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事件の真相 ≪1≫

すみません…ちゃんと終わってないかも…

もしかしたら朝までに何回か直されてるかもしれません。


あれこれやった結果、二つに分けることにしました。

すみません…(1012 1:55)



 食事が済むと『キーランが戻るまで部屋で休んでいるといい』とダグラスに言われた。

 マリエルは素直にその言葉に従って、部屋へ向かった。


 素直に従ったのは、助け出されてから時間が経つにつれて、今日一日の疲れがどっと溢れ、自分でもかなりの疲れを実感するようになっていたからだった。


 部屋に入ったマリエルは、それでもキーランがいつ入ってきてもいいように、ドレスのままで寝台の上に寝転んだ。


(キーランが居なくなる?…どういう事かしら?…そもそも、ダグラスは他国人の振りをしていた訳じゃなくて、本当に他国の貴族だと思う…と言うことはダグラスがキーランを連れていってしまうと言うこと?…あのキーランが、魔道省の仕事も放り出して他国に行くなんてあるかしら…)


 自分の知っているキーランからは想像もつかない話に、マリエルは不安を覚えた。


(ロバートの時もそうだったけど…キーランの事もヒューバート様も、私は“目に見えたもの”しか見てなかったのかもしれないわ…)


 横になったら寝てしまうかも…と、危惧していた通りにマリエルの体はクタクタに疲れていたが、疲れすぎたせいか頭が鮮明で勝手に進む思考が止まらない。


(“見えているもの”と“見えないもの”……どちらも本物かもしれない。でも見た目の苦しみを経験した今の私からすると、どちらかしか見ないのは、歪んでいるものに思えるわ…)


 マリエルが思考を巡らせながら天井を見ていると、コンコン、と小さく控え目なノックの音がした。


「どうぞ」


 マリエルが許可を伝えると同時に扉が開き、キーランが入ってきた。


「遅くなってすみませんでした。…あぁ、そのまま横になっていても構いませんよ。疲れたでしょう?…それと、つい先程、ヒューバート・モールズリーは逮捕されました。もう、大丈夫です」


「…良かった…」


 構わないと言われても、やはり寝たままでは落ち着かず体を起こす。


「さて、何から話しましょうか…」


「キーランのこと!」


「私…のことですか?」


「そう!…でも、多分それは順番が違うのよね?貴方のことは聞きたいことに行く前に、別の部屋を開けて通らなきゃ辿り着かないって感じだと思う。だから…今は、まずお父様とお兄様はどうされてるか知ってる?」


「………モールズリーのことより、お父上とマリウスですか?」


「当然よ!だって、ヒューバートは捕まったんでしょ?じゃあ、そのうち騎士隊とかに話を聞かれるんだろうし、どんなに遅くてもそこで聞くことになるでしょ?…でも家族のことは…お父様達が心配してるのは、()だから」


「…『あれ』を取り戻した途端に優先順位もこんなにハッキリと…いや、前から無くしてなかったものが、取り戻してより顕著になったと言うことですかね…」


 キーランがポソポソと呟きながらマリエルを見つめる。

 そうやってキーランの答えに時間がかかったことを、マリエルは違う方に受け止めた。


「あぁ、…やっぱり、お父様達に何かあったのね?…どうしましょう…お怪我とかされてるのかもしれないわ…」


「あ、すみません。いえいえ、大丈夫ですよ。お父上もマリウスも無事です。貴女が救出された事も直後に魔術報を送りましたからご存知のはずです。きっと、今頃お二人ともこちらに向かっていることでしょう…」


 キーランは窓際の椅子を引き出すと少し外の暗闇を見つめて


「………間違いなくアイツも来るでしょう…」


と呟くと、マリエルと向かい合うようにその椅子を置いて座った。


「キーラン!ありがとう!…お父様が無事と分かって、ホッとしたわ。良かった…」


 キーランの呟きを聞いていないマリエルは、素直にグイドの無事を喜んだ。


「さて、ここからが本題です。まず、モールズリー家のことですが、ヒューバートは何か言ってましたか?」


「…えぇっと…よく分からないことを言っていた気が…確か…ロバートは私に捨てられて没落させられた、と…」


 マリエルは必死にあの時の記憶を辿ろうとする。

きっと、この話は後で何回もしなくてはいけないはずだ。

 宰相である父にも、家族としての兄や母にも、騎士隊にも…それならば、記憶が消えないうちに掘り返した方がいい。そうマリエルは思っていた。


 実際、恐怖心の強い中で聞いていたからか、不思議なほどにヒューバートの話の記憶が薄い。

その希薄さは、これを機に思い出しておかなければ、すぐにも消えてしまうのではないかと思えるほどだった。


「マリエル、辛いかもしれないですが目を閉じて、ゆっくり深呼吸をしてみてください。それから、思い出したことは何でもいいので話してください」


「…ぅぅ…えっと、ヒューバート様は、あれだけの犯罪を犯すだけの頭がロバートにはなかったって言ってたわ。…黒幕がいたはずなのに、それをモールズリー家の人達も国も誰も調べなかった、って。後…私が王太子妃になると思い込んでたみたい…私がなるつもりはない、って言ったら喜んでたわ…」


