人はこれを、蚊帳の外と言う
連休中、急に法事に行かなければならなくなりました…
もしかしたら、数日、更新ができないかもしれません…できなかったら、ごめんなさい。できるだけ頑張ります!
時間がずれたらあげられる可能性もありますので、その場合は変な時間になるかもしれません。
あと、大型台風も心配です。
皆様、何事もなく過ごせますように!
(間違えて、荒く書いた内容の方が上がってました。直した方を再掲しました。9月29日 3:00)
ユースタスの説得に失敗した翌日、マリエルは今日こそ説得するにはどうすればいいか、を考えながら彼が来るのを待っていた。
しかし、先に迎えに来たのはユースタスではなく、国王夫妻から王城へ登城するように、と言う勅命だった。
(ついに噂のせいで、国王夫妻まで出てきてしまったのかしら?…どうしたらいいの…お兄様たちに頼るのは駄目だろうし…)
マリエルはユースタスが迎えに来たときのためにターシャへ行き先を告げると、仕方なく迎えの馬車に乗って登城した。
☆☆☆☆☆
「まぁ、マリエル!久しぶりねぇ、呼び出してしまって、ごめんなさいね…皆が公爵邸に行くのを許してくれなくって…」
謁見の間よりも小さめの私的な面会に使われる部屋に通されると、前から準備されていたかのように、マリエルが入ってすぐ国王夫妻も入ってきた。
(はい?…王妃様、うちに来るつもりだったんですか?…良かった…止めてくれた方ありがとう!)
マリエルは驚きに固まりつつも、すかさず淑女の礼で迎える。
「…とんでもございません。臣下たるもの、お呼びとあらば馳せ参じるのが常ですわ」
「まぁまぁ、本当に大人になって…ねぇ、レイ?これで私たちもひと安心ね?」
「ん、そうだな。…マリエルよ、そなたはそう遠くなく我らの娘になるのだから、もっと楽にして構わぬ。…あんな辛いめにあわせてしまったというに、此度はよくぞ申し入れを受けてくれた。心から礼を言うぞ。これからは我らも、そなたの実の父とも母ともなる心積もりでおるゆえ、そのように思ってくれると嬉しい」
(…ん?今、何かおかしな事をおっしゃいませんでしたか、国王陛下…?…娘?誰が?)
「いやぁねぇ、そんな硬い話し方、マリエルだって緊張してしまうわよ。ねぇ?…いいのよ、レイなんて気にしないで?…ふふっ、これでやっとわたくしにも娘ができますのね!本当に嬉しいわ!…昔から娘とドレスを作るのが夢だったのよ」
「え?…」
「本当に、一時はこの夢も諦めなければならないのかと嘆いていましたのよ…そしたら、今度のことでしょ?もう、わたくし、本当に嬉しくて!くっ…」
(え?王妃様…目に光るのは、もしや涙?…ええ!?なんで!)
「オリアナよ、気持ちはよく分かる。我の次を太子が継いで、そこで我が直系の血筋が途絶えるのではないかと、危ぶんでおったのだ。まこと、マリエルは救国の姫となったも同然!」
「ええ、ええ!本当に…そうですわ!…救国の王太子妃となるからには素敵なドレスを仕立てましょうね?…でも、まずは結婚衣装よね!一緒に考えましょう!あ…もちろんリンデルも一緒にね、彼女だって、娘の衣装選びは楽しみにしていると思うのよ!」
「あ…あの…」
「ん?心配はいらぬぞ、もちろんそなた達の結婚費用は国で持つ!普段は我ら王族は倹約家に見えているかもしらんが、そなた達の結婚式は国をあげての祭事になろう。それに惜しむことなどないゆえ、気にせずそなたが望むような式にすればよいぞ!」
(…ちょっと、待った!…何が起きてるか分からない…でもとりあえず私のことはさておいてよ?何?今の発言…国王として絶対問題よね?税金使うのに好きに使えって…ていうか、結婚式?誰と誰の?…これって、やっぱり私と殿下の?そんな話…いつそんな話が出た!?…いや…そういえばこの間、お父様が怒ってらした時に言ってらしたような…ごちゃごちゃ話があったから、すっかり忘れてたわ!…いやー!なにそれ!本気?)
