表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/52

幽閉棟の恋話

今までで一番長くなってしまいました…


手直しが足りない気がするなぁ。

 秘密会談の後、自室にこもったマリエルは母に言われた事を反芻していた。


(私が進むべき『道』とはどれなんだろう…)


 例えばキーランと共に、臣下として国に仕えながら生きる道。

多分、それは今までと一番変わりなく生活できることだろう。

父や兄が守ってくれるように、キーランはマリエルを守ってくれるはずだ。


 ただし、そこではマリエルの意志が希薄に感じられるだろうことまで想像がつく。

それでも、一番変化のない心穏やかな時間が流れるはずだ。


 一方、ユースタスと共に生きると言うことは、国に仕えること。

即ち、国民のために仕える人生となる。


 成すこと全てに重い責任が付きまとうことになり、マリエルのようなものが耐えられるか不安しかない。

それでもおそらく様々な問題からユースタスは守ってくれるだろう。

 しかしいずれ王と王妃になるということは、守られるだけの存在にはならない。

いや、それは許されないのだ。


 これは挑戦とも言えるが、息をつく暇もなく闘う生き方になるのだろう。


 そして、最後は誰も選ばない、という『道』。

これは挑戦と興味だけでできているようなものだ。

 母に言われた通り事業を起こすなどすれば、誰にも迷惑をかけずに自分一人で立つことだって可能かもしれない。


 ただ、逆にマリエルの意志を()()()()しかない。

人や物事に取る責任は同じでも、最後には全て自分が責任を取ればいい、と開き直れることは気楽でもあり、それに甘えてしまうこともあるだろう。


(どれも…これ、と言えない…私、こんなに決断力がなかったのね…)


 マリエルは母に教えられた方法も何度も試した。


 一つ目、目を閉じて浮かぶ人。

―――誰も浮かばない。


 二つ目、自分が死にそうなときに助けてほしい人。

―――浮かばない。


 三つ目、死んだりして二度と会えなくなって欲しくない人。

―――家族以外、浮かばない。


 四つ目、自分が支えたい人。

―――浮かばない。


 五つ目、○○○○○な人。

―――問題外!


 ついには行儀も忘れて、長椅子の上に足を放り出して寝そべってしまう。


(これ、いつまでに考えないといけないのかしら…もう面倒になってきてしまったわ…いっそのこと、花占いか何かで決めては駄目かしらね…)


などと、投げやりになってきた時のことだった。

ターシャが一通の手紙を持って入ってきた。


 それはマリウスからの急ぎの知らせで、王城に来るように書いてあった。

ヒューバートが、マリエルに会わせるなら供述をすると言っているらしい。


 今さら何故、とマリエルは疑問に思いつつも、ターシャに急ぎ支度を手伝ってもらって王城へ急ぐことにした。


 ☆☆☆☆☆


 いつものように門で衛兵から通行証の確認を受け、城壁を通ってから馬車の降車場でマリエルが降りると、そこにはすでにマリウスとユースタスにダグラスまでが待っていた。


「マリエル、悪いな、急がせて」


「お兄様、それはいいのですけど…ヒューバート様は、本当にわたくしに会いたいと言ってらっしゃるんですの?」


「ああ、事件に関する話しをするなら、その前にお前に会わせろと言ってきた。…会いたくなかったら、断ってもいい。…そもそもモールズリーは犯罪者だ。本来なら言うことを聞いてやる必要はない。しかし、早く問題解決したい国の都合が、な…」


「当然ですわよね、シャンベルネだけでなくモルゲインも絡んでる以上、早く片付ける義務がエリアーデにはありますわ。…わたくしも、宰相の娘でありながらそれに協力しない、などと言えませんもの」


