言い訳を前提として、心置きなく趣味を楽しむようになってしまった。

 相手にも大手を振って『婚約はしても破棄するかもしれないが、それでも良いのか?』と確認することができるようになり、その発言を了承した人としかマリエルは会わなくなった。


 そんな奇特な人たちが居なくなるまでは楽しもう、と思っていたマリエルの想像を軽く越えて、飽くなき挑戦者は既に11人となった。

 しかも懲りずに申し込みはまだ続き、先日のラグノールとの破棄話が伝わりきってはいない今ですら、情報の早い者から争うように手紙が届き、この数日で申し込みはさらに増えている。


「公爵家の名前と宰相という後ろ楯は、どれ程甘いのかしら…こんな娘でも欲しいと思われるんですもの、殿方の権力欲とは凄まじいものですのね…」


 そして、この度めでたくも12人目に選ばれたのが、トール・ヨルゲン子爵令息である。


「まぁ、トール様からのお手紙はとっても触り心地の良い上質紙をお使いですのね…それに、なんて字の綺麗な方なのかしら。字は人を表すと言いますもの。きっと悪い方ではないと思うわ。…まぁっ、わたくしの目の色をご存じなんて…きっと何処かの夜会でお会いしたことがありますのね。…覚えていないなんて残念ですわ。でも…良かった…目の色と髪色は嘘ついてはいませんもの…」


 兄と父からの最後通告を思うと、子爵家へ嫁ぐしかないのか、それとも本当に兄に甘えても許されるのか…頭の中では口にした言葉と裏腹に、自分の身の処し方を思いあぐねていた。


 元々まともに嫁ぐ事など、とうの昔に諦めていたことなのだから、嫁ぎ先があって良かったと感謝しておとなしく嫁ぐべきか、兄の言葉に甘えて静かに領地へ引きこもり過ごさせてもらうか、兄への迷惑が甚だしいようならいっそ修道院へ行くべきか…マリエルは、そのどれをも選ぶことが出来ないでいた。


 ふと四阿の外を見やると、大きく育った木に咲いた小さく白い花が風に揺れていた。

(わたくしもあんな感じかもしれないわ…風が吹けば右に左にと揺れて、強く吹けば呆気なく落ちてしまう。…もっとも、本当のわたくしは、あんな可憐ではないですけど…)

マリエルは小さな花に自分を例えた事が、我ながら恥ずかしくなり、髪さえも兄とは違う大叔母譲りの銀の頭を軽く振った。


「まぁ…わたくし一人くらいなら、どこでも行く道はあるわよね?前向きに楽しむと決めたの!やれるだけやらなくちゃ!」


 放っておけばいつまでも続いてしまいそうになる思考の渦を、自らの言葉で強引に方向を変えるた。


「―――マリエル?…そこにいるのは、マリエルか?」


急に後ろから声が掛かったのは、そんな時だった。






長い!長いぞ、過去話!


「トール様の手紙…」うんぬんのセリフが、最初はケーキを籠から出した次にあったなんて思えない…

ここまで読んでくださった方がいらしたら、ご面倒をお掛けして、本当にごめんなさい!


この回を回想として全部開いてしまうと、長編になってしまうと思いまして、あらすじめいてしまうのが嫌だったんですが、しょせん過去だし…と、一気に説明回になってしまいました。


三人の婚約者ども、ごめんな!


もし、いつかやっぱり我慢が出来なくなったら、物語として開くかもしれません。

いやいや、でもこれ長編にするような話じゃないし…


もともとは思い付きの短編のつもりが、行き当たりばったりで長くなっての今なので…

やっぱり言葉は難しいです…(涙)



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