そこに外が騒がしくなり、いきなり扉が開くと
「マリエル!大丈夫か!」
グイドが入ってきて、マリエルの元に駆け寄った。そして、マリエルを背中に庇うように立つ。
「…お父様!」
少しマリエルがホッとして、グイドの上着を掴む。
「…陛下!…いえ、この際です!…レイモンド!この話は勝手に進めぬよう、あの時言いましたよね?…まだ、マリエルどころか家族とも話が落ち着いていないと言うのに…」
グイドはここぞとばかりに、国王と同窓生という強みを利用して、言葉も荒く責め立てた。
「あ、あぁ…確かに聞いたが…でも、グイド、今ユースタスは毎日…」
「それ!それもだ!あの、ばっ……えふんっ…王太子は、毎日どこぞの未亡人と逢い引きしているとの報告が上がって来てると言うのに、うちの娘も欲しがるとはどういう事なんだ!って話だろ!」
(…お父様、今『馬鹿』って言おうとしましたよね?普段の言葉は出やすいから…まぁ、よく止まりましたわねぇ、…と言うか…その『未亡人』が私です…あぁ、ここまで来ると言いづらいわ…でも、結婚なんて話は出てません!…いや、温室で『自分との将来を考えてみて欲しい』って言われてたわ…あれがもしかしてプロポーズなの!?えぇっ!それは…ちょっと嫌かも…)
「いや、待てグイド。だからその相手が…」
「父上、そこまでです!」
国王の言葉を取り上げるように、今度は勢いよくユースタスが部屋に入ってきた。
「私とマリエルの話に割り込まないでください、と申し上げましたよね?私たちはまだいろいろなことを話して、心を通わせている段階なんです!…王家から酷い目に合わされたというのに、マリエルに強制してどうするんですか!…マリエル、待たせた間にこんなことになってすまなかった…」
ユースタスはマリエルの前にツカツカとやって来ると、掴んだままのグイドの上着をから、そっと指を開かせて自分の手で包み込んだ。
(あら…ユースタスまで来ちゃって…この部屋、人口密度が高すぎだわ…)
などと、例え王子に手を包まれても現実逃避に、違うことを考えていたマリエルの顔を覗きこんだユースタスは、彼女の心あらずな状態にすぐに気付き、ふっ、と笑うとその指に口を近づけた。
そこで始めてマリエルが目の前のユースタスを見る。
「なぁっ!…殿下!?何を…」
「マリエル、帰ってきた?…うん、もう大丈夫だね。じゃあ、この部屋を出ようか?」
「…ちょっと待て!…何が心を通わせている段階だ!今のように不埒な行動ばかりの殿下に、うちの娘はやれん!」
「…宰相…いえ、ウィルフォード公爵殿、いま私に流れている噂を聞かれているなら、そう思われるのは分かります。しかし、今はまだ無理かもしれませんが、いずれご理解頂けるものと思っています。どうか訳あっての噂と、今しばらくお時間をいただきたいのです。お願いいたします」
ユースタスはマリエルの手を握りしめたまま、グイドを真っ直ぐに見つめて頭を下げた。
その姿に、グイドですら一瞬息をのみ、部屋に沈黙が流れた。
「…そうね、グイド。…その子は馬鹿だけど、馬鹿な所ばかりではないわ。もうしばらく、様子をみてやってはもらえないかしら?…あの日以来、ユースタスはマリエルが誰かに嫁いで幸せになるまで、自分は結婚もしないし幸せは求めず民のためだけに生きる、と言…」
「はっ…母上、その話は…」
