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判決

ごめんなさい!

話の都合上、最短かもです…


もしかしたら、後から足されるかもです…

 マリウスが言っていた通り、ヒューバート・モールズリーに関する極秘裁判が開かれる事になったのは丁度一ヶ月後のことだった。


 極秘裁判と決まったのは、誘拐された相手がエリアーデ国宰相の娘で公爵令嬢ということと、令嬢が誘拐されたことによるあらぬ憶測や噂から守るために、国家裁判という秘密裏に行われる形を取ることに決められた。


 マリエル自身は『噂など気にしないので、公開裁判になさってください』と父に頼んだが認められなかった。

 それは、証言に立たねばならないマリエルを案じたことはもちろんだが、他国が絡んでいることも考慮した政治的配慮でもあった。


 一方、その裁判準備期間もユースタスはマリエルに手紙を送り、自分を忘れないで欲しい、と切々と綴ってきた。


 驚かされたのはキーランで、彼は兄と共に一週間に一度は公爵邸を訪れ、その度に色鮮やかな花束を持参してきた。


 およそ今までの彼ならしなかっただろう態度に、マリエルが驚いただけでなくマリウスも苦笑しながら友人を眺めるしかなかった。


 さらにキーランの取った驚くべき行動は、最初に来た日に帰り際ボソッと『花言葉を書いてきました』と恥ずかしそうに呟き、一枚の便箋を残して彼は帰っていった。

 マリエルが便箋を見ると、その日の花束に使われたリナリスの花名と『この恋に気づいて』と書いてあり、後から見た公爵家全員が頭を抱えて悶絶した。


 その後も、花言葉攻撃は続き、二回目にはフレンラランで『私に答えてください』、三回目はスターキスの『変わらぬ愛』、最後の四回目は小さな鉢植えに植わったコルニリスの木の苗で、言葉は『私の想いを受けとめてください』とあった。


 正直に言えば嬉しいを通り越して面白くなってきてしまったマリエルだったが、マリウスの方は親友の崩れ具合に胃を痛めて悩み出してしまうほどだった。


 マリエルも二人の事をいろいろと考えてはいたのだが、日々の驚きにふりまわされ、ついに裁判の日を迎えてしまった。 


 ☆☆☆☆☆


 裁判当日、ヒューバートは臆することなく全てを赤裸々に証言した。


 シャンベルネ国の間者は、彼らが幽閉されていたモールズリー領に食品を届けにきた振りをして自由に入り込み、その度に綿密な打ち合わせが行われていたと言う。

 また、それらの間者との最初の繋ぎ役を紹介したのは父親である現当主からだったこと、連絡をとる場合には屋敷の窓に旗を出せば間者ほ方から訪れていたことなど詳細に話した。

 これは大きな問題を孕んでいた。

何故なら、現在モールズリー領は王家直轄領に囲まれた実質的幽閉地であるにも関わらず、簡単に他国の人間が、それも間者が自由に出入りしていたのだ。

 結果、これにより国内の警備の甘さが露呈してしまったと言える。


 さらに、逆恨みからマリエルを売るには誰がいいか決めたのは、モールズリー家の当主だけでなく、長男に次男まで関わっていたと言う。これは三人ともマリエルのせいで降爵されたと思っていたからだと言うので、聞いていた全員が呆れるばかりだった。

 そして、この販売相手としてダグラスに打診するための情報は、城内の端役文官が僅かな金銭で名前や連絡先などを売り渡していたことも分かり、これにより新たな逮捕者と城内の規律を改める必要が生じた。


 ここまでの詳言、弁護及び検証をしていくのに実に二週間がかかり、極秘裁判による国家犯罪の炙り出しと言うには国内の隠れた問題が次々露呈してしまう内容となってしまった。


 やっとマリエルの証言をする段には、裁判も最終盤の三週目に入っていた。


  誘拐されるときの様子を話す城内関係者から始まって、マリエル、助けたキーランとダグラスまでが当時の様子を細かく話し、質疑応答がなされた。


 他の人達の話は、マリエルが知らない間の話ばかりだったので、裏ではそんなことになっていたのか、と妙に感心をしながら不謹慎ではあるが、少し面白くマリエルは聞いていた。


 本当の裁判の最後に、ヒューバートの思いが語られた。

彼はこの一件で理解したことにより、家族への失望と自分への不甲斐なさを述べながら反省の言葉とともに謝罪した。

 特に、マリエルにはその思いも深かったらしく


『マリエル嬢には、私は本当に酷いことをいたしました。ですが、結果的に大事に至らなかった事だけは心から女神へ感謝いたしております。申し訳ございませんでした』


と頭を長い間下げ続けた。


 そして、四週目。判決が下った。

後半は平行して行われていたモールズリー当主達の裁判判決と重ねての内容だった。


 モールズリー家は当主及び長男と次男は公開による死罪。

その妻子は爵位剥奪の上、妻達は修道院へ送られ、子供達は二歳までは母と共にいることを許されるが、それ以降は王都内の孤児育成院にて国の監視の元で育てられることとなった。


 当のヒューバートは、事件解決に多大な協力を行ったことと、彼の分析能力の高さかを買われ、今後も分析業務をすることを条件とする旨を考慮して、爵位剥奪のうで生涯を幽閉棟にて永蟄居とされる事が決まった。


 刑が決まり、裁判室から連行される前にヒューバートと顔を合わせたマリエルに、彼は誘拐した人と同じとは思えないほど穏やかな顔をして言った。


「マリエル様、ご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げます。…私は、二度とお目にかかることはないと思いますが、どうぞ、健やかにお幸せにおなりください」


「ヒューバート様、もうよろしいの。わたくしもうヒューバート様の事を許しておりますわ。どうか気になさらないで…。それよりも、お命が取られずに済んだことを心から嬉しく思っております。これからは、父や兄に…延いては国の…いえ、民のためにお力をお貸しくださいませ」


 そう言って頭を下げたマリエルに、ヒューバートは微笑みながら頭を下げて小さな声で何か呟くと、官吏に引き立てられて部屋を出て行った。


「お兄様、ヒューバート様は最後に何ておっしゃったの?」


 マリエルはよく聞こえなかった呟きを、マリウスに尋ねると


「…今は…言いたくないな…ま、そのうちにね」


と軽く流されてしまった。


 こうしてエリアーデ国から一つの家系が消え去り、国家問題を山のようにさらけ出した『モールズリー事件』は幕を閉じたのであった。


「あとは…わたくしの決断だけですわね…」


 裁判室から出て馬車へと歩みを進めながら、マリエルは今夜を最後に進むべき『道』を決める決意をした―――。




キーラン…乙女か!(笑)

花言葉は実在のお花から取っていて、名前も似ています。


リナリス→リナリア。花言葉は「この恋に気づいて」

フレンララン→フレンチラベンダー。花言葉は「あなたを待っています」「私に答えてください」

スターキス→スターチス。花言葉は「変わらぬ愛」

コルニリス→ハナミズキ。花言葉は「私の想いを受けとめてください」


ハナミズキだけコルニリスと似てないですが、これは学名の『Cornus florida』からきています。

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