「すまんが頼む。…ただ、しっかり護衛はつくから危険はない。それだけは約束する」


 ユースタスがマリエルの目を見て、頭を下げる。


「や、やめてください、殿下!分かっていますから…で、どちらに伺えばよろしいのかしら?騎士団棟ですか?」


「いや、幽閉棟の方にいるので、そちらに行く」


「分かりました。それでは行きましょう。あ、お兄様、わたくしが知っておいた方がいいことはございますか?」


 一行が幽閉棟へと向かう道すがら、マリエルは少しでも情報を得ておこうとする。

 幽閉棟はその名の通り、位の高い犯罪者が幽閉される所で、本来は侯爵以上が収監されるのだが、今回は特別らしい。


「ヒューバートが今回しでかしたことで、モールズリー家の人間は全て捕らえられて獄につながれている。ヒューバートと会わせると、彼に何をされるか分からないからね、彼は幽閉棟の方に入れてあるんだ。ヒューバートは、犯罪者であると共にモールズリー家の犯罪証言者でもあるからね」


「では、わたくしと話をした後にする証言で、モールズリー家は…」


「ああ、極刑にできるだろう」


「でも確か…上のお兄様達には奥様とお子さんがいらっしゃいましたわよね?その方々は…」


「ああ、モールズリー家の奥方と、息子達の妻子はまとめて騎士団抱えの別邸に一時預かりということになってる」


「騎士団別邸…何やら…あ」


「怪しげでもなんでもないぞ。騎士団が演習訓練やなんかをするときに使う別邸だ。多少人数が多くても面倒を見られるし、安全確保がしやすいから選ばれた。何せ妻子合わせて八人を見なければならないからな」


 マリエルの言葉を奪ったユースタスが、必死の説明をする。


「…そうでしたか…」


「くくっ…相変わらずマリエル嬢は、緊張感が持続しない方だ。貴女みたいな人を伴侶にできたら、私も心強いだろうな…」


「はっ?…ダグラス様っ?」


「大丈夫だ、ユースタス。もし、手でも出そうもんなら戦争でも起こしてやるって顔してこっちを睨むのやめてくれないか?大丈夫だ。そんなことはしない」


「…こっちだって、戦争なんて割りに合わないことはしない。モルゲインなんて大国に喧嘩は売らん!せいぜい、お前個人に地味な嫌がらせをしてやるくらいだ」


「おい、マリウス。…こいつは昔からこうなのか?」


「ああ、まぁな…マリエルが絡むと面倒くさくて…」


 そうか、三人とも同窓生なんだな…と考えていたマリエルは、ヒューバートと会うことへの緊張感も何も感じることがないままに幽閉棟へと入っていった。


☆☆☆☆☆


 五階まである幽閉棟の三階に設けられた面会室にマリエルが通されると、そこには手枷足枷をつけられ、騎士隊の監視付きでヒューバートが待っていた。


 ヒューバートは枷の鎖をジャラジャラと鳴らしながら立ち上がると、マリエルに礼をした。


「マリエル嬢、あんなことをした私に、会っていただいてありがとうございます…あの時つけてしまったお怪我は?もう大丈夫でしょうか?」


「ええ、もう大分よくなりましたわ。アザがあと、少し残っているくらいでしょうか…」


「そうですか…あの時は、本当に申し訳ありませんでした…」


 ヒューバートは心から詫びているように見えた。

やはり、彼が家の事は何も知らずに動いた、というのは本当だったのかしら…とマリエルは思いながら、椅子に座るよう促した。

 二人とも座ってからマリエルは話を続けた。



「それで…何かわたくしにお話があるとか?」


「はい。…まずはお詫びです。今さらですが、捕らえられて初めて、家がどんなことをしていたのか教えられました。…確かに、ロバート一人でやったとは思えなかった。でも、まさか父や兄上達が大元だったなんて…私はそんなこと、気づきもしませんでした。…ただ、ロバート一人でやったと言われる違和感が、事件を調べて黒幕がいたことを実感するほど、憎しみへと変化していきました。そして自分の夢も希望も奪われたのだ、という現実にも耐えられなくなってきました。それが許せなくて…それをもたらしたのが糾弾だけして深い捜査もしなかった国と、そのきっかけを与えた貴女だ、という思い込みで憎しみもより強くなりました。…私は、領地に幽閉されてから研究も何もさせてもらえなかったので、この憎しみをどう晴らすかを、考えるのだけが楽しみのようになってしまっていたのです…そして、あんなことをしでかしてしまいました」