「ユースタス、お黙りなさい!…とにかく、そう言いきってそれを守ってきた頑固な子なの。だから、わたくし達にとってもこの話は大事な事よ?マリエルをあんな目に合わせておきながら、我が子可愛さの面があることは否定できないけど、決して政治的な事でいい加減に乗っかった話ではないのよ。…どうかしら?」
王妃の懇願にも似た言葉に、グイドも否を言えずにいたその時、またも外が騒がしくなると同時に扉が開き、今度は人ではなく、大きく渦を巻いた竜巻が吹き込んだ。
「きゃあぁあぁっ!」
「マリエルっ!」
強い風にドレスも髪も巻き上げられ、マリエルは両手でスカートを押さえたが、ややもするとマリエル自体が巻き上げられそうになる。
部屋の調度品も吹き上げられ、壁にぶつかっては落ちて、壊れて砕けた物がまた舞い上がり、危険な状態になっていた。
すると、突然部屋の奥の壁に隠されていた別扉から国王の警護騎士が飛び出してきた。
「陛下!王妃様、こちらにおいでください!」
彼らは風圧に負けないように叫んで国王夫妻を呼ぶと、その身を守るように動きだした。
さらに、別の騎士隊が反対側の壁にも隠されていた別扉から
「宰相閣下、お嬢様、王太子様はこちらに!」
と叫びながら飛び出してきた。
強風に煽られたグイドとマリエルを、ユースタスはとっさのことながらしっかりと掴まえていた。
騎士隊員でもあるユースタスは、室内で吹き荒れる竜巻などと言う不測な事態に対応するために、警護騎士にグイドとマリエルを託す。
「…公爵、マリエルっ!警護騎士が守りますからっ、まずは逃げてください。公爵っ、これは何かがおかしいっ!僅かながら魔力を感じます!…私は周囲を探ってきますっ」
そう言うと、ユースタスは強風の中を、風の弱い所を探して縫うように竜巻の入って来た入り口の方へと向かっていった。
その扉からは、最初の大きな竜巻の後からも次々と小さな竜巻が入ってきていて、誰が見ても明らかな異常事態だった。
ユースタスが扉の外に体を滑り出させると、外へと通じる柱廊から回り込むように次々と小さな竜巻がこちらに向かってきていた。
人為的な竜巻としか思えないものを誰が起こしているのか、ユースタスがさらに外へ向かっていくと、柱廊の外へ足を踏み出した途端に、ピタッと風が止まり竜巻もクルクルッと小さくなって、すぐに消えてしまった。
辺りを見回しても何もなく、誰もいない。
異常を感知して、駆けつけてきた別の騎士隊員も何も見ていないと言う。
「これは、自然に起きるような竜巻ではない。明らかに人為的に起こされた魔力を感じた。城内の安全確認を細かい所までしながら、警備体制の確認もして欲しい。犯人がどんな奴か分からない以上、相互連絡は怠るな!」
城内警備員と警護騎士隊員にそう告げると、ユースタスはマリエル達が匿われたはずの、有事に王族を匿う部屋へと急いだ。
「…ことだ!…員が………さっきは…」
扉を開ける前から公爵の怒鳴り声が聞こえる。こっちでもまだ何かあったのか、ユースタスは心配になる気持ちを押さえて、部屋に入ってすぐにグイドに声をかけた。
「公爵、どうされました?」
「…大変です!マリエルが消えましたっ!」
ユースタスはどんなことでも冷静に対応できるように訓練してきた。
実際、この15年は問題があってもそうやって対応しながら過ごしてきた。
そんなユースタスが、血の気が引き、身の毛もよだつ恐怖にさらされる、ということを初めて経験した―――――。
やっと終わりが見えて来たのに…
しばし、お待ちくださいますと助かります。
読んでくださってる皆様、お付き合いいただいている皆様に感謝です!