「え!?なるつもりないんですか?」


「?…ないわよ!…何よ、キーランまで…私がそんな大変な仕事ができる人間に見える?今の私がやがて王妃?まず無理ね」


「いや、でもアイツ…王太子は望んでるし、そう言われたでしょう?」


「………。んんん、いえ?好きと言われたけど、結婚は申し込まれてないわ」


「……告白は受けてるのに?…相手がマリエルだから気づいてない可能性があるのかも?……まぁ、じゃあ今こちらで分かっていることを説明しますと、こういうことです」


 それからキーランが今回の事件のあらましを説明し始めた。


 ☆☆☆☆☆


 今回の拉致はヒューバートの『逆恨み』とも言えた。

 ただ、それを理解するためには過去を知る必要がある。


 ロバート・モールズリーがしたと断罪された事件は大きく分けて三つある。


 一つは女性問題。

ただの女遊びなら噂の域で止まったのだろうが、彼の問題はかなり悪辣だった。


 彼は少年期に入った辺りから、まるで何かに取りつかれたようにいろんな所で弱い立場の女性達を襲っていた。

 数にして数百人とも言われる相手は、みな文句を言い立てる事のできない弱い立場の女性ばかり、と言うのが後の調査で分かると彼の母親ですら彼を嫌悪した。


 二つ目は人身売買。

当初、これは一つ目の案件である女性達の存在を誤魔化し、欲を出して彼女達を現金化するために始めたようだった。

 『人間』は売り物になると踏んだ彼は、赤ん坊から死体まで売れる人間は誰でも売った。

そしてこれは、やがて三つ目の案件にも深く関わっていく。


 三つ目が一番問題となった売国行為だ。

エリアーデは大陸の中でも中堅で、決して大国ではないものの小国のように怯えるほどでもない。

自国の産業や食料生産などを大事にしているのは、初代国王の質実剛健な考えに由来している。

 また外交も手を抜くようなことはなかった。

だから他国が攻めようとしても、簡単に落ちることはないだろうと他国からも思われている。


 そんな中、エリアーデからは遠く離れた大陸北東にある小国シャンベルネで、民主化を目指して革命が起きそうだ、と言う話が数年前から流れていた。

 そこに目をつけた彼は、エリアーデから戦いに必要な人間や武器を、国と革命軍の両方に売り始めた。

武器を両方に売り、革命軍には戦闘要員として子供から兵士まで望むものを売り続けた。


 最終的には『人間』だけでは飽きたらず、エリアーデ国内で構築されていた、魔術を使っての戦闘術まで売ろうとしていた。

 そして、これらの機密情報を手に入れるためにも、宰相の娘であるマリエルとの婚約は渡りに船だったのである。


 事件の全てロバートが関わっていたのは事実だった。

しかしロバートの思惑とは裏腹に、これらの案件はマリエルと婚約したことで、宰相だけではなく王家までもがロバートが調査したことにより明るみに出ることとなった。


 しかし、ここで問題がある。

これだけの事件を起こした犯人が本当にロバートだけだったのか、ということだ。


 実はここに関してはヒューバートの考えは間違っていなかった。


 確かにロバートにはそこまでの頭脳はなかったが、侯爵家の四男と言う身軽に動ける立場と権力を使って、彼は『実働隊』となったのだ。


 つまり本当の犯人は当主であるモールズリー侯爵と長男次男だった、と言える。


 一方、ヒューバートは学問的頭脳に特化しており、そんな三男は役に立たないと一家の計画から避けられていたのだ。


 だからこそ、その悪事の全てが明るみに出たとき、実働していたロバートの関与を証明するものはポロポロ出てきたが、国が一番怪しんでいた当主達が関わっていたという、ハッキリとした証拠は見つからなかったのだ。

 彼らはそのあやふやな証拠を逆手に取って、全ての犯罪をロバートのせいにした。


 当の本人にはギリギリで助けてやると言って誤魔化し、罪を彼一人が被るようにしていたのだろうことは、想像するに難くない。

 そして、身内にまんまと乗せられたロバートは、全ての罪を背負わされて死ぬことになったのである。


 当主達は自分たちまで追求されないように、おとなしく頭を垂れて国の決定に唯々諾々と従うことで逃げきりを図ったのだ。


 実はこれに一番憤ったのは、娘を嫁に出そうとしていた宰相その人だった。


 自分の息子に全ての責任を負わせ死なせてまでも自分たちだけは逃げる、という汚いやり口が許せなかった宰相は、娘はあわや巻き込まれかねない事態に置かれた被害者の一人であると国に訴え、ウィルフォード公爵家の総力を上げてモールズリー家を逃がすまいとした。


 その結果が、男爵への降家と徹底した監視体制を敷くことだった。


 あれだけ欲に駆られた男達のことだ、いずれほとぼりが覚めたら必ずや何かの事件を起こすだろう、ことは目に見えていた。

その時に平民でいることで潜伏しやすくされては困る、と考えての対応だった。


 ただ、まさかヒューバートが、学者への道を閉ざされたことを恨んで、このような暴挙に出るとは誰も考えもしないことだった。





ロバート…結構本気でクズでしたね…(苦笑)

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