「ええ…本当に…お辛かったですわね…」


 ヒューバートは驚いたようにマリエルを見つめた。


「…貴女は…怒ってらっしゃらないのですか?」


「今は…怒っていませんね…むしろ、ロバート様の事をもっとちゃんと知っておくべきだった…と過去を反省してるところもありますの…そうしたら、ヒューバート様だけでも助かって、夢を諦めなくて済んだかもしれない…と思うと、かえって申し訳なく思う自分もいます」


「…そんな…貴女は悪くないのに…弟は、女性に数々の酷いことをしてきた奴だと今回知りました。でも、ロバートはあいつなりに貴女を大事にしていたんですよ」


「それは…わたくしには分かりません。でも、優しくしていただいていました」


「…私は貴女にお会いしたことがないと言いましたが、厳密には違うんです。貴女は私を見たことがなかったのですが、私は貴女達を見かけた事がありました。多分…二人で出掛けた帰りだったんだと思います。…何か買い物をされた貴女の荷物を弟が運んでいました。…頼まれても指一本動かさない弟が、笑顔で荷物を運んでいる姿に驚きました。…だから、ロバートは婚約者の貴女に恋をしているんだ、と思っていました」


「そこまでは…多分なかったと…」


「もちろん、今となっては分かりません。でも、弟はどうしようもない馬鹿なことをしでかしていましたが、策略を練れるほど賢くはないんです。もし…もし、貴方に優しくしていたのなら、それは本心からしたことだと思います。マリエル嬢には不快な思いばかりさせてしまった兄弟…いえ、モールズリー家でしたが、それだけは知っていていただきたかった。勝手を言いますが、親の大悪を隠すために一人で罪を背負わされていた馬鹿な弟でも、それ以外の一面もあったんだと、貴方には知っていて欲しかったんです」


「はい。…わたくしは…正直申し上げてロバート様を理解することもなく、あんなことになってしまいましたから…本当を言いますと、わたくしがロバート様にどんな感情でどんな態度でいたかも分かりませんの…でも、ヒューバート様がおっしゃったように、わたくしに優しくしてくださったロバート様は本物だったと思っていますわ」


「そうですか…ありがとう、マリエル嬢。貴女はとても寛大な方だ。…そんな貴女が本気で想い恋する相手がどんな方なのか見てみたかった気がしますね。…まぁ、弟でなくて良かったとも思ってしまいますが…」


「こ、恋?…ですか?」


「ええ、貴女はまだ経験されたことが無いようにお見受けしました。弟といた時の貴女と今を比較して考えただけですけどね…違いますか?」


「…ふふふっ…ヒューバート様って…本当に学者様みたいなんですのね?わたくし、比較研究されてしまいましたの?…恋の方は…どうでしょう?わたくし、よく分かりませんの。恋とはどんなものなのかしら…そうだ!教えていただけます?」


「はっ!…あははははっ…これは驚いた!こんな所で、自分を誘拐して売ろうとした男に恋が何か教えろ、と?」


「学者様ならお分かりか、と思って…」


「さぁ、私にも分かりませんよ。恋は一つの形じゃない、一人一人違うものですからね。ただいくつか共通するものがあるだけで語られてるんです。…そうですね…例えば、その人を見ると胸が苦しくなる、とか、逆に胸が温かくなる、とかね?」


「胸が苦しくなる…」


「他にも、いつでも会いたくなる、やら、触れたくなる、声が聞きたくなる、なんてのもありますね。時として、苛めたくなる、泣かしたくなる、閉じ込めて独り占めしたくなる、なんて怖いことも…まぁ、全てに共通するのは、一人の人を対象として、その人にだけ湧く強い感情が、よくも悪くも大きく動かされる、ということだと思いますよ?」


「感情が大きく動かされる…」


「ええ。…貴女のそんな姿を私は見ることができないかと思います。でも、マリエル嬢が見つけたそんな誰かと貴女が素敵な人生を歩まれることを、心から願っていますよ。…今日はお時間をくださってありがとうございました」


 そう言って再度マリエルに頭を下げたヒューバートは、とても晴々とした顔をしていた。



『恋』ってどんなもの?と聞かれて答えるのは、誰でも難しいんじゃないかと思います。


妄執から目が覚めたヒューバートは、ああ答えましたが、トール君とかならどう答えたんだろう…


ちょっと聞きたかったかも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